春場所三日目を観て

 

 昨十二日、春場所は三日目の取組が終わった。この時点で幕内の全勝は六人となり、役力士では関脇若元春と小結阿炎の二人だけとなった。その一方、横綱は照ノ富士と大関の豊昇龍貴景勝琴ノ若が二勝目を挙げて白星先行をなったが、大関霧島と関脇大栄翔が全敗しているのが気になる。

 

 横綱照ノ富士は前頭筆頭朝之山と対戦し、長い相撲となったが徐々に自分に有利な体勢に持ち込んだ。朝之山は立ち合いからよく攻めたが、がっぷり四つに組むと体力に勝る横綱への攻め手を欠き、徐々に横綱の引き付けで腰が伸びて動きが取れない状態になり、寄り切られてしまったが、ここ数場所に比べると体調は良さそうだ。

 

 貴景勝は二枚目明生と対戦し、立ち合いから回転の速い上突っ張りを繰り出したがこれは効果がなく、明生に押し込まれて土俵際に後退した。ここで左から窮余のすくい投げを打つと明生が一瞬早く土俵外に落ちて二勝目としたが、相撲は明生のペースだったように思われる。

 

 琴ノ若は小結錦木と対戦し、立ち合いよく踏み込んで立つとすぐに右が入り、左も差そうとするとこれを嫌った錦木の体が伸びて後退したところを突き出した。この一番、琴ノ若は終始攻めて相撲を支配していたように思われる。

 

二連敗の霧島は前頭筆頭宇良と対戦し、立ち合いから相手の動きをよく見て突っ張りやいなしてよく攻めた。俵を背にした宇良は相手がさらに攻めようとする矢先、体を沈めて相手の下に潜り込むような姿勢を見せると、大関はこれで攻める体勢が崩れて突き落とされ、三連敗となった。

 

この一番は、宇良の変幻自在の動きが相手に戸惑いを生じさせたようだが、霧島は勝利の意識が強過ぎるのかもしれない。四日目以降、霧島はこの泥沼から這い出せるか。

 

 豊昇龍は二枚目熱海富士と対戦し、立ち合後の差し手争いから左を入ってまわしを取ると、それを嫌った相手が土俵を半周して体が伸びたところで寄り切って二勝目としたが、終始相撲を支配している内容だったように感じられ、調子が上がってきたようだ。

 

 若元春は三枚目隆の勝と対戦し、踏み込みよく立つと下から押っ付けて攻め込み、これを嫌って右に回り込んだ相手を更に下から攻めて押し出し、三勝目としたが、終始若元春のペースだった。

 

 五枚目大の里は四枚目平戸海と対戦したが、立ち合いに一瞬遅れた。右で一旦上手を掴むと、相手が引いたためにまわしを離して攻め込み、難なく押し出して四連勝としたが、しっかりと腰を下ろして圧力をかけながら攻めており、体力を活かしているように思われる。

 

八枚目阿武咲は七枚目金鋒山と対戦し、これを寄り切って三勝目としたが、今場所は動きがよく、入幕間もなく小結に昇進した頃を彷彿とさせる相撲を取っており、四日目以降にも期待して観たい。

 

元大関高安も元気だ。三日目はこのところ大きくなって力が増してきた九枚目琴勝峰と対戦した。高安はがっぷり四つになって終始攻めていたが、不用意に攻めると投げを食いかねないため、無理をしなかった。じっくりと攻めて、最後は腰を下ろして寄り切った。

 

昨日は孫の迎えがあったため、中入り後の数番は観られなかったために録画で確かめた。尊富士狼雅と対戦して、立ち合い当たると直ぐに左上手を取って投げ、入幕後三連勝としている。尊富士は、体は大きくないが相撲勘がとても良いように感じられる。今後が楽しみな力士の一人だ。

 

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