私は幹事が苦手だ。

子供の頃だいたいの事を誰かにやってもらっていた私。

そんな私が皆を仕切れるはずもない。

「大人のくせにそんな事もできないのか。」

この言葉程愚かなものはない。

違う。

「大人でも子供でも経験値がないものは出来なくて当然なのである。」



そうであろう。

「仕方ないさ。あまりやった事ないもんな。」

私のような弱いメンタルには

まずは数回この言葉を投げかけて欲しい。 


それを聞いて

「甘ったれんじゃねぇ!」

という人も少なくはない。

それはそれで良いだろう。人それぞれ。

私はファミコンの「スパルタンX」をやりまくっていたので1階の棒術男を何もさせずに倒す事ができるが、誰かがプレイしていて苦戦しているのを見ても

「こんな事も出来ないのか!」

と言う事はない。

「仕方ないさ。あまりやった事ないもんな。」

こう声をかけるようにしている。


幹事。

これ程気を使うものはない。

人数が増えれば増える程

「皆楽しんでくれているだろうか」

と気になる。

20歳の頃アルバイトの仲間たちと一緒に「ボウリング大会」を企画した時があった。

なぜか私が幹事となった。

押し寄せるプレッシャー。

そんなの気にせず行ったらいいでしょう?

わかる。私もそっち側の人間になりたかった。

違う。私のような人間は

「つまらなかったらどうしよう?」

こう考えるのである。

まず時間配分をしっかり決める。

ここからこの時間で移動、この時間で受付、この時間にゲームスタート、終わりは即座に解散。

「え?この時間なに?」

これが一番雰囲気悪くなる。

無駄を無くして終わった後は楽しかった以外何も残さない。

それこそが私が幹事をした際の一番のテーマである

この時のボウリング大会もやれば楽しいのはわかっていた。

平均点は取れるだろう。

プラスアルファが必要だ。私はしっかりとした賞状を買いに行き、商品を用意する事にした。

会が成功するのなら身を削るのもやむを得ない。

この裏の気配り。

「なんて俺はいい奴なんだ。」

という自己満足。これが私の一番のご褒美である。

こんな事をしてしまうから会が終わればホッとする。

私の企画した集まりは主に朝集合、夕方解散である。

なぜこんな特殊な時間なのか。

それは

「夜は自分の時間を大切にしてもらいたいから」

貴重な一日を全て私に使わなくて良い。

みんな自分の時間が大切である。

夜は自分で有効な時間を過ごして欲しい。

そんな思いが込められている。

イベントの頭から終わりまで完全なコーディネート。

旅行を計画した際は「旅のしおり」も作るだろう。

ちなみに最近家族と出かけた際は旅の様子をスマホで録画し、自ら動画編集をして妻にナレーションも入れてもらい、旅番組っぽく仕上げた。

どこに出す訳でもない。

ただただ私が企画した小旅行に参加してくれたお父さん、お母さんにプレゼントするだけである。

夜中遅くまでパソコンで動画編集をしていると


「私は何の為にやっているんだ」

という負の感情が数回襲いかかって来る。

それを打ちのめし続け作業を完成させる。

私は何ていい奴なのだろうという自己満足のご褒美を得る為に。

完成した動画を見てお父さんが言った。

「本当に完成させるならポイントポイントじゃなくて全部に文字を入れなあかんわ。」


天国のおばあちゃん。

人間とは不思議です。

孫は「相手におもてなしをしっかりする人間」では無く、最終的に「爪が甘い人間」になりました。




※父と私の背中


それではまた。