次期人事院総裁は、20年間、旧国鉄に勤務。公務員制度改革についての認識は? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

次期人事院総裁は、20年間、旧国鉄に勤務。公務員制度改革についての認識は?

秘書です。
次期人事院総裁は、20年間、旧国鉄に勤務。旧国鉄は、鉄道省の意識を持ち、幹部は運輸省以上のエリート集団だったわけで。「民間出身」といっても、入口は「官」だったわけですね。
それよりも、公務員制度改革についてどういう認識をもっているかのほうが重要でしょう。
政治任用制度や人事制度の根幹についての認識は?


人事院総裁に51年ぶり民間出身者…初代以来
読売新聞 3月23日(金)23時25分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120323-00000972-yom-pol


 藤村官房長官は23日の記者会見で、4月7日に任期満了を迎える人事院の江利川毅総裁(人事官)(64)の後任に、元JR東海副社長の原恒雄人事官(67)を充てると発表した。

 近く閣議決定し、原氏は正式に就任する。原氏の任期は2014年4月まで。民間出身の総裁は、1948年12月の人事院発足から61年2月まで務めた元慶大教授の浅井清初代総裁以来、51年ぶり2人目となる。

 人事院は人事官3人で構成され、総裁はこの中から選ばれる。

 内閣府次官、厚生労働次官を務めた江利川氏は09年11月、谷公士(まさひと)前総裁の辞任を受けて人事院総裁に就任した。公務員制度改革をめぐり、国会答弁などで政府との食い違いが目立っていた。江利川氏の退任について、藤村氏は記者会見で「国会対応が影響したのではない」と述べ、直接の関係はないと強調した。



「自律的労使関係はできるのか 」
原恒雄 人事院人事官
人事官とは聞き慣れない役職だが、委員会組織である人事院を構成する3人の肩書だ。このうち一人が総裁になる。公務員制度改革が叫ばれるなか、人事院の役割は何か、民主党が目指す改革は進むのだろうか。JR東海出身の人事官、原恒雄氏に聞いた。

(2010年2月9日、東京・霞が関の人事院で。聞き手・高橋万見子、野島淳)
http://globe.asahi.com/feature/100308/side/11.html

はら・つねお  1944年生まれ。67年、東京大工学部土木工学科を卒業し、日本国有鉄道に入社。JR東日本では、総合企画本部投資計画部長や取締役長野支社長を務めた。鉄建建設の専務取締役などを経て、JR東海へ。専務取締役、副社長を歴任し、2006年4月から、人事官。

――人事官とは、どんなお仕事ですか。

原恒雄 一般的に知られていて、仕事としても一番大きいのは人事院勧告でしょう。勧告業務で我々、人事官が忙しいのは春過ぎから夏ぐらいで、1年中、人事院勧告の作業をしているわけではありません。目立たちませんが、「準司法機関」のような仕事があります。公務員が懲戒処分を受けたときや労働災害に遭ったときの判定が不十分だったという話や、職員の給与や昇給、評価に対する不服などが人事院に寄せられます。それに対して、それぞれの判断は正しかったのか、ということを3人の人事官で議論し、判定していきます。こうした仕事は季節を問わず、けっこうな頻度であります。

現在は、公務員制度改革や法改正などに関する仕事も多いですね。人事院には人事院規則というものがあって、法律内で規定するさまざまな規則で、法律が変われば規則も変えないといけません。しかし、総じていえば、このビル、霞が関界隈から出ていくことは少ない仕事ですね。私は鉄道屋で、動くのが商売だったんですが(笑)。



――人事院に入って、改めて認識されたことはありますか。

原 私は、国鉄に20年いました。かつては鉄道省だったところですからね。戦後、公共企業体という組織になっても、人事制度、給与、議論の仕方など、ほとんど同じ。時代の変化はありますが、意外に思うことは、一つもありませんよ(笑)。




――ただ、JRとは大きく違うのではないですか。

原 民間企業と「霞が関」の一番の違いは、「自分のことを自分で決められるかどうか」です。人事院は、人事院規則を変えられても、法律は変えられません。法律改正は国会の仕事です。財務省でも、経産省でも同じで、「こうしたい」「これでいこう」と思っても、法案にして国会審議をしないといけません。主体的に自分でどんどん新しいことを決めていくことができないので、合意形成をし、時間をかけて、仕事を進めていくのです。民間企業でも合意形成はしますが、トップがひとつの方向性を出せば、機動的に動きます。今、決めなければいけないことを今、決める。それをしなかったら市場から退場させられるかもしれないですから。そこが役所とは違いますね。

JRが駅ビルなどの関連事業ができるようになったのは、競争環境が備わったからだ、とよく言われますが、中にいた人間からすると、全く関係ありません。国鉄時代から私鉄はありましたし、飛行機も、高速道路もありました。ホテルは国鉄時代から運営していました。古い駅ビルも国鉄時代からあったものですよ。ただ、国鉄時代は、設備投資をするにも予算を国会で通さなければいけませんでした。それがJRになったら独自の判断でできるようになったのです。その点が、国鉄時代とJRとの最大の違いなんです。

