繊研新聞12月1日のカルチャー覧(6面)に掲載された記事です。
「医学と芸術展:命と愛の未来を探る ~ダ・ヴィンチ、応挙、デミアン・ハースト」
古今東西のアートで構成する展覧会は森美術館の特徴の一つ。
今回は、西欧・日本の古典美術と国際的な現代美術に加え、人体模型や解剖図、医療機器などの貴重な医学資料が展示される。
それらは人間の身体への探求が共通テーマだ。
「体のメカニズムはどうなっているのか、また、なぜ美しいのか」人間は自らの身体を研究し、命の不思議に取り組み、不死を願い、医学やアートを生みだした。医学資料とアートという異なるカテゴリーであったものが同じ空間に展示されたとき、その境界の曖昧さに驚かされる。
18世紀の実物大で描かれた女性の解剖図は、優雅にポーズをとり装飾絵画の要素が強く、16世紀の「鉄製関節模型」は現代のフィギュアのようだ。
日本の古典、円山応挙や河鍋暁斎の「骸骨図」や現代美術のルーク・ジュラムによる動物インフルエンザの形のガラス彫刻は科学的な正確さを持つ。
また、英国王室コレクションであるレオナルド・ダ・ヴィンチの解剖図スケッチは、芸術と科学知識の融合を説いている。
展示後半は、医学の今後を見つめた生命科学の発展に焦点をあてる。
ダーウィン生誕200周年、『種の起源』出版150周年を受け、ファッションシーンでも2010春夏に向け人類の起源に着想したデザインが登場する中、生命とは何かを考える機会としたい。
http://www.mori.art.museum/contents/medicine/index.html
(中村宏美 アート・ミディエイター、中村デザインスタジオ代表)