2月14日の日銀の政策決定会合の議事要旨 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

2月14日の日銀の政策決定会合の議事要旨

秘書です。
2月14日のバレンタイン緩和の議事要旨です。
議事録は10年後の公開。なんで10年も時間が必要なんでしょう?

政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2012年2月13、14日開催分)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120214.pdf


FRBの長期的目標を意識、物価上昇率2%の提唱も=日銀会合議事
2012年 03月 16日 10:01 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE82F00I20120316?sp=true

[東京 16日 ロイター] 日銀が16日に発表した2月13─14日開催の金融政策決定会合の議事要旨によると、委員らは米連邦準備理事会(FRB)が1月末に事実上のインフレ目標を示したのを強く意識していたことが明らかになった。

目指すべき物価上昇率について、ある委員が、「為替相場が長期トレンドとして一方向に傾くことないよう、長期的に主要国の多くと共通の物価上昇率を目指す必要があり、それは2%である」との認識を示したという。

日銀が将来見通す物価水準として従来示してきた「中長期的な物価安定の理解」について、大方の委員は、「日銀の政策姿勢が伝わり難いとの指摘が一部にある」と指摘。委員らは、米FRBが1月末に物価安定に関する「長期的な目標」を示したことを契機に「中央銀行の物価安定に対する姿勢について関心が改めて高まっている」ことなどを踏まえて議論した。

<「理解」は受け身、「目標」「定義」は硬直的、「目安」は曖昧>

目指すべき物価上昇率について何人かの委員は、「長い目でみた場合には1%を上回る水準に高まる可能性があり、こうした可能性を踏まえた表現に変更することが考えられる」との見方を示し、複数の委員は「1─2%という表現も一案」と述べた。

日銀として目指す物価上昇率の名称について、多くの委員は従来の「理解」という言葉の語感では、「日銀が受け身的に経済物価情勢の改善を待っているかのような印象を受けがちであり、能動的に達成を目指す姿勢が伝わりづらい」との認識を示した。何人かの委員は、1)「目標」は短期的な物価の振れに対して機械的な政策運営を行う印象、2)「目標」や「定義」は固定的・硬直的な語感、3)「目安」は政策姿勢を示す上で「理解」と同様に曖昧さが残る、と意見を述べた。

委員らは、「政策運営に関する情報発信のあり方の見直しに併せて、一段の金融緩和強化策を講じることが、日銀の政策姿勢の明確化を行動で裏付け、その効果を高める観点から望ましい」と認識。複数の委員は「政策の組み合わせで、長めの金利や企業・家計等の意思決定に働きかけ、金融緩和の効果をさらに強めることが期待できる」と述べた。

また委員らはこのタイミングで金融緩和の強化策を講じることは、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとする観点からも重要と指摘。

資産買入基金の10兆円拡充による追加緩和で、日銀の長期国債の買い入れが年率換算で約40兆円と大規模なものとなることについて、何人かの委員は、「財政ファイナンスを目的としたものでないことを明確に意識し、対外的にも説明していくことが重要」との認識を示した。

日銀は同日の会合で、1)事実上のインフレ目標である中長期的な物価安定の目途という数値表現を採用、2)当面の金融政策運営に当たっては、消費者物価の前年比上昇率1%を目指し、それが見通せるようになるまで協力に金融緩和を推進していく、3)資産買入などの基金による長期国債の買い入れを10兆円拡大する──との3つの措置を採用した。

(ロイターニュース 竹本能文、宮崎大;編集 田中志保)

政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨
(2012年2月13、14日開催分)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120214.pdf




Ⅱ.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要
1.経済情勢

・・・
海外経済について、委員は、欧州債務問題や新興国・資源国にお
ける既往の金融引き締めの影響などから減速しているものの、米国
経済ではこのところ改善の動きがみられているとの認識で一致した。

