こちらに都合の良い事ばかり書いても信用してもらえないだろうと思い、
これからは思い切って都合の悪いことも書くことにしました。
代筆屋を始めてから15年以上経ちますが、
先日、初めて「お金を返して欲しい」といったメールを頂きました。
僕の自己保身ではなく、公平に公正にすべて正確に知ってもらいたくて事の詳細を書いておきます。
ある女性の方から復縁の依頼がありました。
復縁の料金をお伝えすると、「高い。なぜそんなに高いんだ」と憤ったメールを送ってこられました。
もちろん私は価格を提示してから依頼されるかどうかは依頼者の方の判断にゆだねています。
依頼を強要するなどあり得ません。
高いと思うなら無理して依頼しないでください、
人生を懸けてでも僕に依頼したいという方だけ依頼して下されば結構です
と言った旨も伝えるようにしています。
すると、この方はこんな提案をして来られました。
「5万円払います。上手くいったら残りを払います」
本音を言うと僕はこうした値下げのお願いを何度か受けたことがあります。
僕にもプロとしての誇りがありますから、価格交渉に関してはほとんどお断りしてきました。
ただ、困っておられてどうしても依頼したいという想いが伝わってきたので、
「5万円の範囲で全力で考案します」とお伝えしました。
「相手のあることなので復縁できるかどうかの100%の保証はできません」
といつものようにお伝えしました。
何度かやりとりを重ねて5万円の範囲で全力で考案した文章を納品すると、
「特に真新しい言葉の無い文章でした。」
とそっけない返事をされました。
なぜシンプルな言葉なのかを懇切丁寧に説明しましたがその点に関してスルーされました。
この時に嫌な予感はしていました。
数日して、手紙を送っても返事が来ない、彼は酷い人間だ、
というメールを何度も何度も受けました。
その都度、もう少し待って見ましょう、彼にも都合がありますから、と言った言葉や、
元気になってもらおうと前向きになれるような言葉を何度もかけ続けました。
やがて攻撃対象が私に変わったことを感じました。
あんな手紙でお金を取るなんておかしいといった内容に・・・。
僕は15年以上この仕事を誇りを持ってやってきました。
依頼を受けるときは未だに緊張するし、文章を考案するときは強烈なプレッシャーで気が狂いそうにもなります。
それでも依頼者の願いを叶えるため、心を前向きに、人生が少しでも良くなるような言葉を探します。
僕ら物書きは限りある命を切り売りしてるんです。
そうして心を動かす文章が出来上がります。
僕の15年、僕の人生そのものを否定するような本当に心無い酷い言葉を何度も受けました。
今回の代筆とは直接何の関係もない僕のYouTubeチャンネルでの顔や声まで否定されました。
名誉棄損罪や侮辱罪で告訴しようかとも考えました。
ただ、これは明らかにおかしいと、
おそらくは精神疾患を抱えておられたのかもしれないとふと頭をよぎり、
ギリギリの所で堪えました。
そして、先日、お金を返して欲しいとの申し出があって、
すべてを理解しました。
本当に悔しかったです。
ですが、そうした依頼者であることを見抜けなかった自分の落ち度であると思い至ったんです。
目の前に起きた出来事は自分がやってきたことの総決算である
と言う自分がよく周囲の方に伝えてる言葉が浮かんできました。
一生懸命やって来たつもりではあっても、どこかに甘えがあったんでしょう。
自分の心に隙があったから、そうした依頼者が目の前に現れて、こうした現実を引き寄せてしまったんだと確信できました。
その瞬間、その依頼者への怒りはスッと消えて、返金にも応じることができました。
というより、こんな人物をもう相手にしたくない、
そんなことに時間を取られたくないと言う心の叫びでもあったんです。
しかし、不思議なことですが、
返金の手続きを終えた時に心がフッと軽くなりました。
心の隙が気持ちの良い報酬を受け取り、
気持ちの良い報酬ではなかったから心がさらに淀んでいたんだと思います。
淀みの原因を手放すとスッと楽になった。
目の前の相手は自分の心の状態を気づかせてくれるための存在だったんだ
と悟った時に、相手に感謝することができたんです。
心より「有難うございました」とメールを返すことができました。
こんなことを書くとおそらくは依頼が減ったりするのかもしれません。
昔の自分なら格好悪いな都合悪いなと感じるこうしたことを曝け出すことはできませんでした。
だけど、すべて曝け出さないと気が済まなくなったんです。
都合の良いことばかり魅せる今の時代が大嫌いだから、
自分が都合の悪いことを隠してどうするんだ、と。
ああ、吐き出したらスッキリしました。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。
代筆屋 ナカジ