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入学式帰りの親子を見かけました

電車の座席に座りイヤホンからの音楽に集中して下を向いていたら
目の前に立ち止まった黒のローファーがあまりにピカピカで思わず顔を上げたの


つり革に掴まったちょっと猫背の女の子はローファー以外も全部ピカピカでした

埃のついていないブレザーは大き過ぎて細い体からぶかぶかと浮いていて
中途半端な丈のチェックのスカートはプリーツがみんなピンと並んでいて
まだ毛羽立ってないハイソックスに包まれた脚は少年のように骨っぽくて

傷ひとつない校章が胸元にキラリと輝いていました


隣に寄り添うように立っていたお母さんは

ちょっと古い雰囲気の水色のスーツを着て
少しゴワゴワした髪の毛を今朝一生懸命ブローしましたという感じのヘアスタイルで
口紅が少しはみ出ていました


ひと目で中学校の入学式帰りと分かって

どんな会話をするんだろう?と
お節介な私はそっとイヤホンをはずしてみたんだけど

二人は何も言わず

慣れていないらしい電車の中
よろけまいと少しだけ脚を開いてすっくと立って
黙って前を見ていたのでした


ただその二人の顔を盗み見たとたん私は胸がいっぱいになってしまった

期待と不安と誇らしさとやる気と嬉しさと戸惑いと少しの疲労と
とにかく新生活を迎えたというあらゆる感情がパンパンになったような

そんな表情をしていたから


ああ、いいなぁって

この女の子の中学校生活がひたすら楽しく充実していたらいいな
見守り支えるお母さんも幸せを噛み締め続けられるような毎日がいいなって

そんなこと絶対あり得ないのもうわかってるけど今この瞬間くらいは
そんな気持ちでこの親子の幸せを祈ってしまうくらいの
そんな表情をしていたんだよ




新生活を迎えられたみなさん!
おめでとうございます

まだ見ぬ明日はきっと素晴らしいと
私は無責任にも応援しますよ



***希良***