もしも40兆円規模の量的緩和をすれば「風邪」だけでなく「慢性疾患」も治療できるのでは? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

もしも40兆円規模の量的緩和をすれば「風邪」だけでなく「慢性疾患」も治療できるのでは?

秘書です。

日銀短観に関連して下記の記事では、

為替相場や景気循環といった「風邪」への対症療法
デフレや国内生産による競争力低下など、日本経済の構造的問題といえる「慢性疾患」

を分けて、金融政策を「風邪」への対処療法と位置付けているようですが、実は、デフレと国内生産による競争力低下(為替レート)などの「慢性疾患」は、まさに、貨幣供給量が原因なのではないでしょうか。

10兆円程度の円の刷り増しで円ドルレートが5円動いたとするならば、40兆円刷り増しすれば20円為替が動くということでしょう。そこまでやれば「慢性疾患」に効く。

結局、為替レートが5円動いた程度で金融政策が終わったことが「慢性疾患」の原因なのでは?

つまり量的緩和政策は小さければ「風邪」薬、大きければ「慢性疾患」に効くが、いまのところ日銀は「慢性疾患」に対応するつもりはない、ということでは?


焦点:緩和効果薄い3月短観、必要なのは「慢性疾患」の治療
2012年 04月 2日 14:39 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE83103Y20120402?sp=true

[東京 2日 ロイター] 3月日銀短観で製造業の景況感がさえない内容となった直接的な背景は、エネルギー価格上昇による採算悪化のほか、為替相場が足元より円高方向に戻るとの企業の見通しにある2月の日銀追加緩和後の円安・株高など金融面での改善は短観を見る限り企業にとって効果が薄かったともいえ、追加的な金融緩和への圧力は高まりそうだ。

ただ専門家は、為替相場や景気循環といった「風邪」への対症療法よりも、デフレや国内生産による競争力低下など、日本経済の構造的問題といえる「慢性疾患」を治療しない限り、設備投資や収益計画の本格的な回復は見込みがたいと指摘している


<円安効果も受け止められず>

企業の慎重さを印象づけた今回の日銀短観により、金融緩和強化の方向が強まったとの見方が少なくない。第一生命経済研究所・主席エコノミスト・熊野英生氏は「日銀にとってショックだったと思われるのは前回2月14日のサプライズな追加緩和の効果が企業に受け止められなかったことだろう」と指摘。あれだけの円安や株高を演出しておきながら、企業の景況感が改善しなかった。

先行きの景況感も、製造業で小幅改善、非製造業では改善しない見通しだ。伊藤忠商事の主任エコノミスト・丸山義正氏は「金融市場の好転を受けて、先行きの景況感は明確に改善すると予想していたため、正直驚かされた」という。大企業製造業の想定為替レートが12年度について78円台と現在の為替相場との対比では大幅な円高になっていることが象徴するように、金融市場が示す事業環境の好転を業況判断へ反映させることを、製造業は時期尚早と判断したと同氏はみている。2月14日の日銀追加緩和を契機として形成された円安相場には持続性がないとみているとも言えそうだ。

日銀にとっては、海外経済動向や経済指標を見極めるといった従来のような待ちの姿勢でいいのか、より背中を押す必要が早期にあるのではないか、といった議論につながる可能性があり、「金融政策は混迷度を深めている」(熊野氏)とみている。モルガンスタンレーMUFG証券・チーフエコノミスト・佐藤健裕氏も「今回の短観だけで日銀が追加緩和の材料にするとは思わないが、日本企業にとってはいまだに踊り場を脱却できていないし、デフレ脱却のペースも鈍いことが判明したともいえる。追加緩和の方向性が高まることになるだろう」と指摘する。

<採算悪化と競争力低下が要因>

このところの外部環境は改善の兆しが色濃い。欧州危機が一服し、米経済の回復も鮮明となり、日本では円安・株高局面となっている。にもかかわらず、景況感が回復しなかった背景を探ると、原油高などによる仕入れ価格の上昇で採算が悪化している素材産業や、円高予想といった直接的な原因が探し出せる。しかし、こうした要因には近い過去にも既視感がある。逆に言えば、もはや円高やエネルギー高といった循環的な問題への対症療法ではままならず、「風邪を治すより、持病たる糖尿病への対処が急がれる」(熊野氏)ことを物語るとも言えそうだ。

その一つがデフレ脱却だ。今回の景況感悪化の大きな要因は、エネルギー価格の高騰による採算悪化とみられるが、これまでの日本経済を振り返ると、デフレという構造問題を抱えているために、コスト上昇を価格転嫁できず、企業の採算悪化につながるという事態が繰り返されている。交易条件悪化が景気後退を招いた07年の二の舞となる可能性がある。デフレからの脱却が見通せるなら、変動するコストに企業は柔軟な価格設定が可能だ。

もう一つの構造要因は、日本企業の競争力低下の可能性だ。業種別にみると、機械類の景況感がさえない。

丸山氏は「設備投資関連セクターの落ち込みは、競争力低下が主因である可能性が高い。日本の設備投資セクターは高い競争力を有するが故に、他業種に比べ海外への生産移転が進んでこなかった。しかし、昨年の大幅な円高と、新興国企業の技術面でのキャッチアップにより、足元で競争力を失いつつある可能性がある」と指摘している。

大企業製造業の設備投資計画は過去の平均と比較すると12年度当初計画は決して悪くないが、11年度下期が大幅に下方修正されており、その分の先送りが含まれているとみられ、みかけほど強くなさそうだ。世界の設備投資が回復していることは機械受注統計の外需が1兆円を超えたことからもうかがえるが、日本企業の投資マインドはいまだ慎重なスタンスから抜け出ていない。研究開発投資を含め旺盛な設備投資がなければ、競争力の向上もままらない。

短観の結果がさえなかったことは、2月の緩和効果が足りなかったとみるよりも、金融政策と行政が構造問題に真剣に取り組むなど、長期的な対応が必要となることを物語っているといえそうだ。

(ロイター日本語ニュース 中川泉 ;編集 石田仁志)