上位陣総崩れ

 

 令和六年夏場所初日の取り組みの後半戦をテレビ観戦したが、上位陣が総崩れという波乱の幕開けとなった。先の大阪場所では「荒れる大阪場所」と述べたが、昨日の取組を観ていると、この言葉は何も大阪場所だけに留まらない感じがしてきた。

 

 役力士の取組では、先ず関脇阿炎が登場して三枚目翔猿と対戦した。阿炎は立ち合いから得意の突っ張りで攻め、翔猿は後退しながら土俵伝いに右に回り込みながら相手の手を叩くと、阿炎は相手の動きに追いつけずに土俵に這った。

 

 関脇若元春は元大関三枚目高安と対戦した。五分の立ち合いで、高安が左下手を引いていたために若元春の押っつけやいなしなどの攻撃を凌ぎ、攻防の末に体が離れた。高安がすかさず突き押しで攻め込むと、土俵際で体が伸びた若元春は土俵を割った。高安の攻めが終始上回っており、その好調さを感じた。

 

 カド番大関霧島は二枚目豪ノ山と対戦した。立ち合い低く当たった豪ノ山が一気に攻めると霧島はなすすべなく後退し、そのまま押し切られて完敗した。どちらが大関か分からない内容で気迫の差を感じたが、大関はこのままではカド番脱出が難しくなりそうだ。

 

 先場所何とか勝ち越した貴景勝は、二枚目に躍進した平戸海と対戦した。立ち合い、平戸海はいい角度で鋭く当たったのに対して貴景勝の当たりは弱く、平戸海の一気の攻めに後退してあっけなく土俵を割った。貴景勝は立ち合いから鋭く当たる相撲が取れないと、持ち味を生かしきれず、先行きが不安を感じる。

 

 しこ名を改めた琴桜は、先場所長らく務めた関脇から陥落した筆頭大栄翔と対戦した。立ち合いから大栄翔の当たりを受けて立った琴桜は攻め返したが、大栄翔は後退しながら体を入れ替えて突き押しで反攻すると、琴桜は体が起きてそのまま押し出された。大栄翔は突き押しの実力者であり、一方の琴桜は腰が高いように思われた。

 

場所前のNHKのインタビューで、冗談交じりに「絶好調です」と言っていた豊昇龍は新進の筆頭熱海富士と対戦した。立ち合いに当たると直ぐに熱海富士は右上手を取り、豊昇龍は下手を引いたが、一般的には上手が有利だ。

 

熱海富士が腰を落ち着けながら引き付けて攻め込むと、土俵際に詰まった豊昇龍は下手投げを打ったが腰が下りていた熱海富士の体はびくともしないままま寄ると豊昇龍は土俵を割った。

 

 横綱照ノ富士は新進小結大の里と対戦した。立ち合い、大の里は右が入ったが、横綱は左上手を取れなかったようだ。そのまま大の里は左をねじ込むように攻め込むと、横綱は後退しながら左から小手に振ろうとしたが、大の里がしっかりと腰を落ち着けて攻め込むと体が起きた横綱は土俵を割った。

 

 これらの結果を見ていると、上位陣とそれを追う力士の間にそれほど力の差が無いように感じられる。それだけに土俵上は波乱含みとなり、一瞬たりとも目が離せない感じがして、これもまた面白い。

 

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