昨日からの続きです

 

群れない思考

 

区 民 中村さんたちは、千代田区の特性を生かした独自の政策を打ち出すべきだと、よく話していますね。どうしたら、オリジナルティに富む政策を打ち出せるのでしょうか。

 

中 村 一般的にいえば、千代田区の地理的・歴史的役割を把握して、現在の特性を整理するとことだと思います。それをやれば、自ずと向かうべき方向が見えてくると思います。

 

区 民 ちょっと抽象的で、わかりづらい説明です。

 

元職員 中村さんが議員のとき、行政が千代田区の『観光ビジョン』を作成しました。この時は議会側との議論を重ねたわけですが、これまでとは違った発想が生まれました。「千代田区は全国の市区町村に支えられて存在している。それなら、私たちも全国の観光事業を応援し、千代田区を盛り立ててもらおう」という視点のものです。

 

       各自治体のアンテナショップを区内誘致しよう、皇居の周囲走行する路面電車を導入しよう、などという話がありました。それらは、議論が深まらないうちに姿を消しました。行政としては、やりたくない課題です。ただ、発想は評価できます。

       せっかく議員には「政務活動費」があるのに、有効に使われていないので、今の議員からそうした発想が出てきません。

 

区 民 たくさんの議員がいるのに、オリジナルの政策を打ち出せないのですか。

 

中 村 群れているために、自分の頭で考えなくなるのではないでしょうか。誰かがやってくれる。目立つと、先輩議員から睨まれる。同調しないとひどいことをされるかもしれない。群れるとそういう発想になりがちで、それによる弊害が顕著になります。孤立というか、自立というか、群れに身を任せないことで、オリジナルの視点が強化されると思います。

 

区 民 だけど、議会そのものが「群れ」みたいなものですよね。(笑)

 

元職員 確かに、そう言えそうです。ただ、地方議員はもともと独立した存在です。会派は便宜上作られているだけです。だから、「1人会派」が認められていて、政務活動費が「ひとり会派」にも支給されます。

 

       今の千代田区議会には、会派の「代表質問」というものがあります。それは、独立した議員の存在を否定するものです。会派を構成する議員が、皆同じ考を持っているなんてありえません。現に自民党議員は意見がバラバラです。

      個々の議員には「一般質問」という形で、平等に付与されている質問権があります。こちらが、法律で認められているものです。

 

中 村 会派を否定するわけではありませんが、「会派同士の協議がすべて」のような慣例は正すべきだと思います。厳密にいえば、会派の人数に合わせてポスト配分をするのもおかしい話です。それをやると、委員長ポストがたくさん必要になります。議会は互助会ではありませんので、一度は原則に立ち返る必要があります。

 

区 民 それは理想かもしれませんが、いきなりそうはならないと思います。先ほどの話にあるように、議員がまだ自立していないからです。

      それに、群れないと孤立させられるのではないですか。群れの中で溶解しないで、孤立もしないという努力をするしかないと思います。

 

中 村 群れると自己思考が低下し、開発能力も低くなります。

      群れることのメリットとして、研究者から報告されているものに、捕食回避ができて生存率が高くなる。自分で苦労して考える必要がない。権力者になれる可能性が広がる、などがあります。

 

元職員 孤立すると、捕食されやすい、個人評価がされづらい、情報が入りにくい、資金力がない、自分で何でもやらなければならないということになり、それまでメリットだったものがデメリットになるということでしょう。

 

中 村 孤立というか、自立のメリットとしては、考える時間をつくれる。脳が鍛えられる。判断をする時間が早いといったものがあります。

       まぁ、群れていないと、周囲から嫌われることが多いとはいえます。

 

区 民 群れないのに、行政に影響を与えられますか。

 

元職員 議員によります。ダメな議員は何をやってもダメですから。ダメ議員が装っても群れても、すぐにお里が知れてしまいます。(笑)

      ダメな組織を優れた個人がカバーすることができても、組織がダメ人間をカバーできるかどうかは疑問です。

 

中 村 群れる、それ自体が悪いという話ではありません。これからの議会は会派の利益で動くのではなく、議会全体、区政全体・・・・・・つまり区民と千代田区を構成する人たちの利益のために仕事をすべきだと、議員自身が意識すべきです。しかし群れに頼っていると、そうした思考が育たないということです。

 

           区民のための区政にしたいのであれば、議員のグレードアップが必要です。そのためには、深い議論をすることに慣れたほうが良いと思います。感情的にならない、党派利益のための議論にはしない、ということに努めるべきです。右でも左でもいいから、「この課題は一致して取り組もう」という経験を積むことが大切です。

 

      やがて「議会文化」みたいなものが形成され、日ごろは口喧嘩(論争)をしていたとしても、イザというときには党派を超えるくらいの度量が醸成されるかもしれません。千代田区議会の歴史には、そういう時期がありました。

 

区 民 その気概を持つためには、一致できる課題が必要だと思います。どんなことが考えられますか。

 

                             2月5日に続きます