今年観た映画のパンフレット。今回は「湖の女たち」。福士蒼汰と松本まりかが主演です。

 

 琵琶湖に近い介護施設で働く豊田佳代(松本まりか)は、夜勤の休憩時間の夜明け頃、施設を離れて湖の近くに車を止めて自慰行為をしていた。それを釣りに来ていた濱中圭介(福士蒼汰)が目撃する。帰宅した濱中(刑事)に、介護施設で100歳になる老人が不審な死を遂げたと連絡が入る。人工呼吸器が動かなくなり死亡したとのことで、機器メーカーの担当者は「機器は故障していない。動かなくなるとアラームが鳴るからわかるはず」と説明。濱中は夜勤の介護士4人と看護師2人に事情聴取をするが、そのうちの一人が佳代だった。介護士・看護師は全員アラームを聞いていないと証言する。となると、これは殺人事件となる。濱中の先輩刑事・伊佐美佑(浅野忠信)は介護士の松本郁子(財前直見)に疑いの目を向け、強行な尋問をするよう濱中に指示する。先輩刑事の圧力を感じつつ、濱中は佳代への歪んだ欲望を募らせていく。その一方、週刊誌の記者・池田由季(福地桃子)は、この地で17年前に起こった薬害事件を追っていた。50人もの死者を出したのに、立件されずにいた事件を追ううち、今回の介護施設での不審死の被害者が薬害事件の関係者で、さらに探っていくと医薬界の大物と政治家と第二次大戦中の731部隊で繋がっていたとわかって、と話が進む。

 

 いきなりの自慰シーンでドキッとさせられました。その後、福士蒼汰演じる濱中と危うい関係を築いていく佳代が痛々しくも美しく感じられました。松本まりかは「この役を演じるのにじぶんは未熟だった」と語っているけど、なかなかこの役をやり切れる女優さんはいないだろうし、佳代というちょっと現実離れした人物像に松本まりかの「不確かさ」がマッチしたように思いました。圧力をかける側とかけられる側。制圧する側と服従する側。また、正義を貫こうとする側と正義を諦めてしまった側。並行して流れるストーリーでさまざまな人間模様を描写していくのは、たぶん原作そのものの構成なのだろうけど、それを正面から映画として描き切った大森立嗣監督もやり切った感があるのではないかな。

 

 松本まりかだけでなく、共演者がそれぞれ素晴らしかったですね。濱中演じる福士蒼汰は野蛮で野生的で「あまちゃん」の先輩の影はそこにない。浅野忠信は相変わらずうまい。正義に裏切られた刑事という役を飄々と演じています。あらぬ容疑をかけられる松本郁子を演じた財前直見も良い。見応えのある映画でした。