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お気に入りの雑貨屋にふらりと立ち寄って
何を買うでもなく店内をぶらぶら

ひとつひとつの商品ももちろん魅力的だけど
「何かがありそう」っていう雰囲気が静かに漂う場所なの

そんなわくわく感を味わいながらゆっくりとお店の奥に進んで行ったら


………!!!


パッと目に飛び込んできたおままごとセット


その瞬間私の心の中に突風がビュン!とひと吹きして
あっという間にフランスの夏の陽射しの中に飛ばされてしまいました


雑貨屋の棚に置かれていたおままごとセットは私が幼い頃使っていたものと全く同じで

それも
何年かに1度フランスのおばあちゃんの家でバカンスを過ごしていた時に遊んでいたもので


今の今まで全く思い出したこともなかったけれど

フランスらしい大人びた色味、お洒落な質感に私の記憶は一気に掘り返されてしまいました


太陽に照り付けられた白い小石の道や
遊び場にしていたガレージのひんやりとした空気や
そこに漂うガソリンの匂い

日本とは違う色の土をぐちゃぐちゃとこねて作ったクッキー
書斎から失敬した妙に立派な紙をちぎって作ったお金
(当時はもちろんユーロじゃなくてフランだった!)

今と変わらずフランス語はたいして得意じゃなかったはずなのに
美しい金髪のいとこと私はどうやってお店屋さんごっこをしていたんだろう

庭で風に揺れる白樺から実をとってきては細かくほぐして水に浮かべ
「これはコーヒーね!」と笑いあって遊んだのです

このオレンジのピッチャーからこの小さなカップにそそいで
大人の声音を真似して「うーん、まあまあね!」なんて言っていたのです



このおままごとセットはフランスの蚤の市で手に入れたものですと言う店員さんは
私の伝えきれない思い出話に優しく笑って耳を傾けながら
傷だらけの小さな食器達をひとつひとつ丁寧に拭いて包んでくれました


再び手元にやってきたおままごとセット

20年も前の思い出と一緒に
我が家のキッチンの片隅に飾っています


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***希良***