惰眠と不眠

 

 定職に就いていた頃には、朝は六時から七時前後には起きていたように記憶しているが、仕事が無くなってからは結構自堕落な生活に陥っており、夜は日付が変わった頃に消灯し、朝は七時か八時頃に起きるという毎日が多くなっていたようだ。

 

 一年余り前のことだっただろうか、かかりつけ医に、「夜はよく眠れているか?」と尋ねられ、「何時も七時過ぎか八時前後に起きているので、良く休んでいる」と答えたところ、彼は

「朝は早く起きるようにしてください」

と強く勧められた。このことは以前にもここで述べたかもしれない。

 

それからというもの、朝は五時台に起きるように努めたところ、すっかり睡眠不足に陥ってしまった。ただ、午前中の時間がたっぷりとあり、いろんなことができていた。しかし、どうしても睡眠不足が続くことは、いくら高齢者であっても良くなかったようだ。

 

 かかりつけ医は早寝早起きを勧めたかっただけかもしれないが、十分な説明がなかったためにその意図がよく分からないまま、夜はできるだけ早く床に就くように心がけたが、やはり睡眠時間は五、六時間ほどと短くなっていたのだ。

 

この影響は、定年後に発症した「乾癬」という皮膚炎(免疫のいたずらによると言われる)には、諸に悪影響が及んでいた。その後、受診した皮膚科の主治医には睡眠不足の問題を指摘され、「そんなことを言う医師は誰か?」とまで言われていた。

 

いろんな医師の考えがあるのだろうが、早寝早起きが健康にとって大切なことは疑う余地がない。ところが夫婦だけの生活をしていると、妻の習慣まで変えないことにはこれを続けることができないのだ。

 

結局、今では以前の状態に戻ってしまったが、長時間眠っていると朝方などには夢ばかり見ていることが多く、睡眠の質が良いとは言い難い。つまり惰眠を貪っているだけかもしれないが、それでも心身を休めるにはそれでもよいのかもしれない。

 

 そして一昨夜、数日前に続いて又してもなかなか眠りに就くことができなかった。眠られないままゴソゴソとしていると隣のベッドで休んでいる妻のことも気になる。結局午前一時頃にベッドを離れてリビングに向かった。

 

ここで炬燵に入って妻が収録している刑事ドラマなどを観て気分転換を図り、眠たくなればそのまま眠りに就いけばよいと思っていたところ、妻はそれらの録画を全て消去してしまっていた。仕方がなくNHKで放映されていたブレークダンスの大会の様子を観ていた。

 

 その番組も終わったが、なかなか眠られそうにはなかった。他のチャンネルを辿ってみたが、観たいと思われるような番組はやっていなかった。結局、退屈しのぎに漢字パズルの冊子を広げてしまったが、これは頭を使うので睡眠の妨げになるだけだった。

 

また、これをやり始めるとつい夢中になって紙面を凝視することになって、それが眼精疲労を招いてしまう。以前からこれにはその傾向があり、このところこれをやり過ぎて目を悪くして、視界には黒点がたくさん現れたり、ぼやけたりするようになっているのだ。

 

 遂に眠られないまま朝を迎えてしまったが、やはりこれはしんどかった。この日の午後には、朝から部活動にいっていた中二の孫Hの勉強を見なければならなかったのでいささか不安があった。部活から戻った彼から二時過ぎに連絡が入り、早速彼を迎えに行って三時過ぎから勉強に付き合った。

 

かつて、睡眠負債といったことが話題になったことがあり、その問題についてもここで述べたこともあったが、最近惰眠を貪っていたためにその「睡眠預金」がかなりあったと思われるが、果たしてこれらは相殺できるものだろうか。

 

 読んでいただき、ありがとうございます。