政なくして官なし


――目下、注目されている公務員制度改革については、どんなご感想ですか。

原 1990年代から、ずっと公務員制度改革の議論はありました。安倍内閣では、能力や成績で評価する、天下りを組織的にしない、といった点で法改正がありましたが、根幹のところで大きな法改正はなされていません。議論はされているものの、最後は、「労働基本権」の問題をはっきりさせないために、結果的に大きな法律改正がなされなかったわけです。

今回、内閣人事局を作る、幹部人事を一元化する、といった改革の第2段が動き始めたわけですが、そのほかの点は今回の法改正では触らないということですから、いずれ第3段の法改正もなされるでしょう。「官」の制度は、「官」だけのものではありません。「官」は政治に基づいて仕事をするわけですから、「官」の制度は「政」の制度と不可分です。公務員制度だけが悪い、政治制度だけが悪い、ということはなりません。その意味では、官の議論ばかり注目され過ぎのように思います。

(ボスである)大臣が1年でころころ代わるなんて、民間企業では考えられないことです。どんなに公務員制度を完璧にしても、政治がそんな状態なら、うまくいきません。公務員制度も直さなければいけないところはたくさんあります。しかし、政なくして官なし。官なくして政もなし。政務3役だけで全部行政ができるわけではありませんから。



――ただ、官邸主導で人事をするというのは、政治側としても大きな変化ではないですか。

原 最近は、「脱官僚」ではなく「脱官僚依存」という表現になりましたが、私に言わせると、「官僚任せから政治主導へ」でしょうか。官僚に任せすぎていたところから、本来の形に戻すというなら、それはいいことでしょう。そのためには政治がきちんと機能することが大事です。今、新しい取り組みをされているところだから、少し時間をかけて見ないといけません。



――昨年はいろいろと政府と対立しましたが、何が問題だったと人事院は考えたのですか。

原 昨年の政府が出した法案には、「国家公務員制度改革基本法」に書いていないことが、たくさん入っていました。労働基本権のあり方について詰めることなく、級別定数(各省のポストに応じた給与の定数枠)の設定や採用試験、研修の企画立案など、みんな内閣人事局にもって行くという内容でした。それは基本法の枠組を超えているのではないか、といった点がむしろ論点でした。

人事院は、ある省のA局長を次官にするとか、B課長を審議官にするとか、具体的な人事を決めているわけではありません。成績に基づいて人事をしてください、ということを決めているだけで、各省庁はそのルールにもとづいて人事をしているのです。今回の改正は、幹部人事を内閣と各省が行うという話ですから、いまの人事院の仕事を変えるものではありません。



――昨年の法案の中身で、何が問題だったのでしょうか。

原 一つは、採用の問題です。民間企業で採用する場合は、会社によって手法や基準が違います。社長がこの人を採用したいと言って人事部が全く聞かない会社もあれば、融通がきく会社もあります。しかし、国家公務員になろうと思ったら、採用試験をくぐらないと採用されません。その試験は中立性が保たれなければいけません。国民の税金で雇う人材を採用するからです。総理大臣が「うちの息子が受けるから何とかして欲しい」とは人事院に言ってきませんし、万が一来ても受け付けません。それは、中立である人事院が採用試験を担っているからです。「使用者側」の官邸が採用試験を行うとなると、中立性はどう担保されるのだろうか、と思います。



――職員の評価の面ではどうですか。

原 官僚の政治への応答性を高めるというのが今の流れです。そのため、大臣の周りに政治任用を増やせば、確かに応答性は高まるでしょう。私も、特別職を増すことはいいことだと思っています。しかし、局長以上や審議官以上をみんな特別職の政治任用ということになると、公務員制度の根幹にかかわってきます。公務員は時の政権に対してではなく、どの政権にも応答しないといけません。仮に、課長以上を特別職にする、といえば、上昇志向のある人間ならみんな猟官運動をしますよ。政治任用ポストを設けることは否定しませんが、一律にどのクラス以上を特別職にする、というのは問題だと思います

政権交代があって、現職幹部が「自民党による任用だったので辞めます」と言って全員辞めると、仕事が回るでしょうか。米国とは社会インフラが違います。もし米国のようにするなら、政権が代わって、官僚を辞めても食べられる仕組みをつくらないといけません



――民間企業であれば、組織変更と人事は一体的になされます。公務においても級別定数は大臣が定める必要があると思いますが、どうですか。

原 級別定数については、労働基本権の問題の問題がその根幹にあります。民間企業の団体交渉は、個別企業の労使の責任範囲で行い、協約を締結すれば、それを守ります。しかし、官の世界では総理大臣が「給料を5%上げる」と約束しても、国会で通らなければ実行されません。税金の使い道を決める話ですから。

級別定数は、何級の係長の給与はいくら、と決まっていて、ある省で4級が何人、と決めているものです。その省の枠の範囲でしか昇格はさせられません。級別定数は勤務条件なので、スト権をどうするのか、協約締結権をどうするかも決めていない段階で、使用者である省が勝手に級別定数を決めるということは問題があります。

