物価展望レポートを読む | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

物価展望レポートを読む

秘書です。

白川日銀総裁は、物価上昇率1%は、消費増税の2014年度にも達成できるとの考えを、昨日の記者会見で示しました。


物価上昇率1%展望できる時期は14年度含む=白川日銀総裁
2012年 04月 27日 20:07 JST
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPTYE83Q07F20120427

[東京 27日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は27日、金融政策決定会合後の会見で、資産買い入れ基金の増額による追加金融緩和を決めた理由について、経済・物価に明るい動きが出ている中で日本経済が持続的な成長に復帰することを確実にするため、と説明した。

その上で今後の政策運営について「毎月、金融緩和をやっていくわけではない」としながら、強力な金融緩和を推進し、デフレ脱却に向けて適切に政策運営していくと語った。日銀が事実上のインフレ目標としている消費者物価の前年比上昇率1%に達する時期について「2014年度も含む」としたが、1%が見通せるまで強力な金融緩和を推進していくとする日銀の時間軸に対する考え方は「まったく変わっていない」と強調した。

<1%展望できないため緩和したわけでない>

日銀は今回公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、前回1月の中間評価と比べて景気・物価いずれも上方修正したにもかかわらず追加緩和に踏み切った。白川総裁は「景気・物価情勢が改善しているなか緩和強化は多くないが、過去になかったわけではない」と指摘。「経済・物価の面で起きているよいモメンタムを大事にし」、「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復する蓋然性をさらに確実にしたい」ため、追加緩和に踏み切ったと説明した。

物価については「大きな流れが重要。2009年夏に消費者物価指数が前年比でマイナス2.4%と近年の底を付けて以来徐々に縮小し本日発表された3月の消費者物価指数はプラス0.2%だった。購入頻度の高い、財・サービスは徐々に上がってきている」と指摘した。

日銀が現在進めている資産買入基金による「包括緩和政策」を打ち出した2010年10月以降、基金の規模を「1年強で35兆円、長期国債で25兆円と大変な増額を行ってきている」ことを受け、「経済に前向きなモメンタムが少しずつ働き始めている」との見方を示した。

今後は景気の「上下両方向のリスクに十分注意を払い、景気・物価の展開や金融政策の効果を冷静にじっくり見極めたい」とした。日銀は2月に「物価安定の目途」の形で物価上昇率1%が展望できるまで金融緩和を続ける姿勢を明確にしているが、総裁は、展望リポートで13年度まで1%が展望できないため緩和したわけでない、と述べた

<「財政ファイナンス行わない、信用してほしい」>

日銀は包括緩和政策を打ち出した2010年10月、企業向け貸出の多くが2年以内との根拠で、買い入れ金融資産の年限を2年以内としていた。今回年限を3年に延長した点について、企業の資金調達を考えると合理的判断、と述べた。

米国の金融債務は家計向けの30年近い不動産担保貸付が多く、社債も発行期限が平均13年と長いため「長い金利への働きかけが有効」と指摘。「日本では期間の長い調達は多くないため従来から3年以下を意識し政策を行ってきた。それぞれの国の置かれた金融構造に即してもっとも有効な金融政策手段が必要」と強調した。

度重なる追加緩和で日銀の国債買い入れが増額を続けているが、総裁は「買い入れは金融政策の目的実現のため、財政ファイナンスが目的でない」、「財政ファイナンスを行わないことを信用してほしい」と強調。その趣旨を明らかにするために、通貨供給のための国債買い入れとは別の「基金という分別管理をし、国民や市場参加者が監視できるようにしている」と説明した。

<長期国債残高、今年度末までに銀行券上回る見通し>

日銀は、通貨供給のため買い入れる長期国債の残高をお札の発行額以下に抑える自主規定を定めているが、総裁は「今年末か今年度末には長期国債保有額が銀行券発行残高を上回る」との見通しを明らかにした。

一方、「国債の買い入れが大量にのぼると、日銀の意思とかかわらず、『財政ファイナンスでないか』との見方が出ることは一般論としてはあり得る」とし、「そうした事態を避けるためにも財政健全化に向けた取り組みをしっかりと進めてほしい」と述べた。

<副作用あるから緩和すべきでないという訳でない>

総裁は3月以降の2度の訪米の際に講演で金融政策の副作用について強調しているが、「世の中には効果だけあってコストがない政策・手段はない。副作用あるから金融緩和するべきでないというわけでなく、副作用が小さくなるよう構造改革の努力をしてほしい」との趣旨だと説明した。

今後は、国債買い入れのペースなど最適なスピードを意識し、経済・物価の展開や金融政策の効果を冷静にじっくり見極め、政策運営する姿勢を示した。また1%の物価上昇を達成した後の政策について語るのは時期尚早と述べた。

日本経済の現状については、横ばい圏内だが持ち直しに向かう動きが明確になりつつある、との見方を示した。展望リポートの物価見通しには、「消費税率の引き上げは見通しに織り込んでいない」と述べた。

中期的な物価をみるうえで、中国の賃金上昇や新興国の経済発展に伴う資源価格上昇の影響が一つの注目点で、同日の会合で指摘があったことを明らかにした。

(ロイターニュース 伊藤純夫、竹本能文:編集 内田慎一)

*情報をさらに更新して再送します。

→日銀はどのように物価を展望しているのか?

