さらなる金融緩和でCPI1%という目標に近づけていく努力が重要(武藤敏郎元日銀副総裁) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

さらなる金融緩和でCPI1%という目標に近づけていく努力が重要(武藤敏郎元日銀副総裁)

秘書です。
2008年の日銀総裁人事。
民主党のみなさん、どう考えても、対応を間違えましたね。
みなさんが拒否権を発動した方の中で総裁になっていれば、増税の合意形成の環境づくり(=デフレ脱却)はもっと早くできていたかもしれない人がいるかもしれませんね。
来年の日銀総裁人事は、増税の環境づくりの観点からも、とても大事ですね。

そして、今年の日銀審議委員人事は、新体制に向けた第一歩。とても重要です。


特集:景気回復下の追加緩和は「合理的」=武藤・大和総研理事長
2012年 03月 30日 23:58 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE82T00S20120330?sp=true
[東京 30日 ロイター] 大和総研の武藤敏郎理事長(前日銀副総裁・元財務次官)は30日、ロイターとのインタビューに応じ、日銀による大規模な国債買い入れについて、現行の「量的緩和」を達成するための手段として実施しており、「財政ファイナンスと決めつけることはできない」と語った。

日銀が定める国債買い入れの「銀行券ルール」については、金融緩和という政策目的を遂行するため、「一時的に国債保有額が銀行券残高を上回っても良い」とし、同ルールの厳格運用は本末転倒とも指摘。仮に国債相場が暴落するような事態が発生した場合には、金融システムの混乱を回避するため、財政ファイナンスと受けとめられても日銀は果敢に対応すべき、との見解を示した。

今後の金融政策運営については、日銀が2月に「中長期的な物価安定の目途」を導入し、消費者物価(CPI)の前年比上昇率で1%を目指すことを明確にしたことを受け、日銀はさらなる金融緩和でCPIを1%に近づける努力をすべきと発言。需給ギャップが大きい現状では、緩やかな景気回復下での追加緩和は「合理的」と述べ、現行の基金による資産買い入れを中心とした「量的緩和政策」は、金融市場への影響を通じて実体経済にも効果を及ぼし得るとの見方を示した。

インタビューの概要は以下の通り。

──日銀は年間約40兆円という大規模な国債買い入れを行っているが、財政ファイナンスと考えられるか。

「巨額な国債買い入れであり、財政ファイナンスとの見方も出てくる。しかし、財政ファイナンスと決めつけることはできない。なぜならば、現在は国債を市場から買い上げており、直接引き受けているわけではない。さらに、日銀が量的緩和政策という非伝統的な領域に踏み込んでいる以上、バランスシートを使った国債の買い増しは、量的緩和を達成するための手段である。金融緩和という政策について、日銀のコントロールの下で着実に実施していくことが担保されていれば、財政ファイナンスとはいえない」

──財政ファイナンスとの懸念が高まった場合のリスクをどうみるか。

「何らかの理由で国債相場が暴落した時に、日銀が買い支えをすれば、財政ファイナンスとの批判が出てくる可能性がある。しかし、財政ファイナンスになるからと放置すれば、金融システムが不安定になり、金融株の下落を起点に株価にも悪影響が出て、無秩序な金融システム不安が発生する可能性がある。こうした事態は、政策当局として絶対に避けなければならず、日銀としても、そうしたリスクが高まった場合には果敢な対応が必要だ」

「一方、金融緩和を続け、景気が回復し、物価が1%に向かって上昇するような局面になれば、金融緩和からの出口政策も必要になる。そのタイミングが遅れれば、インフレ懸念が現実化するリスクが高まる。その時に出口政策を適切に行わず、国債を買い続けると、財政ファイナンスとの指摘を受けるだろう。当面は出口政策が具体的な課題になるような状況ではないが、政策当局としては、出口政策を常に念頭に置いておかなければならない」

──資産買入基金での国債購入増で、実質的に銀行券ルールを逸脱する可能性がある。

「いわゆる銀行券ルールは、長期的な考え方としては分かるが、金融緩和という政策目的を遂行するために必要であれば、一時的に国債保有額が銀行券残高を上回っても良いと思う。銀行券ルールをあまり厳格に考えることは本末転倒だ」

──野田政権が進める消費増税がとん挫した場合の日本経済、市場への影響は。

「消費増税法案が成立するか、客観的な予測は困難だ。個人的には成立してほしいし、政治家が最後は賢明な判断をするものと期待している。仮に成立しないとなれば、格付け会社が日本国債の格付けを引き下げることはほぼ間違いない。その場合は2─3ノッチの格下げの可能性がある。ただ、政府が消費増税に引き続き努力する姿勢を示し、歳出削減などで財政規律を守る政策努力を続ければ、日本の銀行が国債売りに転じることはないだろう。このため、格下げが直ちに日本経済に無秩序な混乱をもたらす可能性は高くない」

──今後の日銀の金融政策運営をどうみるか。

「2月に日銀が導入した『中長期的な物価安定の目途』では、当面は消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率で1%を目指すとし、金融政策の努力と『目途』を結びつけた。これは、今後の物価動向によって、日銀はさらなる金融緩和の努力をしなければならないということだ。先行きのCPIは、2014年度も1%に届くかどうかわからない。出口政策への転換は2014年度中も難しいかも知れない長期のデフレ状態が展望され、『目途』と金融政策を結びつけた以上、今後も日銀が追加緩和に動く可能性は十分にある」

──足元の経済環境には明るさもみられている。

足元の景気がある程度回復しているといっても、マイルドなもの。その程度の成長を前提するのであれば、GDPギャップが埋まるには相当の時間がかかる。そうであれば、日銀が金融緩和をさらに実施していくことは合理的だ。当面の日本経済は、低い物価上昇率にとどまると見込まれており、さらなる金融緩和でCPI1%という目標に近づけていく努力が重要

「具体的なツールとしては、現在の量的緩和政策において、リスク性資産をより多く買う、国債買い入れにおける短期と長期のバランスをどうするか、などが考えられる。(国債買い入れの)実効性を上げるには、買い入れる国債の残存期間を延ばして(残高を)ネットで増やす必要がある。そうしたよりきめ細かな対応にならざるを得ないが、市場はそれを見て、中央銀行の意志と本気度を解釈する。こうしたことが予想以上に効果を上げることは、十分に考えられる

──量的緩和政策の実体経済への効果をどうみているか。

「実体経済、特に企業の投資行動への効果は明確になっていない。しかし、とりあえずは、金融市場に与える影響、市場の安心感を確保することが、実体経済にもいい影響を及ぼす。これには、もう一つのトランスミッション・メカニズムが必要だが、2月の日銀の決定を受け、いわゆる円安・株高という金融市場の状況が輸出産業に明るさをもたらしている。株高という面では、米国ほどではないが、資産効果があり、消費に好影響を与える可能性がある