「物価の安定」のための金融政策の副作用と限界?-3.24日銀総裁講演を精読しましょう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「物価の安定」のための金融政策の副作用と限界?-3.24日銀総裁講演を精読しましょう

秘書です。

3月24日の日銀総裁の講演を読むと、まるで、物価の安定はよくないことのように感じます。目的は、物価の安定だけではだめで日銀が総合判断するから、ということなのでしょうが。


【講演】セントラル・バンキング ―危機前、危機の渦中、危機後―
Federal Reserve Board と International Journal of Central Banking による共催コンファレンスでの講演の邦訳
日本銀行総裁 白川 方明
2012年3月24日
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko120326a.htm/

(白川総裁講演)明らかになったことは、バブル崩壊後に積極的な金融政策を実行しても経済活動の長期間にわたる低迷は回避できなかったということである

→それは日本だけのことでしょう?欧米がリーマンショック後もデフレではないことはどう説明します?米国は「低迷」を回避しそうですが。

(白川総裁講演)一連の経験を経て明らかになったのは、二つの目的(※金融政策は物価安定、規制・監督は金融的不均衡の是正)が独立ではないということである。物価が安定しマクロ経済環境が安定すると、経済主体のリスク認識は徐々に緩み、そのリスクテイク姿勢も変化していく。また、物価安定の下で低金利の持続予想が強まると、金融機関は「利回り追求」の行動を強め、レバレッジや、資産・負債の期間ミスマッチ、通貨のミスマッチを拡大させる。こうした不均衡はある閾値を超えて拡大すると、金融システムを不安定化させ、ひいては実体経済や物価を不安定にすることになる

(白川総裁講演)第1の経路は、そうしたプット・オプション型の金融政策が金融機関の過度のリスクテイクを助長することである。第2の経路は、物価安定のみに焦点を当てた政策スタンスによって、マクロ経済環境が安定化すると、様々な経済主体の支出増加やリスクテイクを更に後押ししていくことである。金融政策自身が高成長と低インフレをもたらしているにもかかわらず、見た目には、ニューエコノミーの到来と識別困難な状況になる。この点を十分意識せずに、中央銀行が緩和的な政策を継続すると、物価安定がみかけ上維持されたまま、民間部門の支出増加や金融的不均衡は増幅され、その分、バブル崩壊後のショックも大きくなる。「物価安定のパラドックス」とでも言うべき現象である。

→日銀は「物価の安定」のためにあるのでは?違うみたいですね。

(白川総裁講演)私は経済・金融の安定確保という点で中央銀行が過去四半世紀に果たした最も大きな貢献は何かと問われれば、決済システム改善に向けた弛まぬ努力であったと思っている。

(白川総裁講演)バブル崩壊後の積極的な金融緩和政策はもちろん必要であるが、副作用や限界についても意識する必要がある

→金融緩和の副作用や限界!副作用がこわいといって薬をのまない、のみおくれる、直ってないのにやめてしまう!

(白川総裁講演)金融的不均衡に関する状況把握など、マクロプルーデンスの視点を金融政策運営に取り入れようと試みているのは、日本銀行だけではなかろう。しかし、今なお残る課題は、そうした望ましい政策の枠組みを、経済の安定と繁栄に不可欠な中央銀行の独立性の政治的基盤に組み入れていくことである。特定の物価上昇率水準の達成について中央銀行に説明責任を負わせることは、比較的分かりやすいものである。この意味で、特定の物価上昇率水準に注目が集まることは、重要な経済政策の一部が専門家組織に委ねられることの代償といえる。これに対して、マクロプルーデンスの視点を金融政策運営に生かしていくという考え方は一般にはかなり分かりにくく――サイエンスというよりアートの側面が強く――、そうした政策運営のスタイルが民主主義社会においてどの程度受け入れられていくかが今後試されることになるだろう。

→サイエンスではなくアートということは、物的証拠によって論証することはできない、客観条件はない、最終的には勘の世界だということですね。そして、アートは政治家や庶民には分からないだろう、と。

→2000年、2006年、2007年の早すぎる金融政策引き締めという「アート」は失敗だったじゃないですか?アートだからいいのでしょうか?


(白川総裁講演)正しい政策決定とそれを支えるリサーチ機能は、中央銀行の独立性の実質的な基盤である。今回の危機を通じて明らかになったのは、伝統的なマクロ経済のレンズだけに頼って経済をみていると、見落とすものが多いということである。中央銀行にとって必要なのは、そうした見落としを回避し、集団思考の弊害から脱する努力をしていくことである。この点では、マクロ経済だけでなく、金融市場や金融機関に関わる情報がバランス良くインプットされ政策決定に活かされていく、組織文化を育てていくことが不可欠である。

→マクロ経済の指標ではなく、金融市場のアンケート調査もいれて考えるということですね。しかしアンケート調査の将来予測には、日銀の予測に収れんするバイアスがあるでしょう。日銀の数字に収れんするアンケート調査をやって、ほら、市場関係者も日銀と同じだ、といっても、意味がありません。