アップしていなかった映画パンフレット。今回は2023年12月に観ていた映画「市子」です。監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演「川辺市子のために」を映画化したという本作、なかなか衝撃的な映画でした。

 

 市子(杉咲花)は、同棲している恋人の長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日、突如姿を消す。市子の行方を探す長谷川は、市子と関わりがあった人々と会って話を聞いていくが、それまで知らなかった市子の姿が浮かび上がってくる。市子とは何者なのか。なぜ姿を消さなければいけなかったのか。その生まれ育った家庭環境、そしてその人生は壮絶なものだった、という話です。

 

 いやあ、杉咲花が凄まじいです。2023年日本アカデミー賞で「ケイコ 目を澄まして」の岸井ゆきののように、マイナーな映画ながら日本アカデミー賞の主演女優賞を獲るかと思ったのだけど、そうはならなかったなあ。そう思わせるだけ、本作の杉咲花の演技は素晴らしい。周辺の人々の記憶の中にいる市子は、それぞれ様々な表情を見せる。高校時代の同級生で市子に気をかける北秀和(森永悠希)との関係から行方知らずになった市子と再会するシーンとか、ケーキ屋で一緒に働いてた吉田キキ(中田青渚)とのあどけない表情とか、さらにラスト近くの海に近い場所でのシーンとか。

 

 色々とネタバレになるので書きにくいのだけど、戸籍を持たずに生きることに精一杯だった市子に誰が寄り添えることができたのか、考えさせられますな。未見であれば観て損のない映画だと思います。