今回の映画レビューもウディ・アレン。連投の第14弾は「ウディ・アレンの愛と死」(原題:Love and Death、1975年)です。時代をグッと遡って、ウディ・アレン監督作としては6作目。「アニー・ホール」や「マンハッタン」より以前の作品になります。ただこの作品、ベルリン国際映画祭で「銀熊賞」を受賞したりしていて、なかなか一筋縄ではいかないものとなっています。

 

 19世紀の帝政ロシア。フランスからナポレオン軍が迫る中、下級貴族の三男として生まれ育った気弱な青年ボリス(ウディ・アレン)はいとこで幼馴染のソーニャ(ダイアン・キートン)に恋心を寄せていたが、ソーニャは長男のイワンを愛していた。ナポレオンがロシアに侵攻し、いよいよ戦争に駆り出される前夜、イワンはソーニャではなくアンナに求婚する。それを受けてソーニャはすでに求婚されていた年上のニシン問屋のボスコベクと勢いで結婚してしまう。出征したボリスは前線に送られる前の3日間の休暇でペテルスブルクに行き、オペラハウスでアレクサンドロブナ伯爵夫人(オルガ・ジョルジュ=ピコ)に出会い、ソーニャとも再会する。そんなボリスだったが、出撃した前線で潰滅状態になった味方の中で生き延び、ひょんなことから功績を挙げて戦争の英雄になって、と話は進む。

 

 英雄となったボリスはアレクサンドロブナ伯爵夫人と再会し、情事を交わす。それに激昂した伯爵夫人の彼氏アントン(ハロルド・グールド)はボリスに決闘を申し込み、「もう命はない」と結論付けたボリスは、未亡人になっていたソーニャに求婚。ソーニャは、銃の名手であるアントンとの決闘で明日はないというボリスの言葉を信じ、ボリスとの結婚を承諾する。なのに、決闘でボリスは生き延び、ソーニャと結婚。新婚生活を始める。

 ソーニャは「ボリスを好きだけど愛していない」と言い切るが、生活を重ねるうちにその気持にも変化が生じて、仲の良い夫婦生活を送るようになる。なのにボリスは自殺願望を持つようになり、自殺を試みるがそこで生きることを意識し、生きていこうと決意する。そんな最中に、再度ナポレオンがロシアに攻め込んできたという情報を聞きつけ、ソーニャはナポレオン暗殺計画を実行するようボリスに迫って、と話は展開する。
 

 こうやってストーリーを追っていくのも楽しいのだけど、この映画の肝はストーリー展開にあるわけではない。場面場面でのスプラスチックなドタバタギャグや、ボリス/ウディ・アレンとソーニャ/ダイアン・キートンの哲学的でそれを茶化してる会話や、いろんな場面で披露される名言などが各所にちりばめられていて、その一つひとつが絶妙に楽しく嬉しい。それぞれがなんらかのパロディになっているようなのだけど、オリジナルを知らなくても充分楽しめる。

 例えば、イワンの死後にその妻とソーニャが遺品を分け合うシーンだったり、自殺願望を持ったボリスにどう対処したらよいかソーニャが老神父に相談するシーンで老神父がたどりついた「この世で最高のもの」だったり、ナポレオンに面会する男になりすますためにその男を襲うシーンだったり、ラストでソーニャに会いに来たボリスが死後について語るセリフだったり。まだ監督6作目ということもあり、やりたいことがいっぱいで、それをやりたいようにやっているのが見てとれる。ところどころウディ・アレンの本音も見え隠れして、それも「なるほどね」と楽しくなります。

 

 この映画好きですね。ウディ・アレン作品の中でも上位に入る傑作だと思いますよ。こちらは、videomarket のクーポンで鑑賞可能です。気になった方は是非。