【読書】白熱講義! 日本国憲法改正/小林 節 | THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

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「40歳からの〇〇学 ~いつまでアラフォーと言えるのか?な日々~」から改題。
書評ブログを装いながら、日々のよしなごとを、一話完結で積み重ねていくことを目指しています。

白熱講義! 日本国憲法改正/小林 節



「憲法は守るものではなく『守らせる』ものだ」
この本の著者、小林節先生から以前、直接伺ったフレーズです。
この本の中にも同じような内容のことが書かれています。
参議院議員が近づてきて憲法改正が争点になるかもしれない、といわれています。憲法は最終的には国民投票を経ないと改正ができません。そうした時期ですから、憲法について考えてみるのもいいんではないかと思います。

小林さんは改憲派の重鎮。と書くとゴリゴリの護憲派の方は嫌がるかもしれませんが(笑)
司法試験受験界のカリスマにして護憲派の雄である伊藤真さんとも親しく、対談をされたり、合同で勉強会をされたりしている方です。
(ちょっと古いですがおふたりの対談です)

目次
第1章 いざ!日本国憲法改正「憲法改正の論点」
第2章 今さら聞けない、「憲法」とは何か?
第3章 改憲論の本丸は、ズバリ、9条改正だ!
第4章 憲法に「愛国心」を入れるのは筋違い
第5章 大統領制を導入すると天皇制がなくなる!?
第6章 一番守られるべきものは13条である
第7章 自由民主党「日本国憲法改正案」は良薬か?毒薬か?;
巻末付録 日本国憲法

憲法についてはさまざまな考え方があると思います。どれが正解というわけではありません。いろんな形で議論を深めればいいと思います。そうしたことの一助としてこの本は参考になると思います。
この本をお薦めするのは僕が小林さんに非常に近い立ち位置にいるからということもありますが、それ以上にこの本には「憲法とはなにか?」ということが明確にわかりやすく書かれているからです。

「憲法とは国民から統治権力への命令である」

これが近代憲法の大原則です。この点については「そういう考え方もあるよね」というわけにはいきません。こう考えない限り「近代」憲法ではないですし、そうなれば「近代」国家として認められない、ということになります。聖徳太子の17条憲法とはわけが違うのです。

そう考えると、自民党のこの改正案は論外だということになります。

現99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
改正案102条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
       2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

先に書いた通り、憲法は国民が守るものではありません。統治権力者、具体的には国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員の方が守るもの、彼らに守らせるものです。一般国民は、憲法の枠内という制約のもとに作られた一般法によって、命令されるのです。
だから、この本の第4章のタイトルにあるように、憲法に「愛国心を持て」と書くことは論外です。憲法の中に「国民の義務」を書き込むことは本来筋違いなのです。

小林さんも、憲法に国民の義務を盛り込みましょう、と言う評論家、それを聞いて「そうだ」と賛同している人たちに対し

「自分たちが国の主であることを放棄して、『ご主人様、躾けてください!」と言っているようなもので、ここまでくると、もうマゾである」(p96)

と書かれています。

そしてこの原則に従うと、第6章のタイトルになっているように
「一番守られるべきものは13条である」
ということになります。

現13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 
改正案13条  全て国民は、として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

「個人を人」に、「公共の福祉を公益及び公の秩序」に、変えた理由がわからない。わからないから批判はしませんが、少なくとも裏があるのではと勘繰りたくなります。
憲法の存在理由である「人権の本質」を語ったこの13条を改正しようとするならば、それ相応の理由がなくてはなりませんが、自民党からまともな説明を聞いたことありません。

以上2点だけとっても、自民党の憲法改正案は問題ありです。
そのことを理解して、
「ではどうすればいい?」
ということを考えるきっかけになる本だと思います。

新聞社などがやる
「あなたは憲法改正に賛成ですか、反対ですか」
というアンケートはくだらな過ぎる、と思っています。
いま問われれうのは
「どのように変えていきますか?」
だと思います。
いわゆる護憲派の方も、環境権やプライバシー権で現行憲法に不備があると感じてらっやる方が多いと思うのです。
自分たちが変わらず生き残っていくために、
いまの権力者に都合がいいような改悪をされないために、
憲法改正問題を正面から考えてみることが必要だと思っています。