今回の映画レビューはウディ・アレン連投の第8弾。「さよなら、さよならハリウッド」(原題:Hollywood Ending、2002年)です。


 ヴァル(ウディ・アレン)は過去にアカデミー賞も獲ったことのある映画監督だったが、今はうだつが上がらずコマーシャルなんかを撮影している。そんなヴァルに大作映画のオファーが届く。ヴァルの元妻で現在は大手映画会社のプロデューサーを務めるエリー(ティア・レオーニ)が、「この脚本を仕上げるにはヴァルしかいない」と強く推薦したためだ。エリーの現在の婚約者でギャラクシー映画の重役のハル(トリート・ウィリアムズ)は難色を示すが、それを押し切った格好になった。ヴァルにとって再起をかけた映画になる。その撮影に入る前、ヴァルはストレスのあまり視力を失ってしまう。目の見えない状況で映画はクランクインしてしまって、という話。


 ヴァルはそのことをエージェントのアル(マーク・ライデル)にだけ打ち明け、アルはクランクインまでヴァルにつきっきりでサポートする。しかし、エージェントのアルは撮影現場に入ることを許されず、中国人カメラマンの通訳にその役割を託すが、その通訳もカメラマンからクビにされてしまう。さあ困ったということで、ヴァルとアルは藁をも縋る気持ちでエリーに状況を打ち明けて助けを乞う。エリーは仕方なく「共犯者」となり撮影を継続させるが、と話は進む。

 

 こういうシチュエーションなのでドタバタの要素は限りなくあり、そこそこ笑えます。ヴァルはまさしくウディ・アレンが自虐的に自身をモデルとして作り上げたキャラクターなのだろう。でも、視力がない状態で演出した経験はないだろうから、そのあたりのドタバタぶりは自分に気兼ねなく演じていたんじゃないかな。


 結局ヴァルの視力が回復しないままクランクアップを迎えてしまう。その後、絶縁状態だった息子との関係修復などを経てヴァルの視力は回復するが、撮影したラッシュを見て唖然とする。そりゃそうでしょう。目の見えない状態で演出したフィルムがまともなわけがない。なんとか編集して見られる形にして公開するも、酷評の嵐。

 

 ここまでは面白おかしく観ていたんだけど、この先のエンディングはいただけないなあ。ギャラクシー映画重役のハルが「ヴァルが視力のない状態で撮影していることを知っていてどうして報告しなかった」とエリーを問い詰め、結局二人は婚約を破棄する。ここまでは良い。問題はそのあと。この状況からこの映画はハッピーエンドになるのだけど、「それはないでしょう」という展開になります。某国の映画ファンを馬鹿にしすぎじゃないですか? これはウディ・アレン作品の中でも残念な映画でしたね。

 

 ちなみに、こちらの作品もU-NEXTの配信は終了しているようです。