政府の日銀審議委員の人事案にある方の過去の主張 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

政府の日銀審議委員の人事案にある方の過去の主張

秘書です。
政府の日銀審議委員の人事案にある河野龍太郎氏の過去の論文等をみてみましょう。同意するかどうか判断するには、どのような考え方の方なのか、しっかり学習しておくことが必要です。



(1)米国FRBの金融緩和批判 

米国金融緩和は新興国・資源バブルを生み、米国経済を蝕む
2011.1.25週刊エコノミスト
河野 龍太郎

 米国の内需が停滞を続けるが故に、FRB(米連邦準備制度理事会)は積極的な金融緩和を進めているが、米経済が過剰債務問題を抱えた状況では内需の刺激効果が表れにくい。一方で、FRBの金融緩和効果が波及した新興国で、その効果が発揮されている。

 過剰債務問題を抱える先進国が積極的な金融緩和を行い、海外経済を刺激して輸出主導で回復するのは、日本のゼロ金利政策や量的緩和政策で見られた21世紀型の金融緩和の波及経路といえるかもしれない。


円安進展も相まって日本では輸出主導の景気回復がもたらされたが、その副作用として日銀の金融政策は、アジア新興国の資本輸出とともに米欧の住宅・不動産バブルやクレジットバブルの膨張を助長した。今度は、QE2が新興国バブルをもたらす恐れがある。
 
QE2のもう1つの副作用は、資源バブルである。

先進国の内需の弱さは、米欧におけるバランスシート問題や日本における「経済の老化」だけが原因ではなく、実は米国のQE2が大きく影響しているということになりかねない

金融、財政政策は行き詰まり
高まる原油高懸念

2012.3.27週刊エコノミスト
河野 龍太郎

 結論を先に言うと、今後1~2年の世界経済は成長の加速は期待できず、過去2年半に比べても精彩を欠くものとなるだろう。米欧を中心にバランスシート(貸借対照表)問題やソブリン(国家の信用)問題の調整がまだ数年は続くこともあるが、そもそも過去2年半は財政出動や金融緩和によってもたらされた、いわばかさ上げされた成長であり、各国ともマクロ経済政策でのかさ上げはもはや困難になっている。

 まず、リーマン・ショック後の世界経済を振り返る。・・・米欧でも、バランスシート問題は先送りされ、金融緩和と財政出動という裁量的なマクロ政策で、成長率を一時的に押し上げる近視眼的な政策が取られた。

 大規模な財政出動が、「100年に1度の危機」を大義名分に、先進国を中心に実施された。これが過去2年半の世界経済の回復の要因の1つである。

 拡張財政以上に過去2年半の世界経済の拡大に寄与したのは、米欧の積極的な金融緩和である。ただし、その効果が発現したのは米欧ではなく新興国においてであった。

 しかし、金融緩和の効果も永久には続かない。財政出動の効果が「将来所得の先食い」であるとすれば、金融緩和の効果は「将来需要の前倒し」に過ぎない

 さらに米国では、「物価安定」とともに「最大限の雇用」が金融政策の目標として与えられているため、高失業が続くことに対する金融緩和プレッシャーは非常に強い。高失業の原因がミスマッチであるなら、中央銀行が貢献できることは限られるが、それ故により積極的な金融政策が選択される可能性がある。

 仮に米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)に踏み切れば、それはドル安圧力をもたらす。バランスシート問題を抱えた国内の経済主体の支出を刺激することは容易ではなく、FRBの金融緩和の確実な波及経路は、ドル安を通じた輸出刺激になるのだろうが、問題はそれが各国に通貨高をもたらすことである。

(2)日銀の金融政策と増税に対する基本姿勢 


「中期的な財政運営に関する検討会」資料
長期の視点に立った改革を

2012.3.8  河野龍太郎
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokkasenryaku/image/20100308_chuuki3_haihu_1.pdf
「踊り場」回避の可能性が高まる中、長期の視点に立った改革を

􀁺 景気の先行きに不透明感は残るが、景気拡大が本格化するまで中長期の財政再建プラン策定を先延ばしすれば、歳出・歳入改革を加速させるべき時に、必要な施策が打てなくなる。2002~2007 年の前回の景気拡大局面で、前政権が歳出・歳入改革を打ち出したのは、景気がピークに近づいた2006 年7 月。ほとんど実行できなかった。

→景気がピークをうった原因は何でしょうか。2006年と2007年の誤った金融引き締めでしょう。物価上昇率ゼロでの金融引き締めのため、低所得者層に十分に成長の恩恵が浸透する前に景気が後退した。このことが成長しても自分には恩恵がない、成長なんていらないという国民の成長観を形成しました。そのことについての批判的視点は全くないのでしょうか。

􀁺 日本経済の構造問題の一つは、過少消費の問題。もう一つの構造問題である非製造業の低生産性問題(人々の望む財・サービスを供給する成長分野が非製造業部門において現れないこと)と互いに影響し合っている。過少消費の原因は、①公的年金制度の不備、②非正規雇用のセーフティネットの未整備、
③医療・介護制度の綻びで人々の将来不安が強まっていること。持続可能な社会保障制度を構築することによって、人々の不安を解消することが不可欠。

→日銀の2000年、2006年、2007年の金融政策転換の総括は?そして、2012年2月14日の金融政策決定についての総括は?

