日本郵政の問題は、民営化が原因なのでしょうか?民営化を止めると直るのですか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

日本郵政の問題は、民営化が原因なのでしょうか?民営化を止めると直るのですか?

秘書です。

日本郵政の問題は、民営化が原因なのでしょうか?
印象論と感情論で議論するのはやめましょう。
何が問題の原因なのでしょうか。
しっかり原因に対する対処法を考えないと。
民営化を止めると、事態はもっと悪くなるのでは?


■簡易郵便局減少は民営化とは関係がありません。むしろ民営化してからのほうが一時停止する局が減っています。

(郵政民営化委員会の簡易郵便局一時閉鎖についての現状把握)
【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
「前回報告書で議論となったのは、民営化直後に、郵便局の総数はほとんど変わらないあるいは若干の増加傾向を示していたにもかかわらず、日本郵政グルプから委託を受けて業務を行う簡易郵便局の一時閉鎖が、20 年3 月には438局まで急増したことである(図表1)。

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(郵政民営化委員会の簡易郵便局一時閉鎖についての原因分析)
【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
これは、個人受託者の高齢化、受託先の農協・漁協の支所の廃止等によるもののほか、これまで看過されてきたコンプライアンス面の不備を民営化に伴い適正化を図ったことで受託者にとっての業務の煩雑さが増したことなどがその原因であった。

(郵政民営化委員会の簡易郵便局一時閉鎖についての対策評価)
【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
しかし、日本郵政グループが、委託手数料の引上げ、受託者の初期投資を軽減するための施設転貸制度の創設、サポート体制の改善などの対策を講じた後は、一時閉鎖局数は、23 年9月には239 局まで着実に減少し現在に至っていることから、これらの取組みは一定の成果が見られたと評価できる。更に、簡易郵便局の営業再開が早期に見込まれない地域において、渉外社員による出張サービス、暫定分室によるサービス、移動郵便局によるサービスといった代替サービスの提供を強化している。

(郵政民営化委員会が考えるサービス網維持の考え方)
【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
「郵便事業がユニバーサルサービスとして全国に郵便物を運ぶという行為はこれからも変わるものでないが、その一方で、地方においては、委託先の農協や漁協の統廃合や個人商店の高齢化という問題はこれからも続く問題であり、簡易郵便局ネットワークを維持するためには、効率的かつ安定的な運営が必要である。」
「しかし、少子高齢化がさらに厳しくなると、過疎地や離島では、郵便局の有無だけの問題だけでなく行政サービスのあり方そのものが問われる。この場合、地元の自治体や地域住民や地域金融機関などが一体となり、住民サービスの提供の仕組みをあらかじめ検討しておくことが重要である。23 年8 月時点で民間金融機関の拠点が存在しないのはわずか23 町村であり、コンビニも含めたATM網を含めると全国にあまねく展開されている。生命保険協会によると、10 万を超える生命保険会社の拠点・代理店と100 万名を超える募集人が全国を網羅している。このような民間金融機関の力を有効に活用することが今後の少子高齢化時代における過疎地や離島の住民サービスの提供には必要であろう。
いずれにしても、少子高齢化時代において、郵便物を運ぶというユニバーサルサービスの実現手段としては、必ずしも現在の郵便局数の維持を意味しない。」

■民営化したゆうちょ銀行が外資にのっとられることはありません

【参考】外資乗っ取り論に対する高橋洋一氏の反論

郵貯は民営化により銀行法上の銀行になるが、銀行には次の三つの主要株主規制がある。

第一に株式を5%超保有する場合の大量保有規制だ。その場合、5営業日以内に銀行議決権保有届出書を提出しなければならない。

第二に、株式の20%超保有する場合の銀行主要株主規制だ。この場合、予め金融庁長官の認可を受けなければならない。

第三に、株式の50%超保有する場合の支配株主規制だ。この場合、金融庁長官は支配株主傘下の銀行経営の健全性維持のため監督上必要な措置ができることとなっている。


郵貯は銀行法上の銀行である。これらの規制のため、三菱東京UFJ銀行が外資に乗っ取られないのと同様、郵貯を乗っ取ることはできないだろう。そもそも郵貯資産200兆円は貯金者のものであって、銀行の株主のものではない。さらに、外国業務を行わない郵貯に外資が投資するというのは考えにくい。

