大腸ポリープの摘出手術:病院へ行くのも大変

 

 朝から洗浄剤モビブレップとコップの水を合わせて三㍑余りを飲んでいたが、これらの水分が早く排出されてトイレに駆け込まなければならない状態ができるだけ早く治まって欲しいと願っていた。徐々に便意を覚える間隔が長くなっていたが、それでもまだ腸内の水分は輩出しきれていなかった。

 

 病院には車を停めて置くことができないために、どのような方法で行くか模索した。コミニティバスもあるが、これは毎日ではなく週三日ほどでしかも一便か二便ほどしかないために極めて利用し難い。

 

前日、タクシー会社に電話を入れて病院に近い息子の所に1時に来てもらうように頼んでおり、十二時半頃には家を出なければならないと思っていた。持参するパジャマや着替えなどは妻が大きなバッグ一杯に用意してくれており、私も歯磨きや洗面具、常備薬、入院の書類などをショルダーバッグに入れて用意した。

 

 妻とともに、十二時半を数分遅れて我が家を出た。何とか約束の時刻を五分ほど余して息子の家に着いたが、気になっていたタクシーはまだ来ていなかったのでホッとした。車を奥の方にバックして停め、妻と家の前のベンチに荷物を置いてタクシーが到着するのを待つことにした。

 

すると、便意を覚えて息子宅のトイレを借りることにしたが、ここの通用口の開け方はなかなか難しい。数日前に孫Hを迎えに行ったときにその使い方を聞いていたので、何とかドアを開けることができた。そそくさと液状便の排出を済ませてタクシーが来るのを待った。

 

 定刻を数分過ぎた頃、携帯電話に電話が入って「タクシーが間もなく到着します」と、人工的な音声で述べた。「もうすぐ来るぞ」と思いながら待っていたが、なかなかタクシーは来なかった。「ここが分からないのかな?」と、広い通りに出たりしながら待ってみたが、それらしい車の姿は無かった。

 

しばらくすると、タクシー会社から電話が入ったが、前日と同じ年配女性の声だった。広い住宅地の中で息子宅の位置を確認していたが、彼女の言っている場所は全く方角違いのようだった。しばらくやり取りをしていると、彼女は「地番が違うのではないか」と言った。

 

何か目印になる物は無いかと探していると、近くにコミニティバスの停留所があったのでその停留所の名称を告げた。すると、息子宅の近所に住む初老の夫婦が通りかかり、丁寧に挨拶してくれた。

 

彼らに、

「1090番地は、この辺りに間違いないですよね?」

と確認すると、彼らは頷きながら

「ええ、そうですね」

と答えて通り過ぎた。

 

不審に思われてもと思って、彼らにタクシーを待っていることを話すと、彼らはかなり気にする素振りをしながら歩いて行き、その後近くに在る駐車場からご主人が運転する車で黒い車で通りかかり、車を停めて

「まだ来ませんか?」

と尋ねてくれた。

 

「ええ。この停留所の名称は言ったのですが、もっと明確な目印になる物があればいいのですけどね」

と返答すると、彼は

「公民館が在りますよ」

と言った。

 

「えっ、そうなんですか? それは何処にありますか?」

と応じたところ、彼は車を道端に寄せて停め、わざわざ車を降りて五十㍍ほど離れた交差点を右折した先にある公民館が確認できるところまで案内してくれた。その親切さに恐縮して心からの礼を述べ、彼らを見送ってからタクシー会社に電話を入れたところ、停留所の名称でおおよその位置が分かったようだ。

 

 広い通りでしばらく待っていると、坂道の上の方からそれらしい車の姿が見えて来た。広い通りから息子宅の方に案内して、ようやく病院に向かうことになった。前期高齢者と思われる運転手と世間話をしている内に病院に着くことができたが、入院するのも楽ではない。

 

できれば入院の場合には多少駐車料金が高くなっても車を停めておくことができるようにして欲しいと思うとともに、家でもビブレップを服用して排出を済ませてから入院するのではなく、朝から入院できるようにはできないものかと、強く思った。

 

 つづく

 

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