􀁺 日本の財政赤字が大きいのは無駄が多いからではなく、税収が圧倒的に不足しているため。「低福祉・低負担」型政府を目指すのでなければ、現在の「中福祉」と「低負担」のギャップを埋める税制改革が必要。「まずは無駄の徹底的な削減を優先」という精神は健全だが、無駄削減と税制の抜本改革を並行して進めるべき。

→税収が低いことと景気の関係についての認識は?2007年にPB黒字化まであと6兆円までだったことをどう評価?

􀁺 恒久財源を明示した持続的な社会保障制度改革を打ち出すことは、消費を刺激する最も有効な景気対策となる。消費税に関わった歴代政権の挫折から、消費税引上げは日本の政治家のトラウマになっているが、実はそれを打ち出すことが、かえって国民からの支持につながるのではないか。それとも、財源となる消費税率引上げを封印し、再び社会保障制度改革を先送りするのか。

→1996年の総選挙で自民党は消費増税を掲げて勝っています。(減税を掲げた新進党が負けました)。増税派はこの直近の例をいつも忘れますね。そして、1997年に消費増税を行い、以後、長期デフレに突入です。

􀁺 長期金利が成長率を下回る状況は、資源が有効に利用されていない状況(動学的に非効率な状況)であり、バブルを生みやすい。そうした状況であったがゆえに、これまで日本の国債価格が下落しなかった可能性もある(国債バブル?)。実際、日本では、株式・不動産バブル崩壊後、バブルが国債に転移した可能性がある(トゥールーズ経済学院のジャン・ティロール教授の「バブル代替の理論」)。

􀁺 金利と成長率の関係は一定ではないが、公的債務を管理する上では、動学的に効率的な環境(金利>成長率)を前提とすべき。バブルの生まれやすい環境を前提とした財政再建プランを立てるべきではない。この場合、PB 均衡では公債残高の対GDP 比の上昇を止めることはできない。それ故、PB 均衡は財政再建の一里塚とはなっても、掲げるべき財政再建の目標とはなり得ない。一定のPB 黒字が達成されてはじめて、公的債務残高の対GDP 比の上昇が止まる。
長期目標としては、公的債務残高の対GDP 比の安定的な低下をもたらす、例えば1~2%のPB 黒字と、その大まかな達成時期を掲げるべき。

􀁺 成長率よりも金利が低いことを前提に財政運営を行うことをハーバード大学のグレゴリー・マンキュー教授は「ディフィシット・ギャンブル」と呼んだ。歴史的に見ると、潜在成長率が高い場合や、公的債務が大きくない時には、ギャンブルに勝つ場合も少なくない(ただし、火事の確率が高くないから、火災保険に入らないようなもの)。しかし、公的債務が対GDP 比で見て大幅に拡大していることや、潜在成長率が大きく低下していることを前提にすると、日本におけるディフィシット・ギャンブルの勝率は相当に低下していると考えられる。成長率と金利に関し、保守的な前提をおいて、財政運営を行うというのが基本であろう

→下記は、小泉政権の頃の政府答弁書です。

2004年12月10日
『参議院議員大塚耕平君提出名目金利と名目成長率との関係についての政府の見解に関する質問に対する答弁書』

名目長期金利と名目経済成長率の関係については、名目長期金利の方が常に名目経済成長率を上回るとは言えないと考える。我が国の状況を国際通貨基金の国際金融統計において両者の比較が可能な千九百六十六年から二千三年までの平均でみると、名目長期金利の方が名目経済成長率を下回っている。
 名目長期金利が名目経済成長率を上回る状況においては、基礎的財政収支の赤字が持続すれば、公債等残高の名目国内総生産に対する比率が増加し続けるという意味において、いずれの国においても財政は破たんすると考えられる。また、名目長期金利が名目経済成長率を下回る状況においては、基礎的財政収支を均衡させることによって、公債等残高の名目国内総生産に対する比率の増加を防ぐことができるという意味において、財政を安定させることができると考えられる。これは、幅広く世界の専門家の間で共有されている考え方である。