先行きについて、委員は、当面、ユーロエリア経済を中心に減速が
続くものの、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで、成
長率は再び高まっていくとの見方を共有した。
ユーロエリア経済について、委員は、欧州債務問題の影響が企業
や家計のマインド悪化や金融機関の与信スタンス慎重化を通じて及
んでおり、全体として停滞色を強めているとの見方で一致した。そ
のうえで、多くの委員は、ドイツ経済については、最近、企業や家
計のマインドに改善の動きがみられている点を指摘した。先行きに
ついて、委員は、緊縮財政の継続や金融機関による資産圧縮の動き
などを背景に、当面、停滞色の強い状態が続くとの認識を共有した。
さらに、委員は、欧州債務問題の展開次第では、金融システムの不
安定化などを通じて、欧州経済ひいては世界経済全体が大きく下振
れる可能性があるため、今後とも注意深くみていく必要があるとの
認識を共有した。
米国経済の現状について、委員は、バランスシート調整の重石は
あるものの、このところ改善の動きがみられており、緩やかな回復
を続けているとの見方を共有した
。大方の委員は、最近の改善の動
きの具体例として、雇用および消費関連の指標に言及した。このう
ち何人かの委員は、企業部門の好調が家計部門へと及んでいく自律
回復のメカニズムが働きつつある可能性を指摘した。先行きについ
て、委員は、緩和的な金融環境に支えられ、緩やかな回復を続ける
との見方で一致した
何人かの委員は、回復のペースを緩やかなも
のにとどめる要因として、住宅価格の軟調な動きや財政支出削減の
強まりなどを挙げた。

新興国・資源国経済について、委員は、既往の物価上昇による実
質購買力低下や金融引き締めに加え、欧州経済の減速に伴う輸出減
少の影響などから、全体として幾分減速しているとの見方を共有し
た。複数の委員は、N I E s、A S E A N 経済は、引き続き欧州経
済減速の影響を受けているものの、タイの洪水の影響が薄れてきて
いるため、輸出は持ち直してきていると指摘した。先行きについて、
委員は、インフレ率の低下に伴い、金融政策の緩和余地が拡大する
中、家計の実質購買力の回復等により内需が堅調に推移し、再び成
長率が高まっていくとの見解で一致した。何人かの委員は、幾つか
の国でインフレ率の低下を受けて引き締めから緩和に転じている点
に言及した。
以上の海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関す
る議論が行われた。
景気の現状について、委員は、海外経済の減速や円高の影響など
から、横ばい圏内の動きとなっているものの、内需は震災復興関連
の需要もあって底堅い展開を辿っているとの見方で一致した。輸出
や生産について、委員は、海外経済の減速や円高の影響などから、
引き続き横ばい圏内の動きとなっているとの見方を共有した。ある
委員は、12 月の生産の実績が7 か月振りに前月時点の見通しを上
回ったことに触れ、生産活動の下押し圧力が和らいできているとみ
られると述べた。別のある委員は、世界的なI T 関連の在庫調整進
捗が、情報関連の輸出や生産に前向きな影響を及ぼしているとの見
方を示した。設備投資について、委員は、被災した設備の修復など
から、緩やかな増加基調にあるとの認識で一致した。何人かの委員
は、企業収益の下振れやそれが株価持ち直しを遅らせる影響に留意
する必要があると述べた。複数の委員は、企業マインドを表す指標
がやや改善していることを指摘した。個人消費について、委員は、
震災後一旦抑制された需要の復元もあって、底堅く推移していると
の認識を共有した。何人かの委員は、エコカー補助金の再導入など
により、1 月の乗用車新車登録台数が大幅に増加したことに言及し
た。委員は、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資も下げ止
まっているとの認識で一致した。この間、2011 年の貿易収支が48
年振りに赤字となったことについて、ある委員は、当面、貿易収支
は赤字で推移するものの、所得収支の黒字がこれを大きく上回ると
みられることから、経常収支の赤字化は考え難いと述べた。
景気の先行きについて、委員は、当面、横ばい圏内の動きを続け
るとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで
海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々
に強まっていくことなどから、緩やかな回復経路に復していくとの
見方を共有した
。そのうえで、委員は、欧州債務問題の今後の展開
やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き、景気の
先行きを巡る不確実性が大きいとの見解で一致した。ある委員は、
新興国における成長と物価安定の両立の不確実性が高い中、イラン
を中心とした中東情勢の不透明感についても注視していく必要があ
ると述べた。別のある委員は、わが国の経済活動が依然として低い
水準にあることに注意しなければならないと述べた。
消費者物価( 除く生鮮食品) の前年比について、委員は、概ねゼ
ロ% となっており、先行きは、当面、ゼロ% 近傍で推移するとの見
方で一致した。そのうえで、複数の委員は、食料・エネルギーを除
く消費者物価やG D P デフレータの下落が続いている点に留意する
必要があると付言した
。そのうちの一人の委員は、G D P デフレー
タと消費者物価指数の動きに乖離がみられる要因について、① 円高
局面における輸出企業の価格設定行動、② 原材料高局面における輸
入企業の価格設定行動、③ 投資財等の著しい品質向上の影響、の3
点に整理したうえで、物価情勢の判断に当たっては、消費者物価指
数を中心としつつ幅広い指標を点検することが適当であると述べた。

