今回の映画レビューはウディ・アレン連投の第5弾。「ブロードウェイと銃弾」(原題:Bullets Over Broadway、1995年)です。米アカデミー賞で監督賞、脚本賞、助演女優賞など7部門にノミネートされ、ダイアン・ウィーストが助演女優賞を受賞しています。ウディ・アレン作品の中でも評価が高い部類に入る作品ですね。

 

 マフィアが跋扈する禁酒法時代のニューヨーク・ブロードウェイ。若手の劇作家デビッド(ジョン・キューザック)は自身の作品をブロードウェイで演出し上演するチャンスを得る。ただしそれには、出資者であるマフィアの親方ニックの愛人オリーブ(ジェニファー・ティリー)を重要なキャストとして出演させるという条件があった、という話。

 

 そのほかのキャストには往年の大女優ヘレン・シンクレア(ダイアン・ウィースト)やダイエットに成功した俳優ワーナー・パーセル(ジム・ブロードベント)などが揃い、稽古が始まる。キンキン声でまともにセリフを喋れないオリーブの出番をデビッドが減らそうとすると、マフィアの用心棒チーチ(チャズ・パルミンテリ)が脅しをかけてきたり、プライドの高いヘレンは自分に合わせて脚本の修正を求めてきたり、ワーナーは過食症が再発してどんどん太っていったりして、なかなか稽古が進まない。そのうち、チーチは脚本や演出に口を出すようになって、と話が進む。

 

 ウディ・アレンはこの作品には出演していない。脚本・監督に専念している。それが功を奏しているように思う。さまざまな登場人物が自助主張をしていき、それに主人公のデビットが翻弄されていく様子はなかなか楽しい。

 

 チーチの助言を最初は無視していたデビッドだったが、そのアドバイスが的確だと分かってからはチーチと一緒に脚本を練り直していき、芝居はどんどん良くなっていく。その結果、初日興行は大成功をおさめる。

 

 テーマやコンセプトは良いがセリフがダメなデビッドに対して、チーチが天性の才能を見せつける。この図式が面白い。さらにこの図式に、知識が豊富で芸術家肌で毎年1本の戯曲を書くが一回も上演されたことのない劇作家というのも加わって、ヘレンに傾倒してしまったデビッドが恋人のエレン(メアリー=ルイーズ・パーカー)を彼に寝取られるという話も出てくる。そして、チーチがこの芝居を自分のものと考えるようになって、芝居をもっと良くしようと決断したところからクライマックスになだれこむ。皮肉なものですな。

 

 とても楽しく鑑賞できました。ちなみにこちらの作品も2024年6月末でU-NEXTの配信は終了しています。