■郵便事業大幅減益の減益の原因は民営化とは関係ありません

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
20年6月に日本通運株式会社との共同子会社であるJPエクスプレスを設立し、同社のペリカン便事業を翌年4月に移管させたが、郵便事業会社のゆうパック事業の移管は、鳩山邦夫総務大臣(当時)及び佐藤勉総務大臣(当時)が「郵便業務の収支・業務運行に与える影響が判断できない」などの理由で認可せず、JPエクスプレスは旧ペリカン便事業だけで営業を続けることになった。21年に民主党政権が誕生し郵政民営化にかかわる方針が変更となったのを受けて、同年10月に西川善文前社長が退陣し、新たに斎藤次郎氏が社長に就任した。これをきっかけに、ゆうパック事業の移管問題も正反対の方向に方針転換され、JPエクスプレスが引き継いでいた旧ペリカン便事業を郵便事業会社が引き取ることになった。この結果、22年7月、郵便事業会社はJPエクスプレスから旧ペリカン便事業を引き取り、8月にJPエクスプレスは清算手続きを開始した尚、22年5月に公表された日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会の報告書では、JPエクスプレス事業について、西川善文前社長らは赤字が予想されたにもかかわらず反対意見を押し切って事業を開始した(比較シミュレーションの不実施、社外取締役の助言無視等)として、ガバナンス面やコンプライアンス面に関する指摘を行っている。結局、JPエクスプレスがペリカン便のサービスを提供し、実質的に稼動していたのは僅か1年3ヵ月(21年4月~22年6月)であった。郵便事業会社による新たな「ゆうパック」は7月よりスタートしたが、統合に伴う混乱から大規模な遅配事故を起こし、8月に総務省から業務改善命令を受けた。このJPエクスプレス事業の統合に当たり、採算割れの契約を見直さずに承継したことを主因として、22年度決算では、郵便事業会社は1千億円を越える営業赤字を計上し、日本郵政グループ連結決算では民営化後初の減益となった

→民主党政権になってから、天下り社長さんが来てから郵便事業が悪化したのでは?

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
銀行事業と生命保険事業の収益は、それぞれほぼ横ばいおよび減少であったが増益を確保した。
しかし、郵便事業は大幅に減益となった。22年度にJPエクスプレス事業を統合したゆうパック事業の大赤字がその主因である。費用面をみると、業務費は減少しているが人件費はほぼ横ばいであり、経営効率化への取組みが不十分であったこともうかがえる。23年度上期もゆうパック事業の不振は続いており、抜本的な取組みが求められる。

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
「郵便事業会社は会社全体の収益性を安定させ、郵便事業のユニバーサルサービスの実施体制の維持が求められている。郵便物量は、IT 化の進展等の社会構造変化により(平成)13 年のピーク以降減少傾向を続けている。同社はその対策として様々な取組みを行ってきたが、郵便物量の減少傾向は今後も続くと見られることから、民営化以前からの課題である高コスト構造の解消に向けて更なる取組みを行う必要がある。22 年度決算では、営業総利益で赤字に転じ、営業損益も1,000 億円を超える大幅な赤字となった。勘定科目別にみると、「集配運送委託費」「人件費」はそれぞれ前年比プラス560 億円、プラス320 億円と著しく増加している。JP エクスプレス社の統合等諸般の事情があったとはいえ、22 年度の1 年間で社員数が11.3 千人増加(うち、正社員5.6 千人、期間雇用社員5.7 千人増加)したことも要因の一つであった。


【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
同社の喫緊の課題は、ゆうパックを含む荷物事業の営業損失が20 年度36 億円、21 年度127 億円、22 年度1,185 億円と続くところから(図表10)、今後については、ゆうパック事業の収益性を高め、赤字から脱却することである。
そのためには、JP エクスプレスから無条件で引き継いでしまった採算の合わない契約を早急に見直すとともに、経費削減努力はもちろんのこと、ユニバーサルサービスではない同事業からの撤退の検討も含めた効率化に向けた抜本的な取組みが必要である

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→つまり、郵便局と郵便事業会社を一緒にするほうが、郵便のユニバーサルサービスの維持ができなくなる!1000億円の荷物事業の赤字の重荷が郵便のユニバーサルサービスを脅かす!リスク遮断をすべきなのに!

