小泉政権下の日本21世紀ビジョン経済財政展望ワーキンググループ報告書を学習しよう! | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

小泉政権下の日本21世紀ビジョン経済財政展望ワーキンググループ報告書を学習しよう!

秘書です。

2000年夏の日銀の誤ったゼロ金利解除が長期デフレを決定的にしたのですが、そのときの蔵相は保守本流の宮沢喜一さん。保守本流の宮沢喜一さんですら、このときの金融政策転換に反対していた。その宮沢蔵相の反対(中川秀直官房長官も、安倍官房副長官も、森内閣の主要関係者は全員反対)にもかかわらず、日銀は政府の意向を無視して政策転換をした。そして経済は悪くなった。でも、この政策転換の失敗の責任は日銀はとっていない。

いまや、全ての責任は2001―2006年の小泉政権の新自由主義が原因とされ、日銀の2000年、2006年、2007年の政策転換の失敗について免罪とされている。

宮沢さんはもう他界されました。当時のことを聴くことができないのは残念ですが、そのときに宮沢さんの薫陶を受けた人がいまや自民党の実力者クラスになっています。

先に日銀法を改正したときに、自民党が日銀に独立性を与えたのは日銀トップに外部から総裁がくることを想定していたのであり、3代続けて日銀プロパーが就任するのは想定外だった、と保守本流の系譜の政治家がいっているのを聴いたことがあります。

宮沢喜一さんですら2000年の日銀の金融政策転換に反対していたということが、自民党の日銀法改正案の合意形成の一つの底流です。


<日銀審議委員>就任見送りの河野氏“反論”
毎日新聞 4月7日(土)1時10分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120407-00000006-mai-bus_all
 ねじれ国会の下、参院の人事案不同意で日銀審議委員就任が見送られたBNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎氏が6日、「日銀審議委員人事を巡って」と題するリポートを公表。野党から「増税に積極的で金融緩和に消極的」とされたことについて「日本の喫緊の課題は社会保障制度改革と財政健全化。増税はやむを得ず、問題は金融緩和では解決できない」と“反論”した。

 河野氏は政治家の役割について「厳しい(財政の)現実を有権者に説明し、解決のための負担の受け入れを説得すること」と指摘。「そうした役割を担う人が現実離れした金融政策を提示して『国民の負担が軽減される』といった甘言を振りまいていないか」と疑問を呈し、「大規模な金融緩和で高成長が達成可能。増税は不要」との根拠のない論理が政界で横行していることを批判した。

 日銀に対して金融緩和拡大を求める政治的圧力が強まっていることについては 「(国の借金の尻ぬぐいを目的とした中央銀行の)国債引き受けの誘惑から社会を守るための『(中銀の)政治からの独立』が骨抜きにされていくのでは」 と懸念を示した。【田畑悦郎】


→根拠のない論理?上記の記事の意見には、下記の日本21世紀ビジョン経済展望ワーキンググループの2004年11月1日の河野龍太郎委員提出資料(添付資料の2-3p)で反論が可能でしょう。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/special/vision/view/04/item2.pdf

2望ましいインフレ率

① ゼロインフレは長期的目標としても不適切:80 年代まではゼロインフレが中央銀
行の目標だった。しかし、90 年代の日本からの教訓で、中央銀行はゼロインフレ
を目標とすべきではなく、プラスのインフレ率を目標とすべきというのが、世界の
中央銀行の認識に(ゼロインフレもデフレ対応と同様の政策が必要)。ゼロインフ
レに近づくと、実質賃金の引下げが困難となり、企業は雇用を抑制するため、広範
囲な数量調整が生じる(相対価格の調整が困難となるため、労働移動など資源配分
への悪影響も大)。また、名目金利にゼロ制約が存在するため、実質金利を引下げ
ることも困難となる。

② 望ましい中長期的なインフレ率の目標:2~3%程度の安定したプラスのCPI インフ
レ率。1%程度のインフレが妥当との意見もあるが、CPI 上昇率には0.5~1%程度
のプラスの測定誤差が存在する。また、デフレリスクと隣り合わせとなるスモール
プラスのインフレ率もリスクを抱える。「測定誤差の大きさを加味した上での本来
のゼロインフレ(1%)」に「デフレのリスクを考慮した糊代(1%程度)」を加算す
る必要があり、望ましいインフレ率が2%を大きく下回るということはあり得ない。

3量的緩和

① グラジュアリズムとアグレッシブな政策:本来、不確実性下においては、グラジュ
アリズムが望ましいが、コストの大きなデフレを回避するためには(あるいはデフ
レから脱却するためには)、アグレッシブな政策対応が容認されうる。

