日中首脳会談と戦略的互恵関係と「核心的利益」論 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

日中首脳会談と戦略的互恵関係と「核心的利益」論

秘書です。

戦略的互恵関係は再確認されたのでしょうか?

「核心的利益と重大な関心事項を尊重し,具体的な問題が大局を阻害することがないようにする必要がある」ということは、両国首脳の交流によって大局の安定を維持するという戦略的互恵関係とは異なる新概念では?

中国首脳の訪日の招請に対して、温総理から,両国の外交当局間で良く意思疎通を図っていきたいと回答していることにも注視しましょう。

日中双方は、相手が現状維持の枠を超え始めていると相互に疑心暗鬼になっているのかもしれませんが、もしも、中国が尖閣諸島を核心的利益を位置付けたとすると、旧来の現状維持の枠組みに戻ることはできず、戦略的互恵関係の基礎も変化してしまったのかもしれませんね。どうだったのでしょうか?


中国、尖閣「核心的利益」と言った?日中にズレ
読売新聞 5月14日(月)12時10分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120514-00000383-yom-pol
 【北京=高橋勝己、大木聖馬】野田首相と中国の温家宝首相による13日の首脳会談では、尖閣諸島を巡って激しい応酬が行われたが、会談内容に関する日中双方の解釈に微妙なズレが生じている。

 中国中央テレビや国営新華社通信は13日夜、温首相は分離独立運動が続く新疆ウイグル自治区の問題と尖閣諸島の問題を並べ、「中国の核心的利益と重大な懸案事項を尊重するよう(日本側に)求めた」と報じた。核心的利益と重大な懸案事項をひとくくりにし、尖閣諸島が「核心的利益」とも読み取れるように報じたものだ。

 これに対し、野田首相は会談で、尖閣諸島が日本固有の領土であることを強調した上で、「尖閣諸島周辺を含む中国の活動の活発化が日本国民の感情を刺激している」と中国側に自制を求めた。

 藤村官房長官は14日午前の記者会見で、「温首相から尖閣諸島をめぐる問題と核心的利益という言葉を結びつける発言はなかった」と述べた。日中関係筋によると、中国政府も日本側に対して、「温首相の核心的利益に関する発言は尖閣諸島を含むものではない」と説明している

 中国の国営メディアが、尖閣諸島が核心的利益に当たるとも取れる報道を行った背景には、東京都の石原慎太郎知事が買い取りを表明するなど、尖閣諸島を巡る一連の日本の動きに中国のネット世論でも不満が高まっていることがある。

 胡錦濤政権は対日政策で弱腰な姿勢を示すことはできず、国営メディアは中国政府の意向も踏まえて、温首相が日本側に強い態度を示したことを国内向けにアピールしようとしたとみられる。.

最終更新:5月14日(月)12時41分


日中首脳、尖閣巡り激しく応酬…解釈でもズレ
読売新聞 5月14日(月)12時10分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120514-00000383-yom-pol

 【北京=高橋勝己、大木聖馬】野田首相と中国の温家宝(ウェンジアバオ)首相による13日の首脳会談では、尖閣諸島を巡って激しい応酬が行われたが、会談内容に関する日中双方の解釈に微妙なズレが生じている。

 中国中央テレビや国営新華社通信は13日夜、温首相は分離独立運動が続く新疆ウイグル自治区の問題と尖閣諸島の問題を並べ、「中国の核心的利益と重大な懸案事項を尊重するよう(日本側に)求めた」と報じた。核心的利益と重大な懸案事項をひとくくりにし、尖閣諸島が「核心的利益」とも読み取れるように報じたものだ

 これに対し、野田首相は会談で、尖閣諸島が日本固有の領土であることを強調した上で、「尖閣諸島周辺を含む中国の活動の活発化が日本国民の感情を刺激している」と中国側に自制を求めた。


胡主席、首脳会談に応じず…尖閣で冷却化懸念か
読売新聞 5月14日(月)11時20分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120514-00000326-yom-pol

 【北京=大木聖馬】中国の胡錦濤(フージンタオ)国家主席は14日、北京の人民大会堂で野田首相、韓国の李明博(イミョンバク)大統領と会談した。

 胡主席は3人で会談した後、李大統領との個別の会談に応じたが、野田首相との会談には応じなかった日中関係筋によると、日本側は野田首相と胡主席との個別会談を設定する方向で要請し、週末まで調整を続けたが、中国側が応じなかったという。

 温家宝(ウェンジアバオ)首相が13日に野田首相と個別会談した際に、尖閣諸島の問題を取り上げて日本側に厳しい姿勢を示した経緯があり、同筋は「胡主席が野田首相と会えば、尖閣諸島の問題を取り上げざるを得なくなり、日中関係が再び冷え込むことを中国側は懸念したのではないか」と分析している。

→個別の問題が首脳交流に影響しはじめた、ということでしょうか?

