飼主の皆さんは、様々な理由で、かかりつけの動物病院を選んでいると思いますが、

どんな動物病院にかかりたいと思っていますか?

 

 獣医師にも理想の動物病院があります。私の場合は、まず、「ちゃんとした獣医療を提供する」ということに、一番重きを置いて開業しました。

 

 私の年代のころは、街で犬猫を中心とした診療を目指すものは、獣医師免許取得後、3年ほど街の動物病院で研修をして、その後、自分の病院を開業するという形が多かったと思います。獣医師を雇う動物病院は、忙しい動物病院ですので、そこで多くの診療を経験し、かなりの病気について対応できる力をつけて、自分の病院を開業していました。

 

 街の動物病院は、下痢や嘔吐などの消化器科や、皮膚病、外耳炎、さらには、外科手術にも、整形外科、眼科、腫瘍科などにも対応していますので、開業後もいろいろなことを学ぶ必要があります。尊敬する街の臨床獣医師が「すべての分野で一流、そして超一流の分野を一つ持て」と話すの聞いて、中部地方で行われる学会や勉強会にはすべて参加、そして力を入れようと考えていた眼科では、東京をはじめ遠方の学会や勉強会にも積極的に参加しておりました。そういった学会などで知り合った先生に、質問をしたり、自分ではできない手術をしてもらうために、その病院を紹介したりしながら、勉強をつづけていました。しかし、獣医療の進歩も凄まじいものがあり、すべての分野を極めるということは人間の能力ではできないほど高度になってきました。特に外科手技は、習得と修練に時間をとられますので、現時点で実施可能な手技をすべて習得するのは不可能であると思います。

 

 2010年くらいになってくると、日本の獣医療でも様々な学会がそれぞれの専門医や認定医を選出するようになりました。そうすると「当院できるのはここまでですが、ある施設に行ってもらえれば、このレベルまでできます。」という説明を飼主の方にする機会が増えてきました。一番力を入れて勉強していた眼科も比較眼科学会が専門医を認定するようになりました。2015年くらいは、眼科専門医を目指そうかな、と考えたこともありました。しかし、眼科専門医を取得した多くの獣医師は、街の動物病院から紹介された動物の眼科だけを診察・治療しています。眼科専門医とは、個人的にも親しくさせてもらっている獣医師が多いのですが、彼らの眼科への知識、眼科手術の手技の洗練度を見ていると、やっぱり眼科だけを追求していかないと、専門医のレベルまではいけないなと思いました。また。私は、子犬・子猫のころから、その子たちが亡くなるまでかかわっていたい、という気持ちがありました。割と最近に医療の世界では、「総合診療科」という専門科ができました。これは人医療においては、専門科が進んで、自分の専門分野以外の知識が少ないことが弊害としてでてきたことに対応するものだと思っています。その総合診療科は、「患者の特定臓器に着目するのではなく、全体的な健康問題に向き合って治療を行う。」ことと「すべての分野の最新情報に通じており、適切な専門科を紹介できる。」ことが求められていると聞いて、これが自分の目指す道だ!と思いました。

 

 こういった理由で現在も、全分野を勉強しつつ、眼科が得意な獣医総合診療医を目指しています。当院では正確な診断と適切な治療を提供する、ことを目指しております。すべての分野で最高の獣医療を提供することはできませんが、提供できる施設を紹介することはできます。