2.金融面の動向

委員は、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いているとの見方
で一致した。
短期金融市場について、委員は、日本銀行が強力な金融緩和を推
進していることや、金融機関のバランスシートの健全性が保たれて
いることなどを背景に、きわめて安定しているとの見方で一致した。
委員は、C P 市場では良好な発行環境が続いており、社債市場の発
行環境も総じてみれば良好な状態が続いているとの認識を共有した。
委員は、企業の資金調達コストは緩やかに低下しており、資金のア
ベイラビリティーの面でも改善傾向が続いているとの見方を共有し
た。何人かの委員は、民間部門総資金調達の前年比減少率が縮小し
てきていることについて、経済活動に関する明るい兆しとして、注
目していると述べた。この点に関して、別の一人の委員は、民間部
門総資金調達の動きについては、大幅に減少したあとだけに、水準
が依然として低いことには留意する必要があると述べた。複数の委
員は、家計や企業の短期的なインフレ予想がこのところ幾分低下し
ていることに言及した。このうちの一人の委員は、こうした動きは
インフレ率が中長期的にみて安定的な水準( アンカー) に収束して
いくペースを遅くする方向に作用するので、十分な注意が必要であ
るとの見方を示した。

Ⅲ.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

当面の金融政策運営を検討するに当たって、委員は、① 金融政策
運営に関する情報発信については、かねてから、より良いあり方を
模索する不断の検討が必要との認識が委員間で共有されてきたこと、
② そうした中、前回会合では、米国F R B において情報発信のあり
方を巡る検討が進められていることを踏まえ、何人かの委員から改
めて、「中長期的な物価安定の理解」や、それに基づく時間軸の示
し方について、検討していく必要があるとの問題提起があったこと、
③ 実際に、米国F R B が物価安定に関する「長期的な目標
( longer-run goal) 」を示したことを契機に、中央銀行の物価安
定に対する姿勢について関心が改めて高まっていること、等を踏ま
え、金融政策運営に関する情報発信のあり方について議論すること
にした。
まず、「中長期的な物価安定の理解」( 金融政策運営に当たり、
中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上
昇率)について議論が行われた。
「中長期的な物価安定の理解」の位置付けについて、大方の委員
は、日本銀行の政策姿勢が伝わり難いとの指摘が一部にあることに
触れ、日本銀行が目指すべき中長期的に持続可能な物価安定と整合
的な物価上昇率を「各政策委員の理解」として示していることが、
その一因となっているとの認識を示した。これらの委員は、概念的
定義、時間的視野、中心的指標といった、日本銀行の物価安定に関
する基本的な考え方は変わらないが、
これまで「各政策委員の理
解」として示してきた物価上昇率を全政策委員の一致した見解であ
る「日本銀行としての判断」というかたちで公表すれば、日本銀行
が目指す物価の安定をより明確にできるのではないかと述べた。こ
うした意見を踏まえて、中長期的に持続可能な物価安定と整合的な
物価上昇率として、政策委員全員で共有できる数値表現について検
討することとなった。
具体的な数値表現を検討するに当たって、何人かの委員は、従来
