かっさんのつづれなるままに820
一つの映像がなかなか頭から消えない。それはウクライナとロシアとの捕虜交換時の、ロシア兵士のバスのなかでの表情だ。まず何と若い兵士たちだろうと思った。どの顔もあどけなく、17,8才に見える。次に思ったのはその表情。まるでごくありふれた日常の顔だ。帰還するという喜びも、戦場にいるというという恐怖感もその表情からは見えない。ただ着ている衣服から兵士とわかるのみ。その消えない頭のなかで『安斎育郎のウクライナ戦争論』を読んだ。ずいぶん前に九平研の仲間から送られてきた本だ。捨てようかどうしようか思い迷っていた本で、今日の長雨で退屈しのぎに広げて見た。広げて見て驚いた。のっけから「ウクライナ戦争の原因を作ったのはアメリカ政府とウクライナ政府だ」「西側メデイアのフエイク・ニュースにだまされるな!」「反ロシア・ウクライナ擁護の世論は極端に偏向している」といった文言が踊っている。しかも詳細な真実の裏付けを持って。著者は、盛んに流されている「ロシアが好き好んで始めた侵略戦争」とは違って、「ロシアの戦争」ではなく「アメリカの戦争」と断言し、ゼレンスキーは人道主義者でも英雄でもないとまで言い切っている。これを読みながら、自民党の総裁選挙にしても立憲民主党の党首選にしても、安保の「あ」の字にも触れないことに慄然とした。この本を手にすると、現政権の「戦争をする」ための準備はアメリカの戦略と思えてくるからである。