昨年の法案で人事院が主張したのは、そういう状況で級別定数を内閣人事局に移すのは、労働者の基本的な権利が制約されている中での代償機能が発揮されないということです。その状況は今も変わっていません。



難しい公務員の労働基本権


――まず、労働基本権問題を先に整理するべきだということですか。

原 そうですね。人事院は、国家公務員の労働基本権が制限されていることへの代償機能として存在しています。組織と人事を一体化するというのは、変化の時代にあって大事なことではあります。しかし、公務に民間企業の手法を即座に持ち込むことはできません。公務員がストをしていいのか、労働協約を自律的に結べるのかという点は、長年、解決していない非常に難しい問題です。労働組合と約束はしたけれど、国会があるから協約は実現しないかもしれないとなれば、労働組合は経営側と交渉しないでしょう。



――今回、民主党が進める改革案で、懸念はありますか。 

原 内閣官房が次官、局長、審議官になる人たちの幹部名簿をつくりますが、原則は成績主義でないといけません。「この政策をしたいので、この分野が得意なこの人を」という任用はあっていいと思いますが、幹部になるための適格性審査が情実であってはならないのです。基準を明確にして欲しいと思います。今回、そこまでは法律で決めないようなので、今後決まっていくことになるのでしょう。内閣人事局が基準をつくる場合も透明性が必要です。

それと職員の給与をどう決めるか、ですね。民間企業であれば、社員の賃金決定メカニズムは、市場原理に制約されます。労務倒産だってあり得ますから、組合もそこはわきまえます。しかし、官はそれを何に求めるのか。国の財政状況に求めれば、今の環境では給与は絶対、あがりません。しかし、仮に好景気で民間企業がどんどん賃上げしているときに、「国は慢性赤字だから賃金は半分だ」と言っていたら、いい人材は来ません。今は人事院が「民間準拠」で給与を決めています。人事院でなければならないとは言いませんが、何のルールもなしに交渉ごとで決めなさい、というのは難しいのです。




――民主党は公務員の総人件費を20%減らすと言っていますが、できるでしょうか。

原 協約締結権を公務員に与えれば、労組は強くなります。その中で人件費を下げる、ということができるのかは、よくわかりません。国鉄、電電、専売といった「3公社5現業」には、協約締結権がありました。でも、スト権はありませんでした。もっとも、国鉄は違法ストを打っていましたが。

では、3公社5現業に「自律的な労使関係」があったかというと、ありませんでした。労働協約は、1度も交渉で決まっていません。すべて、公共企業体等労働委員会に持ち込まれました。交渉しても妥結しないので、仲裁機関に持ち込み解決したのです。電電公社や専売公社は、財政的に困っていませんでした。その組織でも労使交渉では決着しなかったのです。民間企業の給与が伸びていても、国会を通過するどうかわかりませんから、経営側はゼロ回答するか、コンマ数%の伸びとしか回答できませんでした。ですから、公務員に協約締結権を与えても、スト権を与えても、それだけでは自律的にはならないのです。




――公務員に協約締結権を与えることには相当、問題があると。

原 例えば、国が新たな施策をするときに、それを実施するのに必要な職員の勤務体制に関する労働条件がまとまらなかったらどうするのでしょうか。協約締結権を与えた以上、その施策はできない、となってもいいのでしょうか。例えば、年金の問題に集中したいので、人をそこに集中させるとしましょう。しかし、その分、人を減らされる部署は反対するでしょう。それを労使交渉でまとめられるのでしょうか。

労働条件にかかわることはすべて交渉対象にするのかどうかも問題です。3公社5現業はすべてを対象にしました。米国は、給与など法定事項は一切対象にしません。フランスも、協約締結権を与えていません。イギリスはすべて与えていますが、民間とは違う制約を設けています。この問題については、様々な角度から十分検討する必要があると考えます。



――官僚バッシングもあって、官僚に元気がなくなっているとききます。

原 国鉄時代に、運輸省や大蔵省、建設省の方々と接触する機会がありました。当時は、皆さん、やはり「天下国家」を論じていました。当時から、「最後は政治が決める」というのは、当たり前でしたから、官僚がいくら大きい声を出したからと言って、その通りになるわけではありません。手続きを経て、政治家の手に委ねて、ということでした。それでも、それでも天下国家を語っていました。それに比べると、最近の官僚には覇気がない、というのが正直な印象です。



――今の官僚に求められる能力は何でしょうか?

原 国家観もいるし、構想力も企画力もいるでしょう。ただし、それは官の立場だから、限界はある。政界に転じる官僚がたくさんいるのは、その限界を感じたからではないでしょうか。しかし、官僚も議論はしないといけない。民間企業だって、若手でも中堅でも、いいアイデアが出たら採用すればいいわけで、最後に決めるのは社長です。失敗して責任をとらされるのが経営者です。この点は国の行政も同じではないでしょうか。