同様、① 物価指数の計測誤差( バイアス) 、② 物価下落と景気悪化
の悪循環への備え( のりしろ) 、③ 家計や企業が物価の安定と考え
る状態( 国民の物価観) の3 つの観点を踏まえる必要があると指摘
した。このうちの一人の委員は、財政政策の発動余地が狭まってい
ること等を踏まえると、従来より厚めののりしろを確保する必要が
あるとの見解を示した一方、その他の委員は、3 つの観点について、
昨年4 月の「中長期的な物価安定の理解」の点検時から大きな動き
はないと考えられると述べた
多くの委員は、政策姿勢を明確に示
すためには、ピンポイントの数値で示すことが望ましいが、日本経
済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が
大きいことを踏まえると、ある程度幅を持って示しておく必要性も
小さくないとの見解を示した
。何人かの委員は、現在の国民の物価
観が低めであること等を勘案し、当面は、現在「中心」として示し
ている物価上昇率1 % を目指すとしても、より長い目でみた場合に
は、目指すべき物価上昇率は1 % を上回る水準に高まる可能性があ
り、この機会を捉えて、こうした可能性を踏まえた表現に変更する
ことが考えられるとの見解を示した。このうち複数の委員は、「1
~ 2 % 」という表現も一案であると述べた。また、ある委員は、為
替相場が長期トレンドとして一方向に傾くことがないよう、長期的
には主要国の多くと共通の物価上昇率を目指す必要があり、現状、
それは「2 % 」であると述べた。別の一人の委員は、わが国が直面
している経済状況は海外主要国と異なることから、必ずしもこれら
の国と同じ水準まで目指すべきことにはならないと述べた
これに
対し、何人かの委員は、従来の「消費者物価指数の前年比で2 % 以
下のプラスの領域にあり、中心は1 % 程度」という表現を大きく変
える必要はないと考えていると述べた。こうした議論を経て、委員
は、当面、目指すべき物価上昇率は「1 % 」とし、より長い目でみ
た場合には、中長期的に目指すべき物価上昇率が変わり得ることを
踏まえ、「2 % 以下のプラスの領域にある」と幅を持って表現する
ことが適当との見解で一致した。
委員は、こうした日本銀行が目指すべき中長期的に持続可能な物
価安定と整合的な物価上昇率をどのように呼ぶかについても、併せ
て議論を行った。多くの委員は、これまでの「理解」という言葉の
語感からは、日本銀行が受け身的に経済物価情勢の改善を待ってい
るかのような印象を受けがちであり、能動的に達成を目指す姿勢が
伝わりづらいとの認識を示した。また、何人かの委員は、① 「目
標」は、一定の物価上昇率を維持するために、短期的な物価の振れ
に対して機械的な政策運営を行う印象を与えがちである、② 「目
標」や「定義」は、固定的・硬直的な語感があり、日本経済の構造
変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きい状
況下では相応しくない、③ 「目安」は、政策姿勢を示していく上で
は「理解」と同様、曖昧さが残る、と述べた
。こうした議論を経て、
委員は、上述の中長期的に持続可能な物価安定と整合的な物価上昇
率について、「中長期的な物価安定の目途」と呼ぶことが適当との
見解で一致し、その英語表現については「The price stability
goal in the medium to long term」とすることが相応しいとの認
識を共有した。

