土砂降りの中、9回2アウト。1対1の同点。

3塁にランナーを置き、俺は打席に入った。

ツースリーからの直球を思いっきり振った瞬間に雷がなり、

打球は三遊間を抜け、サヨナラ勝ちとなった。

 

俺の青春のほとんどを費やすことになった野球に胸を撃ち抜かれた

瞬間だった。

 

リトルリーグの部員募集に応募したのは、小学5年生だった。

一応入団テストを受け、その晩に合格していたら電話がかかってくることになっていた。

 

黒電話が鳴った。父さんが受話器を取り応対した。

父さんは破顔して喜んだ。

「ヒロ、受かったぞ」

生まれて初めて勝ち取った経験となった。

 

毎週土曜日、北浦和駅まで自転車で行き、そこから南浦和まで電車に乗り、

そこから、土手沿いを歩いて、リトルリーグの練習に通った。

 

練習から帰る頃には、お腹がペコペコで、喉もカラカラ。

全ての力を使い切って、電車に乗った。北浦和駅を通り過ぎて

何度も車庫まで運ばれる経験もした。

 

この頃はまだ、自分自信が持てていた。

カラ元気でも、はったりでもいい。

自信を持つことが大切なんだ。これからの人生を生きていくためにも。

 

カラ元気を意識してやることができていたら。

俺の力はこんなものじゃなかった。