今回の映画レビューはウディ・アレン連投をちょっと離れて「テキサス1の赤いバラ」(原題:The Best Little Whorehouse in Texas、1982年)。これ、ずっと観たかった映画でして、コリン・ヒギンズの監督3作目にして遺作となった作品です(日本では劇場未公開)。「VideoMarket」という動画配信サービスで配信されているのを見つけ、急遽契約して鑑賞しました。

 

 テキサス州ランビル郡の田舎町から1マイルの距離にある娼館「にわとり牧場」。ランビル郡の男たちのみならず遠方からのお客も多くいる100年以上前から続く歴史ある娼館だった。今の女主人はミス・モナ(ドリー・パートン)で、ランビル郡の保安官エド(バート・レイノルズ)と長年良い関係を続けていた。働いている女性たちは税金も納めているし、ミス・モナは様々な団体に寄付をしたりしていて、街の人々も「にわとり牧場」に悪い印象は持っていなかった。そんなところに、ヒューストンのテレビ局で正義感を振りかざすリポーター、メルヴィン・P・ソープ(ドム・デルイーズ)が「にわとり牧場けしからん」というキャンペーンを始める。「にわとり牧場」をそのまま残したいエド保安官ほかランビル郡の人々は、なんとか波風が立たないようにと踏ん張るんだけど、という話です。

 

 この映画は、そもそも実際にあった娼館「Chicken Ranch」(にわとり牧場)の話を基にしたミュージカル舞台があって、それを映画化したもののようです。なので、一応コリン・ヒギンズも共同脚本に名前が入っているけど、どこまで手を加えたのか分かりません(英語のWikipediaには色々と書かれているようだけど)。ミュージカルの舞台があるので、そちらで使われた歌曲はそのまま使われているようだし。ただ、一部ドリー・パートンが作詞作曲した2曲が追加されているとのことです。そのうちの1曲が「I Will Always Love You」で、後にホイットニー・ヒューストンが「ボディガード」で歌ったアレの原曲になります。

 

 この作品、1982年の北米興行収入ランキングで9位($69,701,637)を記録。テキサス州知事役のチャールズ・ダーニングは本作で米アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされています。舞台が娼館ということで、公開当時でも宣伝に四苦八苦したようで、タイトルに含まれる「Whorehouse」(娼館)が放送コードに引っかかるということでその部分を「Cathouse」(猫屋敷?)と変更したり「ピー」音で誤魔化したりして宣伝したらしい(英語のWikipedia参照)。それでもこれだけの成績を納めたのは、べらぼうに陽気なその作品自体の魅力があったからなんじゃないかな。

 

 当時でもそんな感じなのだから、現代のコンプライアンスに照らし合わせるとかなりアウトの部分が多いのは確かです。でも、先に書いたようにこの映画、べらぼうに陽気です。「にわとり牧場」を訪れる男性たちはもちろんのこと、働く女性たちに悲壮感はない。州の大学ナンバー1になったアメリカンフットボールのメンバーは、先輩の奢りで「にわとり牧場」に繰り出すというのが風習になっていて、「にわとり牧場」に向かう道中の浮かれ具合は見ていて楽しくなってしまう。迎える女性陣もその大学恒例の雄叫び(?)「イーハウ!」と茶化しているけど、ダンスシーンはとても楽しげだし(「イーハウ!」はブラマヨ小杉の「ヒーハー!」の原型なんじゃないか?)。

 

 制作過程では色々と問題もあったようだけど、ところどころにコリン・ヒギンズのユーモアが垣間見られてよかったです。ラストは原作のミュージカルと違ったハッピーエンドになっているようなんだけど、この落とし所がまたヒギンズらしくて。観られてよかったです。