2012年4月27日
日本銀行
経済・物価情勢の展望(2012 年4月)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1204a.pdf

2011~2013年度の政策委員の大勢の見通し(政策委員見通しの中央値)

        実質GDP    消費者物価指数
2011年度   -0.2      0.0
2012年度   +2.3     +0.3
2013年度   +1.7     +0.7
 


2012 年度全体をみると、比較的高い成長率となることが予想される。2013 年度については、復興需
要による景気押し上げ効果が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012 年度対比では幾分鈍化するものの、海外経済が高めの成長を続けるもとで、潜在成長率※をはっきりと上回る成長が続くと考えられる.

※見通し期間中の潜在成長率を、生産関数アプローチに基づく一定の手法で推計すると、
「0%台半ば」と計算される。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていく
データにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。

→2012年度に+2.3%の成長をしても消費者物価上昇率は0近傍。そろそろ、潜在成長率は2%台だということを認めたらどうですか?小泉政権期も実質2%成長が何年か続いてもデフレだったじゃないですか。潜在成長率0%台の国がどうして大増税に耐えられるのか?

※今回の見通しにおいては、消費税率引き上げとその影響は織り込んでいない。わが国や各国の過去の経験では、消費税率引き上げ前における駆け込み需要とその後の反動が相応にみられた。

※震災復興関連の予算をみると、平成23 年度補正予算と平成24 年度予算の東日本大震
災関係経費をあわせて、「東日本大震災からの復興の基本方針」で示された、当初5年
間で少なくとも19 兆円程度、という事業規模のほとんどが、すでに手当てされている。
これは、日本全体のGDPの約4%、被災4県(岩手県、宮城県、福島県および茨城県)
のGDPの6割強に達する大規模なものである。

→2012年度は復興需要、2013年度は駆け込み需要が見込まれる。2014年度はきっと、駆け込み需要の反動と復興需要の減退で、消費税率アップを除いて物価上昇率1%達成は困難になるのでは?

消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。

→「1%に遠からず達成する可能性が高い」時期に、2014年度が含まれているというのは白川総裁の会見でしたね。

上記のとおり、物価情勢は、「中長期的な物価安定の目途」に向かって改善しているが、その実現にはなお時間がかかるとみられる。この点について、実体経済の強さが物価上昇圧力を生み出すというメカニズムに即して整理すると、循環的な要因と構造的な要因の双方が作用していると考えられる。循環的な要因としては、リーマン・ショックによる景気の落ち込みがきわめて大きかったため、マクロ的な需給バランスは現在なお改善途上にあることが挙げられる。このため、先行き景気が緩やかな回復をたど
るもとでも、マクロ的な需給バランスが概ねバランスした状態に達し、マクロの需給面から物価を押し上げる力がある程度明確になってくるのは、見通し期間の終わり頃になると予想される。また、構造的な要因としては、経済成長率が趨勢的に低下してきたことが挙げられる。すなわち、他国に例をみない急速な高齢化に対して、成長力を強化する取り組みや社会保障制度の持続可能性を高める見直しが十分に進まなかったことで、企業や家計の成長期待が弱まり、支出行動が慎重化した。こうした状況が、物価の下落圧力をもたらす要因として作用してきたと考えられる

→つまり、1%に達成してもそのままデフレ脱却にいくのは難しいですよと言っている。その根幹に、デフレが貨幣的現象であることを認めないことがある。

・・・物価に固有の要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。消費者物価の前年比上昇率が1%に達するにはなお時間を要すると判断されるが、そうした環境のもとで、企業や家計が物価はなかなか上昇しないという予想を強めた場合、実際の物価にも、賃金とともに下方圧力がかかる可能性がある。他方、成長力強化への取り組みが成功し、差別化された新たな財・サービスが広く創出されていけば、潜在需要が顕在化するかたちで価格が上昇し、中長期的な予想物価上昇率が高まることも考えられる。こうしたシナリオにおいては、経済成長率が上振れるとともに、物価は経済成長率の上振れから予想される以上に上振れる可能性がある。

消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。こうした経済・物価見通しを総合的に評価すると、やや長い目でみれば、日本経済は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えられる。


「マネタリー・アプローチによる国際収支・為替レートの実証分析―わが国のケースを中心に―」白川方明氏(1978年4月、1979年5月加筆修正) 
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/shiryou/kks3-2.pdf

→昨日、浜田宏一先生が、ほめていた白川論文がこれですね。先駆的な論文だったと。なんでこの先駆的な論文の実証結果に基づいて、サイエンスとしての金融政策をやらないのでしょうか?


日本銀行研究所『金融研究』第12巻第4号(平成5年12月)
『金融政策ルールの定式化と分析-日本への応用』
ベネット・マッカラム(カーネギー・メロン大学教授)

http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/1993/kk12-4-1.pdf


『嶋中雄二の月例景気報告』(2012年3月28日)
http://www.sc.mufg.jp/inv_info/business_cycle/sn_report/pdf/snm20120328.pdf