今年観た映画のパンフレット。今回は「関心領域」。第76回カンヌ国際映画祭のグランプリのほか、米アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞した話題作です。「落下の解剖学」のザンドラ・ヒュラーがルドルフの妻・ヘートヴィヒを不気味に(?)演じている。

 

 青い空、子供たちの声が響く庭。庭の向こうには塀があり遠くに煙突が見える。1945年、アウシュビッツ。収容所所長ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)とその家族が暮らす家は、収容所のすぐ隣にあった、という話。女性たちはテーブルの上に山のように積み上がった衣類がかつてユダヤ人のものだと知りつつ「ああだこうだ」言いながら選んでいく。男性たちは「荷」を効率よく焼却するための焼却炉のどう建設するのかを話し合っている。ルドルフの妻・ヘートヴィヒ(ザンドラ・ヒュラー)は収容所の隣にプールや音質を設けて理想の我が家を作ることに精を出していて、「アウシュビッツの女王」と呼ばれたいと思っている。そんなへートヴィヒは母を我が家に呼び理想的な庭などを案内するが、その母は夜間の収容所の音などのためか、翌朝挨拶もなく姿を消す。このように、この映画では残虐なシーンを見せることなく人間の残虐性をあらわにしていく。

 

 興味深いのが、途中で挿入されるサーモグラフィー(最初は白黒反転かと思ったけど違いました)のシーン。深夜に少女が堆く積まれた土の中にリンゴを一つずつ埋めていく。寓話か何かかと思ったら、終盤でそれが実際に起こっていたことだとわかる辺り「なるほど」と思いました。そしてラスト。アウシュビッツ収容所の所長から異動を命ぜられて単身赴任となったルドルフ・ヘスが垣間見る「それ」は、現代を生きる我々にも何か鋭いものを突きつけているように感じましたね。

 

 「今世界で起きていることに対してどういう立ち位置にいるべきなのか」。そんなことを考えながらも、ちょっと前に観た「PERFECT DAYS」の穏やかな日常にまたちょっと憧れを抱いている自分はどうしようもないヤツだなあ、なんて思ってしまいました。