2023/9/30投稿



いよいよ佐賀短期大学の学園祭『あすなろ祭』まで1ヶ月を切った。各クラスで出店を出したり、お化け屋敷や輪投げ・ペットボトルボーリングなど、約2日間、近隣住民を巻き込んで行われる。

ステージでは福岡よしもとの芸人さんの漫才、ミスターあすなろ、ミスあすなろを投票で決めたり、思い思いに仮装してグラウンドを練り歩く、カラオケ大会にバンド演奏など、こちらも内容は盛りだくさん。


わがBクラスは比嘉さんの一声で、沖縄伝統料理『ヒラヤチー』と『ポーポー』を出店で出すと決まっていたので、お店のPOP作りや店番の担当なんかを、クラスのリーダーと副リーダーを中心に進められた。


今年は1年生から食物栄養学科男子(比嘉リーダー)バンドと生活福祉学科男子(弓矢リーダー)バンド、幼児教育学科女子(浜辺リーダー)バンドの出場が決まった。

わが相棒、比嘉貴之は高校時代から聖飢魔IIのコピーバンドのベースをしていた実績があり、わがギターの師匠の徳ちゃんも参加する生活福祉学科のバンドも、楽器の経験者揃い。幼児教育学科の女子はピアノの実技もあり、人気のプリプリ(プリンセスプリンセス)のコピーバンド。


しかしながら、佐賀短期大学にギター部はなかった。まあ、徳ちゃんからフォークギターの基礎を教えてもらい、直樹から細かいテクニックを学んで、自分の部屋で迷惑にならないくらいで練習するだけの僕が、バンドに所属する事は想像出来なかった。いきなり比嘉さんと徳ちゃんが、下宿島村の僕の部屋に来た時は何事かと思ったが、その話の内容もぶっ飛んでいた。


「正木くん、部長になってくれへん?」

徳ちゃんのいきなりの申し出に

「え、なんのです?」

部長だの、課長だの、社長だのまったく縁のない家系。おやじは電機メーターを交換する、関西計器の子会社。お袋はなんかの事務職。まあどうでもいい話だが……。

「佐賀短期大学にギター部を作ろうと思うんよ。5人以上集まれば、同好会じゃなく部として部費がつくやんか。」

貴之の話はなんとなく理解は出来たが……こんなギター部はしきらんぞ。


「バンドの練習でスタジオ借りたら、値段もそれなりにするし、楽器も高いやん。」

「俺と徳ちゃんが副部長になって、名前だけクラスの女子に協力してもらったら30人以上は部員確保出来ると思うから、正木に協力してほしいねん。」

(なんで貴之さん、大阪弁なんやろう)とは思いながらも、取り敢えず名前だけの部長で、部員集めやめんどくさい事は俺等がやるからという申し出に渋々同意した。

ソフトテニスとバスケットボールに加えて、ボランティアサークルにも所属しているのに、ギター部の部長まで駆り出されるとは……。


さっそく部員募集のポスターを作り、顧問の先生は『清成先生』になってもらった。なんせ貴之の鶴の一声で貴之軍団が続々と名前だけ入部。食物栄養学科のBクラスでも入部希望者が30名を超え(名前だけだが…)、50 名を超える一大勢力となっていた。

佐賀短期大学の学友会(生徒会)で予算をつけてもらう為に、必要な備品やその理由・おおよその金額を出すために、副部長の貴之と徳ちゃん、部長の私で集まった。


予算請求の内訳は徳ちゃんと貴之が、

「これも要るよね。ギターはこれかな?」

「学校に残すものだから、それなりのアンプが欲しいよね。」

「マイクやミキサー、それにマイクスタンドかあ。」

値段とかよく知らなかったが、予算案だけでも100万を超えていた。まあ2人ともすべての要望が通るとは思ってないみたいだったが、自分では買えないものも、あわよくばという感じで書き出していた。

「半分の50万くらいでればそこそこ揃うよね」 

「まあね。正木くんもコンサートすれば?」

「フォークギターでですか?恥ずかしいですよ!」

けっこうビールも入ってきて、自信満々で予算案を提出した。

「学友会には井下も由香もいるから、俺からも頼んでおくから。」


1週間後、井下くんや由香ちゃんから『ギター部』の予算が決まったと連絡を受けた。

「5万円....嘘でしょ?」

貴之も徳ちゃんも苦笑いしていた。50人を超えるギター部と言っても、部としての実績がないからという理由だった。

「この金額じゃあ、スタジオのレンタル料と飲み会で消えるよ。」

(飲み会で使っちゃだめでしょ)と貴之に突っ込みたかったが、ギター部で頂いた予算は、仲良く徳ちゃん達バンドと貴之や新太たちのバンドのスタジオ代に使われたのであった。

悪魔の森の奥深く
一見 何の変哲もない古い屋敷
ただ その一室からは 毎夜毎晩
少女の悲鳴にも似た
叫び声が聞こえるとか
聞こえないとか
お前も蝋人形にしてやろうか
お前も蝋人形にしてやろうか♬


そして、いよいよ『あすなろ祭』当日を迎えるのであった。……続く


『感想』

佐賀短期大学学園祭に向けて、ギター部を作って予算をつけてもらおうと貴之とギターを教えてくれた先生に巻き込まれ、あっという間に部員が50名(名前だけでしたが・・・)を越えるということに。びっくりしましたね。(^∇^)