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
ペリカン便事業の引き取りと遅配事故対応により費用が増加し、郵便事業会社の22 年度の中間決算では、計画に比べ赤字額が大幅に増えたため、総務省は計画との乖離についての要因分析および収支改善施策等について同社に報告を求め、同社は23 年1 月に総務大臣に求められた資料を提出した。同資料によると、事業統合後、サービス水準の維持等のため人件費や集配運送委託費等の費用が収益を大きく上回って増加している。また、こうした状況を踏まえると、抜本的な収益改善に取り組まなければ、毎年度1000 億円を超える営業損失が常態化するおそれがあるとしている。・・・しかし、ゆうパック事業の5 年程度での単年度黒字化については達成のための具体的な計画を持っているとは考えられない。今後の持続的な郵便事業会社の経営ということになると、減少トレンドにある郵便物数、JP エクスプレスを吸収したゆうパックの売り上げなど、いずれをみても依然として損益見通しについて楽観が許されない状況が続いている。特に、民間宅配便事業者の最大手2 社は、全国ネットワーク維持のための固定費をカバーするために高稼働率が求められる宅配便市場で黒字となっているが、サービス品質の高さ等を武器にゆうパックのシェアを奪う勢いである(図表11)。

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・・・当委員会のヒアリングによれば、郵便事業会社自身は24年度の単年度営業黒字化は容易ではないとの認識を持っている。21 年度以降、JP エクスプレスの統合に関係して純資産の毀損も続いている。


■三事業一体方式にはリスクに遮断に問題があります

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
「銀行法及び保険業法によれば、銀行持株会社及び保険持株会社は、事業を営まない純粋持株会社であることが要求されている。これは、仮に持株会社が事業会社を兼ねることを認めると、持株会社の事業リスクが金融業務に悪影響を及ぼすおそれがあると同時に、持株会社の事業のために子会社である金融機関の信用を利用する(いわゆる機関銀行化等が生ずる)リスクがあるからである。したがって、日本郵政株式会社に郵便事業等を営ませるというアイディアに関していえば、子会社である金融2 社が事業リスクを遮断できなくなるため認められるものではない。現実に、郵便局会社の収入の多くが金融2 社からの手数料収入に依存している現状や郵便事業会社の近時の経営状態を踏まえると、これらの事業会社が持株会社を兼ねることは、世界最大級の金融2 社へのリスク遮断について大いなる疑問が生ずる。なによりも、世界第2 位の金融経済大国である日本がグローバルな金融ビジネスの常識から外れることになる。このことは日本の資本市場の位置づけに関して国際基準に合致しないとの認識を生み出すことになりかねず、国際的な資産運用市場から日本が自らの意思により撤収することにもつながりかねないほどの問題である。

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
尚、金融2 社を事業会社のリスクから遮断したり、事業会社のために利用されるのを防ぐためには、同じ持株会社の傘下にある兄弟会社が事業を営むことも禁止されるべきであり、現に、銀行法や保険業法は、銀行(保険)持株会社の子会社が事業を営むことを規制している。日本郵政グループは、金融2 社の完全民営化が実現するまでの間、この規制の適用除外であるが、これはあくまでも過渡期であることを前提とするものである。したがって、かかる状態が恒常化するような事態が起こらないようにすることが、何より大切である。

■かんぽの宿は毎年30億円の赤字を出し続けてます。これを郵貯・簡保が負担するのは公正?

