2012年度経済財政白書についての高橋洋一さんのコメント | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

2012年度経済財政白書についての高橋洋一さんのコメント

秘書です。
経済財政政策についての骨太の論戦をしないと。


噴飯の経財白書!トンチンカンな記述も
2012.08.02 ZAKZAK 高橋洋一氏
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120802/plt1208020716000-n1.htm

 2012年度経済財政白書(平成24年度年次経済財政報告)が7月27日に公表された。デフレと金融政策や財政再建などについてどのように盛り込まれているのだろうか。

 ひとことで言えば、デフレ脱却というものの、デフレが貨幣現象であることを理解していない。このため金融政策の処方箋がぼやけている。この点、小泉政権時代に内閣府経済社会総合研究所長として浜田宏一氏(イェール大教授)がいた時よりレベルが低くなっている印象だ。

 まず、分析として、金融政策でマネタリーベース(中央銀行が供給する通貨)を変化させると、一定期間後に予想インフレ率が変化する事実をまったく使っていない。このために、これまでの金融緩和措置の実体経済に与える効果が計れていない。

 その結果、「資金繰りは緩和気味に推移したが、金融環境は改善せず」とかトンチンカンな記述になっている。また、予想インフレ率の変化の分析がないために、実質金利(名目金利マイナス予想インフレ率)の変化が捉えられていない。

 その一方で、名目金利のゼロ制約(金利をゼロ以下に下げられないこと)を強調して、金融政策の効果はないと結論づけている。実質金利であればゼロ制約はなく、予想インフレ率を高めて実質金利をマイナスにすることができるのをまったく見落としている。

 為替に対する金融政策の影響も考えていないようだ。為替が実質金利差から決まるという分析であるが、実質金利が金融政策から決まることを無視しているので、結局、実質金利はどこからか与えられたものとしている。

 金融政策が実質金利に影響を与えられることを考えないのだから、金融政策が実体経済に影響を与えられないというフレームワークで白書は分析している。つまり、金融政策の効果が出ないというのが白書執筆者の「前提」になっている。これではデフレ対策として、はじめから金融政策を除いて考えているようなものだ。

 財政についても今年の白書はレベルが低い。まず財政の健全性は、基礎的財政収支の黒字化でみるのが常識だから、2000年代から白書はその立場であったが、財政収支に変わっている。それに、財政状況に関する記述で事実誤認もある。

 「我が国のソブリンCDSスプレッドは、リーマン・ショック以降、我が国の財政状況の悪さが意識されたために、拡大したと考えられる。2011年末では、先進国の中では、GIIPS諸国とフランスに次ぐ水準となっている」と書かれているが、データを見れば違う。

 100%近いギリシャは別としても、ポルトガル11%、アイルランド7%、イタリア5%、スペイン4%程度であった。フランスは2%程度。それに対して日本はせいぜい1・4%。アジア最上位クラス先進国中でもトップクラスでアメリカ、イギリスに次いでドイツと同じレベル。危機感をあおりたい一心で、データを見ればすぐ分かるような事実誤認は白書としてきわめてまずい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)