【読書】稲盛和夫の実学―経営と会計 | THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

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「40歳からの〇〇学 ~いつまでアラフォーと言えるのか?な日々~」から改題。
書評ブログを装いながら、日々のよしなごとを、一話完結で積み重ねていくことを目指しています。

稲盛和夫の実学―経営と会計


かなり昔に一度読んだことがあるのですが、再読してみて、あのころは何もわかっちゃいなかった、と思いました。

<目次>
序章 私の会計学の思想
第1部 経営のための会計学―実践的基本原則
 第1章 キャッシュベースで経営する― キャッシュベース経営の原則
 第2章 一対一の対応を貫く― 一対一対応の原則
 第3章 筋肉質の経営に徹する― 筋肉質経営の原則
 第4章 完璧主義を貫く―完璧主義の原則
 第5章 ダブルチェックによって会社と人を守る―ダブルチェックの原則
 第6章 採算の向上を支える― 採算向上の原則
 第7章 透明な経営を行く― ガラス張り経営の原則
第2部 経営のための会計学の実践― 盛和塾での経営問答から
 問答1 先行投資の考え方について
 問答2 大手との提携による資金調達について
 問答3 拡大による借入金の増加について
 問答4 経営目標の決め方について
 問答5 「原価管理」の問題点


書かれている内容は、すぐにまねできることばかりではないと思います。経営者でなければ真似できないとこもありますし、経営者だからといって「すぐ」に真似できることばかりではありません。京セラが長年かけて構築したことを、本1冊で取り入れられると考えるほうが間違っています。

しかし、基本的な考え方、ものごとへの立ち向かい方はすぐに真似できることがあります。いや、ビジネスパーソンとして真似しないといけないことだと思います。

たとえば、

誰もがより大きな全体の中で、支え合い共存共栄しているという考え方がアメーバ経営の根底に存在する。(p121)

事業部制にして競争原理を導入すべき、というどこかのコンサルが言いそうなことは、たいてい失敗していますが、それはこの考え方を持たないからだと思います。くだらない、内向きの競争意識だけが蔓延るようになります。

会社全体で利益が出ていないのに
「うちの部は、目標を達成した。赤字はお前の部のせい」
等と言い出す偉い人がよくいますが、言語道断です。

あくまで目標は全体として利益を上げていくことです。勝負云々というならその相手は競合他社です。内部ではありません。それぞれの部門が部分最適を目指すのは当然のことですが、それが全体最適に結びつくように工夫できないと、弊害の方が大きくなります。

これは、組織で動く以上、どんな時も忘れてはいけないことだと思います。


人の心をベースにして経営をしていくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いも必要である。(p104)

不祥事が起きると、起こした人が悪いという話になります。もちろん悪いに決まっているのですが、管理責任というのも当然、考えておかなくてはいけません。

人間は弱い部分を誰もが持っています。
「このくらいなら大丈夫だろう」
というところから、深みにはまっていくことが多々あります。
自分には関係ない、と言い切る人は、幸いにもそうした場面に出会ってないだけではないのか、と僕は思ってしまいます。

今、経理という仕事について、お金を扱う以上、自分もいつそうした誘惑にかられるかもしれない、と思っているし、周囲の人間もそう思ってしまうのではないか、と考えないでもありません。

それは他人を信用していないということではなく、人間を100%信頼していないということです。だからこそ、歯止めになる仕組みは必要だと思います。

そうした仕組みは、人をがんじがらめに縛るためのものではなく、人の弱い心に歯止めをかける優しさなのだ、と思うのです。


実は僕は、稲盛さんのことをそれほど好きなわけではありません。別に嫌いなわけではないですが、世間の評判ほど凄いと思ったことがありませんでした。
ただ、この本にかかれていることは、本当に素晴らしいと思います。こうした姿勢を本当に貫いて経営をされてきたのだとすると(たぶんそうなのだと思います)、ちょっとこれから、稲盛さんの本を少しづつ読んでみようかな、という気にさせられた1冊でした。