→戦略的互恵関係はどのように言及されているのでしょうか。特に、温家宝首相側の言及の有無に注目しましょう。


日中首脳会談(概要)
平成24年5月13日 外務省HPより
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kinkyu/2/20120513_222956.html

13日(日),日中韓サミット出席のため中国・北京を訪問中の野田総理大臣は,人民大会堂において,16時頃(日本時間17時頃)から約1時間,温家宝総理との間で日中首脳会談を行ったところ,概要は以下のとおり。(日本側同席者:枝野経済産業大臣,齋藤官房副長官,山口外務副大臣,長島総理補佐官,丹羽駐中国大使他,中国側:楊潔チ・外交部長,張平・国家発展改革委員会主任,陳徳銘・商務部長,程永華・駐日中国大使他)

1 日中関係総論

(1)双方は,昨年12月の野田総理訪中において達成した成果について,その後着実に進展が図られていること,日中国交正常化40周年である本年,日中関係が全体として良好な発展をとげているとの認識で一致した。

(2)野田総理から,互いの発展は日中両国,地域及び国際社会に大きなチャンスをもたらすものであり,今後も日中が共に発展し,地域・国際社会で更に建設的な役割を果たすことが重要との考えを改めて述べた。

(3)温総理から,この40年間,日中関係は大きく発展したが,時折紆余曲折もあった,、双方は,4つの基本文書に示された基本原則を踏まえ,核心的利益と重大な関心事項を尊重し,具体的な問題が大局を阻害することがないようにする必要がある旨述べた。これに対し,野田総理から,日中両国は緊密であるがゆえに時折難しい問題も生じるが,我々両国の指導者が大局的な見地に立って共に努力しなければならない旨強調した。

2 北朝鮮

(1)双方は,先般の北朝鮮のミサイル発射は,累次の安保理決議の深刻な違反であるとしてこれを強く非難した安保理議長声明及び制裁措置の実効性の向上の決定を評価した上で,今後は更なる挑発行為を防ぐことが重要であり,引き続き,日中両国間で緊密な意思疎通と協力を維持していくことを確認した。

(2)野田総理から,拉致問題の解決に向けて,北朝鮮側への働きかけも含め,中国側の一層の理解と協力を要請した。温総理から,中国側としては,日朝関係の改善を支持している旨述べた。

3 日中関係各論(※以下,項目ごとの括弧内は,昨年12月の野田総理訪中時に表明した「6つのイニシアティブ」を表す。)

(1)政治的相互信頼の増進(イニシアティブ①)

(ア)双方は,政治的相互信頼の増進のため,ハイレベル交流の一層の活発化で一致した。野田総理から中国首脳の訪日を改めて招請し,温総理から,両国の外交当局間で良く意思疎通を図っていきたい旨述べた。また双方は,日中ハイレベル経済対話の早期開催で一致した。
(イ)双方は,安全保障分野での交流と協力を進め,信頼醸成を図っていくことの重要性で一致した。
(ウ)野田総理から,国際社会の基本的かつ普遍的価値の一層の理解と追求のため,日中人権対話等を活用し協力していきたい旨述べた。
(エ)温総理から,ウイグルの問題について原則的立場を述べた。野田総理からは,日本の立場を述べた上で,日中両国は緊密であるがゆえに時折難しい問題も生じるが,我々両国の指導者が大局的な見地にたって共に努力しなければならない旨述べた

(2)海洋に関する協力(イニシアティブ②)

