万一、不法上陸者を強制送還するならばより明白な実効支配の証と同時でなければならない(中川秀直)
民主党政権の「配慮外交」が国益を大きく損ねている。
香港の民間反日団体の活動家らによる尖閣諸島への不法上陸事件について、まだ、取り調べが終わっていないにもかかわらず、刑事手続きの送検ではなく強制送還手続きに入ると早い段階から報じられている。17日に関係閣僚会合で決定する見込みとも報じられている。
なぜ、取り調べの結論が出る前にこのような報道があるのだろうか。初めに強制送還ありきだったのではないか。
2010年の尖閣沖漁船衝突事件で刑事手続きをとった後に中国の猛反発を受けて腰砕けになった民主党政権は、2004年の小泉政権をならうつもりらしい。
しかし、民主党政権がそれをもって2004年に戻れると思ったら大間違いだ。
中国公船は領海侵犯をやめるのか、中国公船は自国の漁船が日本の領海を侵犯することをやめさせる協力をするのか、二度と尖閣諸島に上陸しないことを中国は約束するのか。多分、そんな密約はできないはずだ。
すると何が起きるか。テレビで取り上げられる英雄になろうとする人々が次々に尖閣諸島に押し寄せてくるかもしれない。けが人が出ることを恐れる巡視船は上陸を黙認し、上陸しても公務執行妨害をしなければ逮捕されても48時間以内に強制送還してくれて、中国国内では英雄扱い。こんなローリスク・ハイリターンなことはない。
そのような状況は2004年にはなかった。民主党政権はそこを間違えてはいけない。強制送還さえすれば2004年に戻れると思ったら大間違いだ。日本には司法権行使の決心がない、日本政府には領有権について自信がないとしか受け止められないだろう。それは今後の挑発的行為を助長するだけに終わるだろう。
万一、本当に、取り調べの結果、強制送還が最も妥当な結論として出たとしても、それだけを行なうのは間違いである。より明白な実効支配の証と同時でなければならない。
民主党政権にその決心があるのか。
(8月16日記)