次に、「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸政策につい
て、議論が行われた。
委員は、「中長期的な物価安定の目途」の導入と併せて、「日本
銀行は、『中長期的な物価安定の理解』に基づき、物価の安定が展
望できる情勢になったと判断するまで、」という時間軸の表現につ
いても見直すことにより、政策姿勢の明確化を図ることが望ましい
との考え方を共有した。そのうえで、委員は、「当面、消費者物価
の前年比上昇率1 % を目指して、それが見通せるようになるまで」
というかたちで、先行きの政策運営に関する条件をより明確化する
ことが適当との見解で一致した。同時に、実質的なゼロ金利政策以
外に実際に行ってきている政策措置も念頭に置きつつ、時間軸政策
の対象となる政策運営に関する記述を「実質ゼロ金利政策を継続し
ていく」から「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置
により、強力に金融緩和を推進していく」に置き換える方が、より
正確かつ能動的な表現となり、日本銀行の政策姿勢が伝わり易くな
るとの見解で一致した。何人かの委員は、見直し後の表現であれば、
日本銀行として、今後も必要に応じて追加的な手段を講じていく姿
勢にあることがより分かり易いとコメントした。このうちの一人の
委員は、こうした見直しにより、時間軸政策の効果は強化されるこ
とになると述べた。また、別のある委員は、時間軸政策の継続期間
について、特定の時期で示す方法や、特定の指標等の公表値と紐付
ける方法と比較して、現在日本銀行が採用している、経済物価情勢
に関する政策当局の予想と紐付ける方法は、先行きの金融政策に関
する期待の安定化を図るとともに、政策の信頼性を維持する観点か
ら望ましいとの見方を示した。複数の委員は、今後の金融政策運営
に当たっても、これまで同様、金融面での不均衡の蓄積を含めたリ
スク要因を点検し、わが国経済の持続的な成長を確保する観点から、
問題が生じていないことを確認していくことが重要であり、このこ
とについて、適切な情報発信に努めていく必要があると述べた。
委員は、こうした政策運営に関する情報発信のあり方の見直しに
併せて、一段の金融緩和強化策を講じることが、日本銀行の政策姿
勢の明確化を行動で裏付け、その効果を高める観点から望ましいと
いう認識を共有した。複数の委員は、こうした政策の組み合わせに
より、長めの金利や企業・家計等の意思決定に働きかけ、金融緩和
の効果をさらに強めることが期待できると述べた。また、委員は、
このタイミングで金融緩和の強化策を講じることは、先行きの内外
経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動き
を金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路
への復帰をより確実なものとする観点からも重要であるという考え
方を共有した。こうした認識や考え方を踏まえて、具体的な金融緩
和強化策についての議論が行われた。
まず、資産買入等の基金について、大方の委員は、日本銀行の政
策姿勢の明確化を行動で裏付ける観点から、10 兆円程度という思い
切った規模の増額を行うことが適当との見解を示した。これらの委
員は、買入れの対象については、現在の金融環境等を勘案すると、
長期国債とすることが適当との認識を共有した。このうち複数の委
員は、本年末までに増額を完了することが適当と述べた。何人かの
委員は、今回10 兆円程度の増額を行うとすると、趨勢的な銀行券
需要見合いの買入れと合わせ、日本銀行による長期国債の買入れ全
体としてみると、年率換算で約40 兆円という大規模なものとなる
ことに言及し、こうした買入れが財政ファイナンスを目的としたも
のでないことを明確に意識し、対外的にも説明していくことが重要
との見解を示した。何人かの委員は、わが国経済のデフレからの脱
却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されて
いくものであり、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれ
の役割に即して取り組みを続けていくことが重要であるとの見解を
述べた。
次に、委員は、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針に
ついて、「無担保コールレート( オーバーナイト物) を、0 ~
0 .1 % 程度で推移するよう促す」という現在の方針を維持するこ
とが適当であるとの見解を示した。
最後に、多くの委員は、成長基盤強化を支援するための資金供給
について、本年3 月末に貸付受付期限が到来することに言及し、そ
の延長の要否について今後検討する必要があると述べた。このうち
の何人かの委員は、わが国経済にとって成長力強化が引き続き大き
な課題であることを踏まえると、期限を延長する方向で検討し、そ
の際、制度設計に一段の工夫が可能かどうかも併せて検討すること
が適当との見解を示した。何人かの委員は、被災地金融機関を支援
するための資金供給オペレーションについても同様に、本年4 月末
の貸付受付期限到来前に延長の要否について検討する必要があると
述べた。これらの発言を受けて、次回の金融政策決定会合において、
成長基盤強化を支援するための資金供給の延長の要否等について、
執行部より検討内容を報告することとなった。この間、委員は、欧
州債務問題がわが国の金融市場ひいては金融システムの安定を脅か
すことのないよう、万全を期していくことを改めて確認した。そう
した観点から、ある委員は、米ドル資金供給オペレーションについ
て、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張が和らいでいるこ
とから、オペ需要は一頃に比べて弱まっているが、ドル資金の調達
環境が再び変調するリスクに備えて、今後も定期的にオペを実施し、
市場の安定確保に努めていくことが重要と述べた。

