昔観た映画を久しぶりに観たくなって観たシリーズ。今回は、ハードディスクに録画してあった「愛のメモリー」。松崎しげるの歌う楽曲ではなく、ブライアン・デ・パルマ監督の1976年の作品です。原題は「Obsession」(強迫観念)。「ファントム・オブ・パラダイス」の次で「キャリー」の前の監督作です。

 不動産実業家のマイケル(クリフ・ロバートソン)の結婚10周年のホームパーティの後、侵入してきた何者かに妻のエリザベス(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)と娘のエイミー(ワンダ・ブラックマン)を誘拐され、身代金50万ドルを要求される。「警察に知らせるな」とあったが、翌日エイミーの声が吹き込まれたテープが届き警察に通報。対応を依頼する。マイケルはブリー警部(スタンリー・J・レイズ)の助言に従って、発信機を仕込んだ鞄に贋札を詰めて、犯人逮捕と人質救出のプランを立て実行する。警察が犯人のアジトを突き止め包囲するが、人質を盾に逃亡を許してしまい、その逃走中に犯人の自動車が事故に遭ってしまう。マイケルは開発中だった土地に二人の墓を建て、失意の年月を過ごしていく。そして16年後、イタリアに共同経営者のロバート(ジョン・リスゴー)と出張に来たマイケルは、エリザベスと出会った教会でエリザベスそっくりのサンドラ(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドの二役)と出会って、という話。

 マイケルはロバートを先にアメリカに帰しサンドラと共に時間を過ごすうち、二人は急速に接近し、婚約してアメリカに戻ってくる。しかし、結婚式が迫ったある夜、胸騒ぎを覚えたマイケルがサンドラの部屋に行くと、サンドラの姿はなく16年前の誘拐事件の新聞が貼られていた、と話は続く。

 デ・パルマがヒッチコックの「めまい」にインスパイアされて作られたといわれる本作。ヒッチコック的な映画手法もさることながら、その音楽がヒッチコックっぽい。それもそのはず、音楽を担当したのはヒッチコックの「知りすぎていた男」や「サイコ」「北北西に進路を取れ」などで知られるバーナード・ハーマンその人なのだから。デ・パルマの作品群の中ではあまり触れられることのない作品だが、危うい人間関係を想像させつつ納得のいく格好でのラストは記憶される価値のあるものだと思います。