その日は、5人のレギュラー番組の撮影で、番組観覧にはファンの子達が来てくれていた。
歌ったり、ダンスをしたりはしないバラエティーの収録は、俺にとっては結構な苦痛だ。
デビュー当時は、お笑い担当になるなんて言って、みんなにいじられるキャラだったけど、最近はイライラしてそんなのムカついてしかたない。
毎回、撮影のある日の朝に、今日こそ現場でイライラすんのは止めようって思うのに、どうしても我慢出来なくて、八つ当たりしてしまう。
一言、言えれば良いのに。
「イライラしてごめん」
「嫌な気持ちにさせてごめん」
そう言えれば、きっとメンバーは、許してくれる。本当に優しい人達だから。
なんにも言わずにむすーっとしてる俺のフォローを一生懸命してくれる翔くんは、昔とは別人のようだと思う。
ジュニアの頃から、憧れの存在だった翔くんに、いっつもくっついて歩いてた俺。
同じように、大野さんに憧れてその後ろをついて歩いてたカズは、あっという間に大野さんの懐に入りこんで、その隣にいることを許されていた。
翔くんは、うるせーなとか、虫みたいだなお前とかって言って、優しいとは言えなかったけど、高校行くのやめるって言った俺に、めちゃくちゃ真剣に向き合ってくれた。
その気持ちに応えたくて、一生懸命頑張ったんだ。
だけどさ、ある日気づいたら、翔くんの隣で楽しそうに笑ってるやつがいた。
楽屋に入ったら、俺が一番最後だった。
奥の方で、頭をくっつけて寝てるのは大野さんとかずだ。
しょっちゅうくっついてるから、スタッフさん達も、あの二人はああゆうもんだと思われてるようで、もはや誰も、何もつっこんだりしない。
手前の方で肩が触れる距離で、笑いあってるのは、翔くんと雅紀だ。
雅紀が言ったことで翔くんがわははって笑って、雅紀が嬉しそうに笑う。
そこは、俺が欲しかった場所だよ。
そうやって甘えたような顔で、翔くんの隣にいたかった。
もう今は、どんな顔したら良いのかもわかんねえし、本当にそばにいたいのかもよくわかんねえ。
なのに、イライラだけがつのって、余計なことを言ったんだ。