② 量的緩和の解除:「量的緩和の解除が遅れることのコスト(インフレリスク)」と「量
的緩和の解除が早すぎることのコスト(デフレリスク)」の比較考量で決定すべき。
CPI の測定誤差を考慮すると、1%程度の上昇が展望できる状況になってからの解
除が妥当(ただし、実績値が1%となるのを待つ必要はない)。ゼロ金利による市
場規律の問題は大きいが、ミクロ政策で対応すべき。

4インフレ・ターゲット

① 金融政策の透明性とアカウンタビリティを高める上で、望ましい金融政策のスタイ
ル。主要先進国で導入していないのは、現在、日米のみ(ECB は事実上のインフレ・
ターゲット)。目標とするインフレ率を公表していない点を除くと、米国もインフ
レ・ターゲットにかなり近い金融政策が実施されているともいえる。外部からのプ
レッシャーの盾になるという点(独立性の補強)で、導入は望ましい。

② ルールではなく裁量:インフレ・ターゲットが導入されると、政策決定が機械的に
なる、と懸念する向きもあるが、厳格なルールとして運営している国はない。将来
のインフレ率を安定化させるインフレ・フォーキャスティング・ターゲットであり、
ルールというより、「限定的な裁量」(バーナンキ、ミシュキン)と捉えるべき。将
来のインフレ率の安定には、成長率の安定が不可欠であるため、インフレ率の安定
のために成長の安定性が犠牲になるという懸念も不要(インフレ・ターゲット自体
がフォワード・ルッキングな政策)。

③ インフレ・ターゲットはインフレ率加速の回避になるだけでなく、デフレ回避、デ
フレ脱却にも有用(ただし、デフレに一度陥ると、目標達成のために、非伝統的な
手段が必要となる)。2003 年の日本では、政府の円売介入と同時に日銀が当座預金
残高を引上げ事実上の部分非不胎化が行われる形で、政策当局による非伝統的な金
融政策が実施された(これが金融市場のレジーム・チェンジにつながり、資産価格
の反転をもたらした)。

5財政再建と金融政策

① 短期的視点:財政再建が短期的に景気抑制的に作用するという観点からすれば、
「緊縮財政と緩和的な金融政策のポリシーミックス」が当面の選択肢。米欧の財政
再建においては「緊縮財政+金融緩和」が採用され、その結果もたらされた自国通
貨の減価が金利低下と共に民需を刺激し、公的需要の落ち込みを相殺(ディマン
ド・スイッチング政策)。自国通貨の減価が生じるなら、日本もそれを利用すべき。

② 長期的視点:財政再建の道筋が見えてくる局面では、1)民需による高い成長(循環
的要因と潜在成長率の上昇)、2)低インフレ、3)財政赤字削減によるクラウディン
グ・インの組み合わせが生じている可能性がある。株式相場はそれを先取りする形
で上昇する可能性があり、それも景気拡大や税収増につながり、財政再建に寄与す
る(自己実現的な予想、あるいは「良い均衡」へのシフト)。ただし、「構造変化に
よる高成長と低インフレ」というユーフォリアが広がると、資産バブルにつながる
リスクがあり、低金利政策継続もそれを加速させる可能性がある(80 年代後半の
日本や90 年代後半の米国)。資産市場への対応は難しいが、インフレ・ターゲット
などフォワードルッキングな政策の導入が問題の軽減につながるではないか(イン
フレ率の実績値が上昇していなくても、将来のインフレ率上昇を回避する形で、金
融引き締めが可能となる)。


→日本21世紀ビジョンのこのWGでは、「労働生産性の上昇により、実質成長率は1%台半ばの伸びを維持し、高い生活水準を享受し続けることが可能となる」としていました。これを前提に、名目成長率については、2006年~2012年に3%台半ば、2013年=2020年には4%台、2021年から2030年には3%台半ばから4%程度とみていたはず。

つまり日本21世紀ビジョンは名目4%成長は可能であるとの前提にたっていた。いまは4%成長は「根拠のない論理」の一環なのでしょうか?


経済財政展望ワーキング・グループ報告書
-活力ある安定社会の実現に向けて-
平成17 年4月
経済財政展望ワーキング・グループ

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2005/0419/item11_1.pdf
(上記報告書の4ページと34ページ参照)


日本経済中長期展望モデル
(日本21 世紀ビジョン版)
資 料 集

http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/mil21v.pdf