今回は珍しく演劇のパンフレットを。というわけで、「鴨川ホルモー、ワンスモア」を池袋サンシャイン劇場で観てきました。手元にあった原作の「鴨川ホルモー」(第13刷)「ホルモー六景」(再版)も一緒に。今回の舞台版は、この原作2作を上手く融合させて、京都大学青竜会の10人+先輩3人、さらにその周辺人物5人の群像劇になっている。脚本・演出はヨーロッパ企画の上田誠。タイムループもので定評のある上田氏がこの小説をどう料理するのか興味津々で観に行きました。

 

 開幕早々、大勢が河原に集まり勝手気ままに喋りだす。「あらら、頭がついていかないよ」と思っているうちに、ちょっとした説明が入り時間が2年前に遡る。そこは京都の有名なお祭り「葵祭」で、京都大学青竜会では歴史的にここで新入生を勧誘することになっている。で、集められた10人は新歓コンパで居酒屋「べろべろばあ」に集合するが、これが何のサークルなのか説明されることはない。だが、あるタイミングを迎え、新入生10人は約1000年続く神事(?)「ホルモー」に取り込まれていく、という話。

 

 新歓コンパで新入生の早良京子(八木莉可子)の鼻の形に恋してしまった安倍(中川大輔)、その安倍に何やら絡んでくる高村(鳥越裕貴)、コミュニケーションが苦手な楠木ふみ(清宮レイ)、オレオレ気質の芦屋(佐藤寛太)、楠木に想いを寄せる松永(平井まさあき=男性ブランコ)、全然静かではない「二人静」の紀野(藤松祥子)と坂上(ヒロシエリ)、双子の三好兄(角田貴志)と三好弟(浦井のりひろ=男性ブランコ)、というのがその10人。彼らをホルモーに導くのが先輩の菅原(岩崎う大=かもめんたる)、清原(石田剛太)、大江(片桐美穂)の3人。さらに、京都大学青竜会のライバルとなる龍谷大学フェニックスの立花美伽(槙尾ユウスケ=かもめんたる)、京都産業大学玄武組の清森平(土佐和成)、立命館大学白虎隊の柿本赤人(酒井善史)、芦屋の高校時代の恋人で同志社大学の山吹巴(日下七海)、居酒屋「べろべろばあ」の店長(中川晴樹)、という総勢18人の登場人物。

 

 原作は安倍の一人称形式となっているが、「ホルモー六景」のエピソードなどを交えることで登場人物18人それぞれがキャラ立ちしていて、とても楽しめました。男性ブランコの平井まさあきが演じる松永が楠木に寄せる恋心、そこからのバイクデートなんかは「ホルモー六景」の胸キュンなエピソードを上手くお笑い方向に転じていて、見事でしたね。パンフレットに掲載されている原作者の万城目学との対談で演出の上田誠は、「台本にするときは、まず原作の要素を分解するんです」と語っている。これはホルモーの競技ルールなんかについて語っている部分なのだけど、細かいエピソードについても(多分)分解し、「どのキャラクターに当てれば効果的か」を考えた上での構成になっていたように感じた。タイムループものだけではない、上田誠恐るべしです。

 

 また、この舞台の見所の一つに、ホルモーの練習シーンや競技シーンもあると思う。鬼語を駆使して鬼を操り、試合では相手側の鬼を殲滅させようとするわけだが、その鬼語を発する際のポーズ(ダンス?)がいちいちカッコ良いのだ。練習時みんなで揃って鬼語を発しポーズをとるのだけれど、そのシンクロした動きは、(かなり違うかもしれないが)自分が学生時代に所属した吹奏楽部で初めてみんなで音を合わせた時のような高揚感に満ちているように感じました。

 

 舞台ならではのミュージカル・シーン(当然、代替わりの儀のアレです!)も圧巻でした。いやあ楽しかったなあ。