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
かんぽの宿については、郵政公社時代から赤字が続いていた施設は数ヶ所一括して売却しており、現行法では民営化後5 年以内に残りの施設を譲渡または廃止すると定められているものである。民営化後の19 年12 月に売却方針を公表し、その1年後に入札でオリックス不動産への一括譲渡を正式に発表した。
これに対し、21 年1 月に当時の鳩山邦夫総務大臣から、この取引は国民の財産を不当に安く売却するものである、譲渡先決定に至る手続きが不透明である、などを理由として異議が表明され、結局、オリックス不動産との契約は解約されることになった。同年4 月、総務省はこのかんぽの宿の売却手続き面に問題があったとして業務改善命令を発出。日本郵政は「不動産売却等に関する第三者検討委員会」を設置し、指摘された手続き上の不備にかかわる検討を踏まえて、保有不動産の売却等についての基本的な考え方やルールを整理した。同年5月に、民主党、国民新党、社会民主党の国会議員12 名は連名で日本郵政グループの西川善文前社長らを特別背任未遂の罪で告発したが、23 年3 月に東京地検特捜部は「譲渡期限がある中、職員を安定雇用する条件での事業譲渡であり、損害を与える目的は認められない」すなわち「嫌疑なし」とし、不起訴処分とした。尚、21 年12 月に凍結法が成立したことにより、かんぽの宿の売却はストップしたままである。

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
日本郵政単体データ(図表6)から明らかなように、医業損益は50億円超の赤字、かんぽの宿等の宿泊事業損益は30億円超の赤字と、本業以外の業務で計80億円程度の累計損失が毎年積み上がっていることに鑑みると、郵政民営化以前からの問題であった高コスト構造脱却に向けた取組みについて、委員会として懸念を表明せざるをえない。

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【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
かんぽの宿等を含む宿泊事業は、20年度52億円、21年度32億円、22年度32億円と毎年赤字を続けており、23年上期もその傾向は変わらない(図表6)。20年12月にかんぽの宿等のオリックス不動産への一括譲渡が発表されたが、21年1月には鳩山邦夫総務大臣(当時)が異議を表明し、契約を解約するに至っている。
その後不動産売却等に関する第三者検討委員会が設置され、同委員会から売
却に関する手続き上の問題の指摘を受けるに至り、現在では凍結法によりかんぽの宿等は売却できない状態にある。
・・・21年2月の譲渡中止からの3年間で約90億円もの損失を出す結果となった。
赤字事業の黒字化は企業にとって重要課題ではあるものの、本業に資源を集中するという視点からは、売却の可能性を検討することも必要である。また、売却となった場合には買い手がその飲食部門等を必要としないケースもあり得ることから、売却検討も視野に入れるならば、飲食・売店等の委託部門の直営化などという業務改善策の講じ方については慎重になる必要があるとの意見も当然ありうる。
手続きの透明性に十分配慮して、国民に疑義が生じないようにするという前提に立った上であれば、本業以外の赤字事業の売却は否定されるものではない。
また、手続きの効率性、円滑な事業譲渡という観点からは、一括売却も選択肢の一つとなり得るものである。

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
現在全国14の病院を保有しているが、20年度から22年度までの3年間、毎年50億円を超える赤字を計上している(図表6)。日本郵政へのヒアリングによると、現段階で病院事業の売却は検討しておらず、地域や労働組合との話し合いを行いながら収益の改善を図っていく方針であるとのことであった。日本郵政グループにとって本業でない病院事業の経営改善は困難が伴うものではあるが、かんぽの宿等以上の赤字を計上している現状に鑑み、売却や提携といった方法も視野に入れつつ、早急な解決が求められる。

■郵便局の金融のユニバーサルサービスについて

【参考】郵政民営化委員会の意見報告(2012年3月7日)
郵便事業は、郵便法第1 条に「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供すること」と記されているユニバーサルサービスであるが、金融事業やゆうパック事業は、既に民間企業が全国的なサービスを提供しており、その必然性はない。まして、最終形で政府資本が間接的に残る郵便局会社が提供するサービスに限って郵便事業と金融2 事業をユニバーサルサービスとするならば、ゆうちょやかんぽは創業当時からの目的である小額貯金や小口保険に限定すべきである。そうでなければ、国営当時の高コスト構造に逆戻りする懸念や肥大化が金融市場を歪めるというおそれのみならず、他の民間企業とのイコールフッティング確保上の観点から、TPP 交渉の阻害要因となる可能性もある。
金融2 社の株式を国が保有することを通じて金融に関するユニバーサルサービスを確保するという道筋は、郵政民営化のプロセスとして必然的に生ずる問題ではなく、一種の政策判断の結果にすぎないものと位置づけられよう

