2022/11/30投稿


 


ハイサイおじさん、ハイサイおじさん 

昨日(ゆうび)の三合びん小(ぐゎ)残(ぬく)とんな 

残(ぬく)とら我(わ)んに分きらんな 

ありあり童(わらば) いぇー童(わらば) 

三合びんぬあたいし 我(わ)んにんかい 

残(ぬく)とんで言ゅんな いぇー童 

あんせおじさん 

三合びんし不足(ふすく)やみせぇーら 

一升(いっす)びん我(わ)んに 呉(くぃ)みせーみ ♪


「はいそこ!正木!照葉!居眠りばっかりしないで授業聴きなさい。」

チョークが飛んできて、ざわざわした周りの声に目が覚めた。夢の中で『ハイサイおじさん』が流れ、綺麗な海で釣りをしていた。

もうすぐ前期試験だと言うのに、緊張感がないと言われればそうなんだが、空調が効いてとても寝心地がよかった。(*^^*)


今度は冬の献血キャンペーン『クリスマス献血』に向けて、各大学から実行委員会が集まり会議が始まった。リーダーの向井さんから

「今年もクリスマス献血を福岡銀行駐車場で行う事が決まりました。特にA型とAB型の血液が不足だそうです。一人でも献血に興味を持ってもらう為に、みんなで力を合わせて盛り上げましょう!!」

と力強い挨拶があった。献血センターの雨宮さんからは、クリスマス献血に向けてのボランティア登録と参加者の名札、会議室の使用時間、会議の日程などが提案された。12月15日に行われる『クリスマス献血』に向けて、当面は2週間後にまた集まることになった。


「正木ちゃん、テスト勉強はかどりよる?」

池ちゃんが久しぶりに話しかけてきた。クラスが違う事もあるが、直樹や貴とつるんで行動することが増えたので、ちょっと疎遠になっていた。田島くんとはたまに連絡をとっていたが、池ちゃんは伊万里からなので、夏休みは全く交流がなかった。

「まったくばい。どこをどう勉強していいかようわからん。」

試験も初めてなので、取り敢えずノートを借りて書いていたが、書いていることがまずわからんやった。

「渡部先輩と石見先輩は食物栄養学科やから、試験に出る場所とか聞いたら教えてくれたんよね。昔使っていたノートとか貸してくれるらしいから、今度行ってみようよ。」

「まじ助かるわ。やっぱり頼りは先輩やね」


「正ちゃん、こっちこっち。佐賀調理製菓専門学校って書いてある。」

池ちゃんは渡部さんから場所は聞いていたらしい。

「正木くん、行くの初めてなん?」

橋口が何故かついてきた。この背高のっぽのかっこつけ橋口が、何故かしょうに合わない。でも池ちゃんの舎弟なのか、金魚の糞なのかよくつるんでいる。そっけなく……

「初めてばい。悪い?」

「悪くはないよ。ただ何回か池ちゃんと“あすなろ寮”には来たことあるから、それだけだよ」

喧嘩をうってる訳では無いが、癪に障るので言い方が冷たくなっちゃうね。


『佐賀調理製菓専門学校』と書かれた正門が見えてきた。ここはなんとなく見覚えがあった。清成先生から頼まれて発表会を手伝った時に、ここの生徒が応援に来ていた。ここで10月からの夜間コースで勉強したら調理師免許も取れるんだったなあ。

「俺、ここ知ってる。確か調理師免許が取れる夜間コースがあるんよね。」

「そうそう。確か、Aクラスの渋谷さんと桐谷さんが行くって言ってた。」

池ちゃんはそういう情報は誰よりも詳しい。調理師免許を高校卒業で貰った池ちゃんは、料理の腕もなかなかのものだった。そこは素直にすごいと思った。(^o^)


あすなろ寮は佐賀調理製菓専門学校のすぐ向かい側にあった。渡部さんも石見さんもこの寮で生活している。

佐賀短期大学には3つの女子寮があり、学校の側にも1つ、高木瀬に1つ、そしてあすなろ寮が多布施にあった。ここには寮長がいて、男子は家族が引っ越しで荷物を運ぶ以外は入れない。そして門限が21時。噂では夜間に侵入者がいるとベルとサイレンがなるらしい。

「池野くん、頼まれていたノート持ってきたよ。」

渡部さんと石見さんがノートを見せながら、テストに出る場所を詳しく教えてくれた。僕は石見さんに、

「ここってどんな意味なん?」

「ここはね、〇〇で電卓を叩くと出てくるよ。」

「へぇ、なるほど。」

渡部さんと石見さん、池ちゃんと俺は年齢は一緒だけど学年が違うので、タメ口で話したり敬語をたまに使ったりしていた。橋口は本当に年下なので、〇〇先輩と呼んでいる。 

僕たちは先輩のノートを借りて、しっかり勉強することにした。池ちゃんには下心があるように見えるが、渡部さんには彼氏がいるので、まあ頑張れとしか思えなかった。俺も桃ちゃんに対する気持ちがモヤモヤするから、彼氏がいる彼女って奴の扱いは、テストより難しいかもしれない。


試験前、久しぶりにすみれ荘に行ったら、直樹も貴も永田くんも部屋で勉強していた。直樹はスポーツは万能だが、勉強は苦手みたいだ。貴之は同じBクラスだが、栄養計算は自分でするしこっそり勉強している。永田くんは教員過程なので、頭も良く彼女と仲良く勉強している。

「正木、軽く1杯飲もうか?」

直樹が気を使って誘ってくれた。麗しき古里って泡盛は、直樹の実家がある『今帰仁酒造』の15〜20度くらいの米酒だ。直樹は濃い水割り、俺はほとんど水のような水割り。

「直樹ゴメンな。いつも勉強のじゃまして!」

「大丈夫さぁ〜。なるようにしかならんさ。」

直樹は優しいから藤吉や貴も誰かしら直樹の部屋にきて勝手に泊まって帰る。本当は一人になりたい時もあるだろうけどな。


2週間後、クリスマス献血実行委員会て集まり、佐賀短期大学ボランティアサークルはクリスマス献血の壁紙作りを担当した。石見先輩(律っちゃん)が……

「正木くん、テスト勉強はかどってる?」

「律っちゃんから借りたノート、半分は移したよ。」

「赤点取らなかったら、缶コーヒー奢ってもらわないとね。」

「缶コーヒーにケーキまで付けるよ。」

あと3日で前期テストがいよいよ始まる。律ちゃんの笑顔に癒やされ、クリスマス献血での作業がいい気分転換になった。5日間に及ぶ試験の日々、気づけばすっかり夏は終わり秋真っ只中であった。……続く


『感想』
書いていた自分がまだ前期テストの話を書き終えてなかった事を知りました。まだこの頃は、池ちゃんとも仲良くしてましたね。いつの間にか口も聞かなくなり、卒業してからも会うこともなくなったこの2人。橋口くんだけは田島くんが発見しましたが、池野くんは元気にしているんでしょうか?(>.<)y-~