平成17年5月
【第6次イラク復興支援群】の一員としてイラク(サマワ)に派遣された。
現地の気温は40℃は軽く超え
直射日光下では60℃に迫る。
しかし、湿度は低い20%以下
日本では考えられない暑さと緑の無い世界。
自分の任務は後方支援。
展開地(基地)の中での任務は何の変化も無い。
ただ毎日黙々と任務を遂行する。
基地内では現地のイラク人とその息子と接する機会があった。
その時、紅茶をご馳走になったので
ある日この子に缶ジュースをプレゼントしようと思い近づき、ジュースを渡そうした‥‥
しかし‥‥
この子はジュースよりも、自分が持っていた2リットルのミネラルウォーター(普通の水)が欲しいと言う。
自分にとって、この子の想いは衝撃的だった。
美味しいジュースは350ミリリットル。
これが現実だと感じた。
このイラク派遣中に基地内に迫撃砲が撃ち込まれた、日本でもNEWSになっていた。
撃ち込まれてから数日間は、空を見上げ
『もしかしたら‥‥』
と少し恐怖心と警戒心があった。
しかし‥‥
3日もすればその恐怖心は無くなり、普通の精神状態に戻る。
慣れるというのは恐ろしい‥‥。
見張りの為に夜間警戒に就いてる時
遠くで銃声と共に光り輝く弾道が見えた。本能的に身を隠すが、こちらを狙って撃っているのではない。
イラクではこれが日常だが自分にとっては非日常的な事だ。
休みは有るが基地からは出られない。
本を読むか筋トレするくらい。
食事は日本食は食べられるが、野菜は少ない。
今まで食べてきたカップラーメンと缶詰の量をこの3ヶ月で食べた感じ。
厚生施設内では衛星電話やインターネットがあったので限られた時間内では有るが家族と話も出来た。
何かしらやっていないと気分的に冴えない。
自分は暇が有れば筋トレ三昧、派遣中に体脂肪率を落としながら5㎏も絞った。
こうして約3ヶ月、同じ顔ぶれの仲間と変化の無い任務、そして限られた情報の中での生活。
いつの間にか‥‥
自分はちょっとした事に腹が立つようになっていた。
大した事でもないのに、仲間に対して怒鳴る‥‥
自分に限らず、いつもは温厚な仲間も自分と同じ様になっている。
そして8月‥‥
無事に任務を終え帰国
大阪国際空港からのバスでの帰り道に見た山、久しぶりの【緑】に平和と日本の美しさを感じた。
それから約1ヶ月の休暇で自分は近所の海で、定年を迎えてのんびり生活している老人に紛れ、朝早くからアジのサビキ釣りをしたのを覚えている。
【ストレス】
今思えばあの時は【ストレス】が溜まっていたのだろう。
あの時は気付かなかった
何故?ちょっとした事に腹を立てていたのか。
帰国して数ヶ月してやっとその事に気付いた。
【ストレス】ってその時の自分では気付かないものだという事に‥‥。
しかし、そういう環境の中でも冷静沈着、自分を見失わない仲間も居た。
何時もは大人しかったり、チャラい奴でも本当の意味で【強い人間】だと。
そして【自分の弱さ】を知る事ができたのである。
【ストレス】は自分の知らないうちに蓄積されている。
皆さん気を付けましょう!