【参考】高橋洋一氏の指摘

1.郵政民営化法では金融についてユニバーサルサービスを法律上義務付けていない。

2.その理由は、金融での郵貯のシェアが少ないにもかかわらず郵貯にだけ義務を課すことは不公平だからだ(郵便は独占なのでユニバーサルサービスが義務付けられている)。

3.その代わりに、郵便局の拠点維持義務を課している。郵便貯金銀行と郵便保険会社の全株式を処分して「完全民営化」する2017年までは、郵便局で金融サービスを提供する代理店契約を義務付け、さらに、仮に過疎地などの一部の郵便局で貯金・保険のサービスの提供が困難となる場合には、社会・地域貢献基金を活用してサービスの提供を確保することとしている。

4.この基金の規模(1兆円以上)については、将来過疎化が大幅に進行したとしても、過疎地域等における貯金・保険のサービスの提供に必要な額を運用益によって賄えるように設定していることから、これにより地域にとって必要性の高い貯金・保険のサービスの提供を確保することは可能。


■郵政民営化の基本方針とは2004年9月10日に閣議決定されたものです。


【参考】郵政民営化法
第一条  この法律は、民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが、より自由で活力ある経済社会の実現に資することにかんがみ、平成十六年九月十日に閣議において決定された郵政民営化の基本方針に則して行われる改革(以下「郵政民営化」という。)について、その基本的な理念及び方針並びに国等の責務を定めるとともに、郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会の設置、新たな株式会社の設立、当該株式会社に関して講ずる措置、日本郵政公社(以下「公社」という。)の業務等の承継等に関する事項その他郵政民営化の実施に必要となる事項を定めることにより、これを集中的かつ計画的に推進することを目的とする。

→郵政民営化法によれば、下記の閣議決定に則して行われる改革のことです。

【参考】郵政民営化の基本方針(平成16年9月10日 閣議決定)
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/0910yusei.html
 明治以来の大改革である郵政民営化は、国民に大きな利益をもたらす。
①郵政公社の4機能(窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)が有する潜在力が十分に発揮され、市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが安い料金で提供が可能になり、国民の利便性を最大限に向上させる。
②郵政公社に対する「見えない国民負担」が最小化され、それによって利用可能となる資源を国民経済的な観点から活用することが可能になる。
③公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になる。
 こうした国民の利益を実現するため、民営化を進める上での5つの基本原則(活性化原則、整合性原則、利便性原則、資源活用原則、配慮原則)を踏まえ、以下の基本方針に従って、2007年に日本郵政公社を民営化し、移行期を経て、最終的な民営化を実現する。

1.基本的視点
 
 4機能が、民営化を通じてそれぞれの市場に吸収統合され、市場原理の下で自立することが重要。そのための必要条件は以下の通り。
 
(1)経営の自由度の拡大
・民営化した後、イコールフッティングの度合いや国の関与のあり方等を勘案しつつ、郵政公社法による業務内容、経営権に対する制限を緩和する。
・最終的な民営化においては、民間企業として自由な経営を可能とする。

(2)民間とのイコールフッティングの確保
・民間企業と競争条件を対等にする。
・民営化に伴って設立される各会社は、民間企業と同様の納税義務を負う。
・郵貯と簡保の民営化前の契約(以下、「旧契約」と言う。)と民営化後の契約(以下、「新契約」と言う。)を分離した上で、新契約については、政府保証を廃止し、預金保険、生命保険契約者保護機構に加入する。(通常貯金については、すべて新契約とする。)



