これは、大阪維新の会の民主と自民に対する宣戦布告だろう(高橋洋一氏) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

これは、大阪維新の会の民主と自民に対する宣戦布告だろう(高橋洋一氏)

秘書です。

世論調査では橋下市長の大阪維新の会への期待が高まっています。
既成政党への失望の裏返しでしょう。
既成政党との政策的な対立軸は?

高橋洋一さんは、消費税の地方税化を「大阪維新の会の民主と自民に対する宣戦布告」と位置付けています。



消費税の地方税化に対する反論に反論する
2012年5月2日 ダイヤモンドオンライン 高橋洋一 嘉悦大学教授
http://diamond.jp/articles/-/17932

橋下徹大阪市長のツイッターが話題だ。「民主党も自民党も現行の統治機構のままでの増税。大阪維新の会は消費税の地方税化、地方交付税の廃止。増税するなら地方が判断。今の制度のままで消費税をアップしようもんなら後からの変更など効かなくなる。年金も結局若者にしわ寄せのまま。今こそ統治機構を変える方向性を決めなければならない」とした。

 これは、大阪維新の会の民主と自民に対する宣戦布告だろう。実際、ある閣僚経験者は、「困ったなあ。こっちはもう消費税で方向転換できない。これで選挙を仕掛けられたらたまらない」と頭を抱えていた。橋下市長は、地方分権・道州制を前提とし、消費税を地方へ移す代わりに、地方交付税は要らないという論法もとっている。

消費税の社会保障目的税化は
世界の流れに逆行している

 橋下市長の話の前提には、消費税の社会保障目的税化はおかしいという認識がある。消費税を社会保障財源のために使うのは、仕方ないと思う人は多いだろう。財務省は社会保障費が年々伸びていくので、消費税を社会保障に充てなければいけないという。増税したい財務省と予算を大きくした厚労省の合作で、滅茶苦茶なロジックだが、社会保障の専門家でもこれに異を唱える人はほとんどいない。

 社会保障は、助けあいの精神による所得の再分配なので、国民の理解と納得が重要だ。というわけで、日本を含めて給付と負担に関係が明確な社会保険方式で運営されている国が多い。もっとも保険料を払えない低所得者に対しては、税が投入されている。ただし、日本のように社会保険方式といいながら、税金が半分近く投入されている国はあまり聞かない。

 このように税の投入が多いと、給付と負担が不明確になって、社会保障費はドンドン膨らむ。その一部は業界の利益になって社会保障の効果が出にくくなる。一例をあげれば、特別養護老人ホームの内部留保が一施設当たり3億円(収入1年分)で、業界全体で2兆円と過大になっている。これは税投入が末端に行き届かずに、中間業者の懐を潤し、結果として社会保障費の増大につながっているといえる。


消費税の社会保障目的税化は、社会保障を保険方式で運営するという世界の流れにも逆行するもので、それを行っている国は寡聞にして聞かない(ドイツのように消費税引き上げの増収分の一部を、特定用途に使った国はある)。

歳入庁の創設は
財務省にとって都合が悪い?
 こうした理論から、もし保険料を徴収できるのであれば、消費税を社会保障目的税にするのではなく、保険料で賄うほうが望ましい。しかも、今の日本では世界で常識になっている税・保険料の徴収インフラができていない。このために、税・保険料の徴収漏れが予想されており、これは不公平感にもつながっている。

 税・保険料の徴収インフラとは国税庁と年金機構が一体化する歳入庁だ。歳入庁は国民にとっても一ヵ所で納税と保険料納付が済むし、行革の観点からも行政の効率化になる。海外では、米国、カナダ、アイルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイスランド、ノルウェーが、歳入庁で税と社会保険料の徴収の一元化を行っている。東ヨーロッパの国々でも傾向は同じで、歳入庁による徴収一元化は世界の潮流と言ってよい。

 歳入庁の創設は税と保険料の歳入増にもつながる。国税庁が把握している法人数と、年金機構(旧社保庁)が把握している法人数は80万件も違うことから、保険料の徴収漏れは10兆円程度と推計できる。また、歳入庁になると年金番号を利用できるが、一方、納税者番号制度がないため所得補足が不十分なこと、加えて消費税インボイスが導入されていないことから、さらに10兆円程度の税の徴収漏れがあると推計される。税・保険料で合計20兆円程度の増収だ。こうした仕組みを整備することは、社会保障を保険方式で行いつつ、同時に不公平も解消する王道だ。

 しかし、歳入庁の創設は財務省にとって都合が悪いらしい。国税庁は財務省の植民地になっており、国税権力を財務省が手放さない。筆者が安部政権で旧社保庁を解体し、歳入庁を創設しようとした時にも激しく抵抗した。

 今回の消費税増税でも民主党内で歳入庁創設の動きが出ると、財務省は自民党側からこれを潰そうとしている。その手口が凄い。消費税には逆進性があるが、それを給付制度(低所得層に税を還付する制度など)で補うのではなく、個別物品の税率軽減措置でやろうとしている。

 軽減措置は個別物品ごととの「租税特別措置」であり、どの物品に軽減税率を適用するかを決める際に、官僚の裁量が入るので官僚利権の確保にはもってこいだ。しかも軽減税率は消費税を応援してきた新聞協会へのご褒美にもなる。つまり、軽減税率は、歳入庁潰し、官僚利権作り、新聞へのご褒美という一石三鳥の手である。