(ア)双方は,今月16日に杭州で「日中高級事務レベル海洋協議」第1回全体会議が開催されることを歓迎し,この協議を通じて,海洋関係機関間の信頼醸成が図られることへの期待感を表明した。
(イ)野田総理から,東シナ海資源開発に関する国際約束締結交渉の早期再開を改めて強く要請した。これに対し,温総理から,交渉の早期再開に向け双方の意思疎通をしっかり行っていきたい旨述べた。
(ウ)尖閣諸島について,温総理から中国独自の主張に基づく言及があり,野田総理からは,我が国の基本的立場について述べた上で,本件をめぐる問題が日中関係の大局に影響を与えることは望ましくない旨述べた。温総理からも同趣旨の発言がなされた。野田総理からは,尖閣諸島周辺を含む海洋における中国の活動の活発化が日本国民の感情を刺激していることに言及し,中国側の冷静な対応を強く求めた

(3)震災を受けた協力(イニシアティブ③)

野田総理から,中国の輸入規制及び渡航制限につき,最新状況を踏まえた一層の緩和,見直しを要請した。また,野田総理から,福島-上海便等の被災地への直行便の早期復航を改めて要請した上で,7月1日から,被災三県を訪問する中国人個人観光客に対する数次ビザ発給を開始する旨表明した。

(4)互恵的経済関係のグレードアップ(イニシアティブ④)

(ア)双方は,日中韓投資協定の署名,日中韓FTA交渉開始の合意を歓迎し,東アジア地域の包括的な経済連携の進展に向けて協力することで一致した。
(イ)双方は,日中社会保障協定に関する協議の進展を評価した上で,早期の締結を目指し,協議を一層加速化させることで一致した。
(ウ)双方は,昨年末に合意した日中金融協力の進展を歓迎し,更なる充実化で一致した。その他,航空,省エネ・環境フォーラムを通じた協力,映像等コンテンツ分野の官民交流,サービス分野の経済交流,観光促進,知財保護等の分野での協力推進でも一致した。

(5)文化・人的交流(イニシアティブ⑤)

(ア)双方は,各種行事や交流を着実に進め,本年の「日中国民交流友好年」を一層盛り上げていくために協力することで一致した。
(イ)双方は,国民感情の改善という観点から,40周年の機会を捉え,両国民間の相互理解増進に向けた取組の強化で一致した。
(ウ)野田総理から,今般中国から日本に対し新たにトキを供与することに対する謝意を表明した。

(6)地域・グローバルな課題に関する対話・協力(イニシアティブ⑥)

(ア)双方は,IMFの資金基盤とチェンマイ・イニシアティブの強化に関する合意において日中両国が果たした重要な役割を評価し,今後日中が連携し,これら合意を着実に実施することで一致した。
(イ)野田総理から,日米中3か国の戦略的安定が重要との観点から,日米中対話が重要である旨述べた。温総理から,日米中対話については現在中国側で真剣に検討している旨述べた。

→中国側はどう報道しているか?

温家宝総理が日本の野田佳彦首相と会談
「人民網日本語版」2012年5月14日
http://j.people.com.cn/94474/7815866.html

温家宝総理は13日、日本の野田佳彦首相と人民大会堂で会談した。

 温総理は「国交正常化から40年で中日関係は長足の進歩を遂げる一方で曲折も経てきた。その経験、教訓共に深いものがある。中日関係は現在、新たな発展のチャンスを迎えており、双方は広範な利益を共有している。協力の推進には堅固な政治的相互信頼と戦略的相互信頼の支えが必要だ」と指摘。新疆ウイグル自治区や釣魚島の問題における中国側の原則的立場を重ねて表明したうえで、日本側に対して、中日間の4つの政治文書の原則と精神に従い、中国側の核心的利益と重大な懸念を的確に尊重し、問題を慎重かつ適切に処理し、両国関係発展の正しい方向性を堅持するよう促した。

 野田首相は「中国の発展は日本と国際社会にとってチャンスだ。日本は中国との戦略的互恵関係の推進を重視し、尽力している。日中間の4つの政治文書の原則と精神に従い、中国側とのハイレベル交流、政治的相互信頼、互恵協力、人や文化面の交流を強化したい」と表明。「中国の内政に干渉する意図はない。両国間の問題に関しては、大局に立ち、中国側と共に適切に処理し、両国関係に影響が出ないようにしたい」と述べた。

 同日、中日韓首脳は「キャンパス・アジア」プロジェクト開幕式に出席し、3カ国の青年と交流した。(編集NA)

→温首相が言及しているのは「政治的相互信頼」と並立した「戦略的相互信頼」、野田首相が言及しているのが「戦略的互恵関係」です。