(3)事業毎の損益の明確化と事業間のリスク遮断の徹底
・各機能が市場で自立できるようにし、その点が確認できるよう事業毎の損益を明確化する。
・金融システムの安定性の観点から、他事業における経営上の困難が金融部門に波及しないようにするなど、事業間のリスク遮断を徹底する。

2.最終的な民営化時点における組織形態の枠組み
 
(1)機能ごとに株式会社を設立
・4機能をそれぞれ株式会社として独立させ、窓口ネットワーク会社、郵便事業会社、郵便貯金会社、郵便保険会社とする。

(2)地域会社への分割
・窓口ネットワーク会社、郵便貯金会社及び郵便保険会社を地域分割するか否かについては、新会社の経営陣の判断に委ねることにする。

(3)持株会社の設立
・経営の一体性を確保するために、国は、4事業会社を子会社とする純粋持株会社を設立する。郵便貯金会社、郵便保険会社については、移行期間中に株式を売却し、民有民営を実現する。その際には、新会社全体の経営状況及び世界の金融情勢等の動向のレビューも行う。国は、持株会社の発行済み株式総数の3分の1を超える株式は保有する。 

(4)公社承継法人
・郵貯と簡保の旧契約とそれに見合う資産勘定(以下、「公社勘定」と言う。)を保有する法人を、郵政公社を承継する法人として設立する。
・公社勘定の資産・負債の管理・運用は、郵便貯金会社及び郵便保険会社に委託する。

3.最終的な民営化時点における各事業会社等のあり方
 
最終的な民営化時点における各事業会社等のあり方は、以下の通り。なお、分社化に必要となる枠組み等については、郵政民営化法案(後述)に盛り込む。
 

(1)窓口ネットワーク会社
(ア)業務の内容
・適切な受託料の設定及び新規サービスの提供により、地域の発展に貢献しつつ、収益力の確保を図る。
・そのため、郵便、郵便貯金、郵便保険の各事業会社から窓口業務を受託する。また、例えば、地方公共団体の特定事務、年金・恩給・公共料金の受払などの公共的業務、福祉的サービスなど地方自治体との協力等の業務を受託する。
・民間金融機関からの業務受託の他、小売サービス、旅行代理店サービス、チケットオフィスサービスの提供、介護サービスやケアプランナーの仲介サービス等地域と密着した幅広い事業分野への進出を可能にする。
(イ)窓口の配置等
・窓口の配置についての法律上の取り扱いは、住民のアクセスが確保されるように配置するとの趣旨の努力義務規定とし、具体的な設置基準のあり方等は制度設計の中で明確化する。
・代替的なサービスの利用可能性を考慮し、過疎地の拠点維持に配慮する一方、人口稠密地域における配置を見直す。
・窓口事業の範囲は、原則として郵便局における郵便集配業務を除く郵便、郵便貯金、郵便保険に係る対顧客業務及び上記(ア)の業務とする。
 
(2)郵便事業会社
(ア)業務の内容
・従来の郵便事業(窓口業務は窓口ネットワーク会社に委託)に加え、広く国内外の物流事業への進出を可能にする。高齢者への在宅福祉サービス支援、情報提供サービス等地域社会への貢献サービスは、適切な受託料を得て、引き続き受託する。
(イ)サービスの提供範囲
・引き続き郵便のユニバーサルサービスの提供義務を課す。
・ユニバーサルサービスの維持のために必要な場合には、優遇措置を設ける。
・信書事業への参入規制については、当面は現行水準を維持し、その料金決定には公的な関与を続ける。
・特別送達等の公共性の高いサービスについても提供義務を課す。このために必要な制度面での措置は、今後の詳細な制度設計の中で検討する。

(3)郵便貯金会社
(ア)業務の内容
・民間金融機関と同様に、銀行法等の一般に適用される金融関係法令に基づき業務を行う(窓口業務や集金業務は窓口ネットワーク会社に委託)。
(イ)新旧契約の分離
・民間企業と同様に納税義務を負うとともに、新規契約分から郵便貯金の政府保証を廃止し、預金保険機構に加入する。
・公社勘定は公社承継法人が保有し、その管理・運用を郵便貯金会社が受託する。運用に当たっては、安全性を重視する。
 