地方分権度が高い国ほど
国としての消費税のウエイトが低い 

 いずれにしても、消費税を目的税にする国はなく、一般財源である。そこで、国が取るか地方が取るかという問題になる。地方分権が進んだ国では、国でなく地方の税源とみなせることも多い。これは、国と地方の税金について、国は応能税(各人の能力に応じて払う税)、地方は応益税(各人の便益に応じて払う税)という税理論にも合致する。

 もっとも現実には、各国の歴史的な経緯もあって、状況はさまざまなである。第1にヨーロッパの小国や中央集権が強いイギリス、フランスでは消費税は国に割り当てられている。EU各国の消費税標準税率は、キプロス15%が最低でデンマーク、スウェーデン25%が最高であり、他国はその間で、ドイツ19%、フランス19.6%、イタリア20%、イギリス20%などと、だいたい20%程度となっている。

 しかし、ヨーロッパの国は一国の規模が小さく、GDPでみても日本は欧州の国が7つ、8つくらい集まった規模だ。ヨーロッパの場合にはサイズが小さく日本からみれば地方単位であるので、EUを一つの国として、その中に地方があり、それぞれで消費税を導入しているという見方もできる。


第2に、地方分権の進んだ国では、オーストラリアのように国のみが消費税を課税し地方に税収を分与する方式、ドイツ、オーストリアのように国と地方が消費税を共同税として課税し、税収を国と地方で配分する方式、カナダのように国が消費税を課税し、その上に地方が課税する方式、アメリカのように国は消費税を課税せず、地方が消費税を課税する方式がある。これらをみると、世界をみても、分権度が高い国ほど、国としての消費税のウエイトが低いようだ。

 ちなみに、今の日本も上の方式に当てはめると、5%のうち4%は国税であるが、1%は地方税であるので、カナダ方式といえる。さらに4%分の3割程度を地方交付税として配分しているが、そんなまどろっこしいことをせずに、全額地方税化してしまえばいい。その代わりに、総務省官僚の裁量の余地が大きい地方交付税を減らすほうが、はるかに地方分権に即している。

消費税の地方税化の
問題点はいずれも克服可能

 そこで、冒頭の橋下大阪市長による問題提起がある。橋下市長は、本格的な地方分権・道州制を前提としている。 これに対して反論しようとすれば、今の中央集権を前提として、チマチマしたものしか反論できない。

 まず、地方に消費税を任せると、地方自治体の間で税率の引き下げ競争になるというものだ。それに、地方ごとにバラバラの税率になれば、混乱するというものもある。

 しかし、これは奇妙で。価格競争が困るという話だ。民間経済なら、値下げ競争は歓迎のはずであるだ。しかも、競争があるからといって価格はゼロになるわけでない。多少価格が違っても経済に大きな混乱はない。ということから、地方の税率についても、地方自治体が切磋琢磨して、自ずとだいたい似たような水準になるはずだ。

 筆者が竹中総務大臣補佐官として総務省にいた時、地方債金利を自由化した際に、総務省は自治体が破綻すると反対だった。しかし各自治体の金利差は、予想された範囲内で総務省の意見は間違っていた。

 次は、消費税を地方に移し地方交付税をなくすと、地方自治体間の格差が広がるというものもある。これに対しては地方財政調整制度という答えがある。これも総務省にいたときの話だが、望ましい財政調整制度のために客観基準による新型交付税を作った。それは、総務省の権益を損なうものとして総務省は反対だった。新型交付税でなくても、地方の間で財政調整制度を考えることもできる。今の交付税より規模が小さく、官僚の裁量のない財政調整制度になるだけだ。

 また、地方ごとの消費税にすると「国境調整措置」(輸出入時と同じ扱い)が必要になるという技術論もある。カナダは州ごとに税率が違うが、国境調整措置があるのだろうか。日本は1%を地方消費税として地方に配っているが、この場合でも国境調整措置はなく、商業統計などにより計算で配分されている。そのような計算措置で十分なのに、わざわざ国境調整措置を持ち出すのは、よほど消費税の地方税化が嫌なのだろう。

 橋下市長の直球をきちんと受け止められるのか。道州制のような本格的な地方分権をしようとすれば、三ゲン(権限、人間、財源)の地方移管が必要になり、人間の面では、おおよそ20万人の国家公務員が地方公務員へ、財源の面では20兆円の税源移譲が必要になる。


 中央省庁でいえば、国交省、農水省、経産省は道州へ移管される。厚労省も多くの業務は道州になる。その業務を地方で行うために、国から20兆円の税源移譲になるが、消費税を除いて、それを達成するのは不可能だ。結局、消費税の地方税化を否定したい人は、奇妙な屁理屈で、今の中央集権体制をかばうしかないのである。



→平成20年5月20日に自由民主党国家戦略本部政治体制改革プロジェクトチームがとりまとめた「政治体制改革プロジェクト報告(案)~政治制度改革・財政改革・統治機構改革一体の見直し~」は、「「国税」は、国税の原則である「応能税、人税、累進的課税」に基づくもので構成する。消費税は地方の基幹的税として州政府に税源移譲する。」としていました。この通りやっていれば、今ごろ、自民・維新共闘ができていたでしょうね。しかし・・・