繊研新聞2月4日のカルチャー覧(6面)に掲載された記事です。
「マッキアイオーリ展」で知る、外に向かう印象派
印象派は、風景の瞬間的変化を捉えようとした19世紀後半のフランスでの芸術一派。
現在、国立新美術館で「ルノアール~伝統と革新」展が開催されるなど、日本では人気が高い。一方“イタリアの印象派”が日本で本格的に紹介されたのは、30年前の「イタリア印象派展」が最初。まだ、フランス印象派の模倣との評価もあった時代だ。
今回の「マッキアイオーリ展」のチーフキュレーターは、イタリア印象派の第一人者で、父は前回の展覧会のキュレーター。
“マッキアイオーリ“とは“マッキア(斑点)派の画家たち”という意味。
点描で光を捉えるのはフランスの印象派と同じだが、その手法や意図は大きく違う。
テレマコ・シニョーリ≪日向の子供たち≫の光は肉太に輝き、影の老人との対比には寓意がある。作品が小さいのは、瞬間を素早く描こうとした結果だ。
フランチェスコ・ジョーリ≪水運びの娘≫は、確かなデッサン術で、貧しい農民の暮らしを描くイタリア印象派と、移ろう光と風を描くフランス印象派の融合だ。
印象(impression)とは“内面に刻印する”という意味で、表現(expression)の逆。しかし、19世紀後半、イタリア統一期に起こったマッキア派は、ルネッサンスという過去の栄光と別れ、新しい国への希望とともに生まれた、力強い表現主義でもある。
「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/macchia/index.html
(中村宏美 アート・ミディエイター、中村デザインスタジオ代表)