(4)郵便保険会社
(ア)業務の内容
・民間生命保険会社と同様に、保険業法等の一般に適用される金融関係法令に基づき業務を行う(窓口業務や集金業務は窓口ネットワーク会社に委託)。
(イ)新旧契約の分離
・民間企業と同様に納税義務を負うとともに、新規契約分から郵便保険の政府保証を廃止し、生命保険契約者保護機構に加入する。
・公社勘定は公社承継法人が保有し、その管理・運用を郵便保険会社が受託する。運用に当たっては、安全性を重視する。
 
(5)公社承継法人
(ア)業務の内容
・郵貯・簡保の既契約を引継ぎ、既契約を履行する。
・郵貯・簡保の既契約に係る資産の運用は、それぞれ郵便貯金会社及び郵便保険会社に行わせる。
(イ)公社勘定の運用
・公社勘定に関する実際の業務は郵便貯金会社及び郵便保険会社に委託し、それぞれ新契約分と一括して運用する。
・公社勘定の運用に際しては、安全性を重視する。
・公社勘定については、政府保証、その他の特典を維持する。
・公社勘定から生じた損益は、新会社に帰属させる。

4.移行期・準備期のあり方
 
(1)移行期のあり方
民営化の後、最終的な民営化を実現するまでの間を、移行期と位置付ける。移行期のあり方は、以下の通り。
(ア) 移行期における組織形態
・国は、日本郵政公社を廃止し、4事業会社と国が全額株式を保有する純粋持株会社を設立する。設立時期は2007年4月とする。情報システムの観点からそれが可能かどうかについては、専門家による検討の場を郵政民営化準備室に設置し、年内に結論を得る。窓口ネットワーク会社及び郵便事業会社の株式については、持株会社が全額保有するが、郵便貯金会社、郵便保険会社については、移行期間中に株式を売却し、民有民営を実現する。その際には、新会社全体の経営状況及び世界の金融情勢等の動向のレビューも行う。また、国は、移行期間中に持株会社の株式の売却を開始するが、発行済み株式総数の3分の1を超える株式は保有する。
・公社承継法人を設立する。公社承継法人は、郵便貯金、簡易保険の旧契約を引継ぎ履行することを業務とする。旧契約の管理・運用は郵便貯金会社と郵便保険会社に行わせる。
(イ) 経営の自由度
・窓口ネットワーク事業においては、試行期間を設けつつ、民間金融商品等の取り扱いを段階的に拡大し、地域の「ファミリーバンク」、「ワンストップ・コンビニエンス・オフィス」として地域密着型のサービスを提供する。
・郵便事業会社においては、国際的な物流市場をはじめとする新分野への進出を図る。
(ウ)郵便貯金及び郵便保険事業の経営
・郵便貯金及び郵便保険事業は、当面、限度額を現行水準(1千万円)に維持する。その際、貯金及び保険は、預金者、被保険者ごとに新契約と旧契約とを合算して管理する。その上で、経営資源の強化等、最終的な民営化に向けた準備を進める。
・民間金融機関への影響、追加的な国民負担の回避、国債市場への影響を考慮した適切な資産運用を行うが、民有民営化の進展に対応し、厳密なALM(資産負債総合管理)の下で貸付等も段階的に拡大できるようにする。

・大量の国債を保有していることを踏まえ、市場関係者の予測可能性を高めるため、適切な配慮を行う。
(エ)イコールフッティングの確保
・新会社は、移行期当初から民間企業と同様の法的枠組みに定められた業務を行い、政府保証の廃止、納税義務、預金保険機構ないし生命保険契約者保護機構への加入等の義務を負う。
(オ)移行期の終了
・移行期は遅くとも2017年3月末までに終了する。
・郵便貯金会社及び郵便保険会社は、遅くとも上記の期限までに最終的な枠組みに移行するものとする。そのため、移行期における両社のあり方については、銀行法、保険業法等の特例法を時限立法で制定し、対応することとする。

(以下、略)