Ⅳ.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
 わが国経済をみると、昨日公表された平成23 年10~12 月期の実
質GDP成長率は、マイナスとなった。先行きについてみると、
緩やかな持ち直しが続くとみられるものの、欧州の政府債務危機
に端を発する金融システムへの懸念や金融資本市場への影響等に
よる海外景気の下振れ、長引く円高等により、わが国の景気が下
押しされる重大なリスクが存在し、政府として大変懸念している。
 2月8日、平成23 年度第4次補正予算が成立した。引き続き、
平成24 年度予算の速やかな成立に向けて、全力で取り組んでいく。
また、政府としては、1月6日に決定した「社会保障・税一体改
革素案」に沿って、引き続き年度内に消費税法の改正を含む税制
抜本改革の関連法案を国会に提出することをはじめ、改革に取り
組むことにより、社会保障の安定財源確保と財政健全化を同時達
成すべく取り組んでいる。
 デフレ脱却に向け、政府・日銀が一体となって今後の経済運営に
万全を期すことが重要である。本日、基金を10 兆円増額するとと
もに、「中長期的な物価安定の目途」を導入し、当面、物価上昇
率1%を目指すことについて議論が行われたことは、時宜を捉え
た積極的な対応として評価する。日本銀行におかれては、今後と
も政府との緊密な情報交換・連携のもと、適切かつ果断な金融政
策運営に取り組んで頂くようお願いしたい。
また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。
 わが国は慢性的なデフレから抜け出せない状況が続いている。
フレの背景には、需給ギャップや、企業のわが国経済への成長期
待の低下、民間部門のデフレ期待の定着があると考えられる
。社
会保障・税一体改革の円滑な推進のためにも、10 年以上の課題で
あるデフレ脱却に、政府と日本銀行が一丸となって今まで以上に
断固とした姿勢で取り組むべきと改めて申し上げる。
 デフレ脱却に向け、政府は累次の補正予算を通じた拡張的な財政
政策により、需給ギャップの縮小に努めている。また、潜在成長
率を高め民間の投資意欲を引き出す観点から、新成長戦略の実行
加速や日本再生の基本戦略の具体化を通じ成長力強化に取り組む。
 日本銀行には、こうした政府の取り組みと歩調を合わせ、デフレ
脱却に向けた取り組みの結果を出すべく、金融政策面からの最大
限の努力をお願いする。1月25 日には、FRBが長期的なインフ
レ率の目標を、個人消費支出デフレータで前年比+2%と設定し
た。これは、金融政策運営の透明性を強化し、金融緩和を継続す
るとのコミットメントと併せ、市場の期待に働きかけるものと考
える。
 本日、新しい施策のご提示があった。これは、金融政策運営の透
明性の向上と説明責任の強化という世界的な潮流を踏まえた適切
なものと考える。今後とも透明性の向上に向けた不断の努力をお
願いする。