アニメ研究家リュードー的「アニ評論」


春アニメ③ 『アリスと蔵六』 

 

【カテゴリー】
 ファンタジー

 
【放送局】
 MX


【制作会社】
 J.C.STAFF

 

【概要】

 連載中のマンガをアニメ化した作品。超能力で“想像したことをすべて具現化することができる”少女・紗名と、彼女が“研究所”から脱走した先で出会う頑固オヤジ・樫村蔵六との交流を描き人気作品。第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門“新人賞”を受賞。

 

【ストーリー】

  “研究所”と呼ばれる施設で“外の世界”を知らずに生まれ育った少女・紗名(さな)。しかも、あらゆる想像を具現化する「アリスの夢」と呼ばれる特殊な能力の持ち主。そして初めての“外”で、彼女はひとりの老人と出会う。名前は樫村蔵六。「曲がったことが大嫌い」で「悪いことは悪い」という頑固じいさん。そんな蔵六との出会いが紗名の運命を大きく変えていく。紗名を追う謎の組織、次々と現れる能力者たち、そして心優しい人々との出会い。世間知らずだった“アリス”は、鏡の門を抜けて、世界の本当の姿を知ることになる。


【視聴評論】

≪ストーリー≫

・シンプルなファンタジー作品として今期心温まりながら見られるなー。アリスってネーミングがこれまたおとぎ話を誰もがイメージさせるし、蔵六って、昔過ぎるこの名前のアンバランス感がとってもいい。

 

・物語は紗名と蔵六が繰り広げる日常ベースのファンタジーものなんだけど、スカイツリーや富士山、都内のビルとかリアル世界をかなり上手に表現していて、見ている人がこーゆーちょっぴり変わった能力がある人いるかも!って思い起こさせるような世界作りができているのが好き。

 

・紗名が特殊能力を持った少女っていうこの王道設定がいいね。でも今回一番のキャラ面白さで言ったら花屋の爺さん蔵六!!蔵六の物語って言ってもいいくらいの存在感。そもそもの設定で、「蔵六」って名前もそうだけど、「花屋を経営」、「昔ながらの頑固爺」っていうインパクトある設定の散りばめられ方が素晴らしい。キャラ背景がかなり変わっているからそれだけで物語が面白くなっているね。

 

・最近のアニメでこんな硬派な頑固爺がでてくる作品は殆ど無かったと思う。だからインパクトあっていいんだよねー。だって、紗名が特殊能力を使って町をめちゃめちゃにしちゃったり空中飛んだりとか、まぁファンタジー設定なのに、蔵六がガチ叱りして、紗名を戒めるっていうこのなんともいえない作品の中でファンタジーを否定するようなリアル爺がでてくるっていうのがいいんだよなー。

 

・天真爛漫な紗名の姿ととにかく堅物の蔵六を見ていると、無くなった爺ちゃんを思い出してなんだかキュンとくるのさ。今じゃこーゆー頑固爺って少なくなってきているんだろうけど、昔は多かったなー。ある意味生きてきた人生観をがっつり人にぶつけて、納得できなかったら知らん!!ってなるような人。激動の昭和を生き抜いた人だからこそある感覚なんだろうなー。

 

・特殊能力のシーンについては特に目新しさはないからワクワクしないんだけど、その後の蔵六が叱るシーンが一番楽しい!なんかすっきりするって言うか、自分もしっかりしなきゃ!ってシャキッとするんだよね、なぜか。そーゆー意味で40代以上の人には背中を押されるというか本論とは違った共感を得られるような気がする。

 

・歳を重ねれば重ねるほど怒られることがなくなるからこそ、作品を客観的に見ながらもあたかも自分のことのように置き換えられるっていうのがいいところだと思う。

 

≪描写≫

・全般的に透明感があって絵の美しさが際立つよね。ディテールとか細かくてじっくり見入っちゃう!

 

・建物や背景がしっかり描かれていて特にスカイツリーとか実在するものに関してはリアル感満載でメッチャステキ♪

 

・紗名を蔵六が背負って帰るシーンでは家の塀のブロックデザインまでリアルで親しみがメッチャ沸くんだなー。作品の素晴らしさってこーゆー背景描写をどこまでするかってのも重要な要素だよね。

 

・紗名の顔の描かれ方は意外とシンプルなんだけど、蔵六は頑固感を出すためにシワも多いし表情の陰影がはっきりしているから表情変化だけでシーンの空気感が変わるのが凄い!!

 

・高速道路でのシーンなんて、地面の動きがかなり動的でCGでかなり上手に表現されていて見ていてうきうきしちゃう。

 

・タバコの煙とか光の陰影とか、日陰とか色使いの陰影表現がかなり上手いっていうのもあるけど、何よりもリアルを感じさせる空気感が最高!

 

・花屋の事務所内の黒板の描かれ方がとってもいいのさー。チョークで書いたり消したりするとうっすら白く黒板消しの拭き跡が残るでしょ。そこまで再現しているんだよ!!!もーーー絵萌えからすると興奮だよね。

 

≪音楽≫

・効果音とかハデバデしさが無くて、むしろセリフを立てるためにBGMが無かったり、ほのぼのした音を当てていたりで、優しいメリハリがあってとっても好感度高いね!

 

・物語に即したような優しい音を多用していて、その中に特殊能力の近未来的な金属音みたいなものを入れてくるから目立つ目立つ。こーゆー差し引きできるのって素晴らしいと思う。

 

・OPのORESAMA「ワンダードライブ」がとっても心地よいサウンドで、でも女の子キャラクターのほんわり優しい感じがとっても合う!
 

・EDはtoi toy toi「Chant」。もーーーずるい!!蔵六に怒られた後にこの琴線に触れるような超優しいサウンドは。癒されるーーー♪暖かい午後に公園とかで空を見ながら聞きたくなるような曲で、アニメ本編のどこか優しさを表現している感じがしてメッチャ好き!

 

【ターゲット】 20代~40代(リアル系好きな人はいい!癒されたい人は蔵六に・・・) 

【おススメ度】 ★★★★★


【番組HP】 http://www.alicetozouroku.com/