カズが、俺の手を握ってる。
デビューした頃は、同じくらいの身長だった。ジュニアの頃は俺の方がちびだった。
だけど、その頃からカズは優しかった。
特にうるさくするわけじゃなく、なんとなく全体を見てて、必要なことをしてるみたいだった。
俺は、あの頃より小さく見えるカズの背中を見つめながら、歩いた。
自販機コーナーで
「ついた!潤くんお金いれて?」
「おおって、マジか......」
「うん。あそこから連れ出してあげたんだから、コーヒーくらいおごられてもいいと思う」
そう言って、パチンとウィンクした。
その顔は、アイドルそのもので、さすがだなって思った。
「潤くん、屋上で少し話そうか?」
「そうだな。今の時間は、たぶん誰もいないからな」
「うん、じゃあ行こう」
屋上で、社員の人達が作ってる野菜とかを眺めながら、ベンチに座る。
「潤くんさあ、たぶんずっとイライラしてるよね?」
え?
そんなストレートにきくのか?
でも、カズの目はごまかせる気がしない。
仕方ないから、返事した。
「うん。してる。ゴメン脚ひっぱって」
「潤くん、なんで謝るの?」
「俺がしたかったことをしてたから。羨ましくて嫌みな言い方したんだよ」
「ふふ。自覚あるんだ」
「なんだよ。バカにしてんのかよ」
ふふって笑うカズに文句を言う。
こんなにストレートに、人と話をしたのはいつぶりだろう。
相手がカズだからなのか、イライラが少し収まってるように感じた。
「潤くん、誰でもイライラしてたまらない時ってあるんだよ。ムカついたり、嬉しかったり、色々あって当然でしょ?」
「カズ...... 」
「俺だってそうゆう時あるもん。潤くんは、悩みの深さがすごそうだもん」
「カズ......」
「あのね、俺たちはグループでしょう?ダメな時は、ダメって頼っていいんだよ。カッコ悪いなんて思わないから。おれたちは、5人の運命共同体だよ?」
そう言って笑ったカズの瞳は優しくて、キラキラに輝いてた。
「潤くん、辛いときは言って、おれたちは、いつでも潤くんの味方だよ」
キラキラして眩しいカズ。
俺に笑いかけた顔は、照れたような嬉しいような色をしてた。
手を繋いで、楽屋に戻る。
ずっとカズの顔が頭から離れない。
思わずにやけそうになる。
楽屋に戻って、雅紀と、翔くんと大野さんに謝った。みんな良いよっていってくれた。
楽屋についてすぐに、カズは大野さんのところに戻って笑ってる。
ちょっと面白くない。
さっきまで雅紀にイライラしてたのに、俺って分かりやすいな。