【郵便局ネットワークの維持】簡易郵便局閉鎖の原因は何か?そして総合担務の取り組みは? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

【郵便局ネットワークの維持】簡易郵便局閉鎖の原因は何か?そして総合担務の取り組みは?

秘書です。
簡易郵便局閉鎖の原因は何か?



郵政民営化の進捗状況についての総合的な見直しに関する郵政民営化委員会の意見の報告
平成24 年3月 郵政民営化委員会
http://www.yuseimineika.go.jp/iinkai/iken/iken_120307.pdf

3 具体的な意見

(1) 国民利便の向上

① 郵便局ネットワーク及びサービスの水準の維持

(簡易郵便局の一時閉鎖の問題の改善状況)

前回報告書で議論となったのは、民営化直後に、郵便局の総数はほとんど変
わらないあるいは若干の増加傾向を示していたにもかかわらず、日本郵政グル
ープから委託を受けて業務を行う簡易郵便局の一時閉鎖が、20 年3 月には438
局まで急増したことである
(図表1)。これは、個人受託者の高齢化、受託先の
農協・漁協の支所の廃止等によるもののほか、これまで看過されてきたコンプ
ライアンス面の不備を民営化に伴い適正化を図ったことで受託者にとっての業
務の煩雑さが増したことなどがその原因であった。しかし、日本郵政グループ
が、委託手数料の引上げ、受託者の初期投資を軽減するための施設転貸制度の
創設、サポート体制の改善などの対策を講じた後は、一時閉鎖局数は、23 年9
月には239 局まで着実に減少し現在に至っていることから、これらの取組みは
一定の成果が見られたと評価できる。更に、簡易郵便局の営業再開が早期に見
込まれない地域において、渉外社員による出張サービス、暫定分室によるサー
ビス、移動郵便局によるサービスといった代替サービスの提供を強化している


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(少子高齢化時代における必要なサービス網への考察)


郵便事業がユニバーサルサービスとして全国に郵便物を運ぶという行為はこ
れからも変わるものでないが、その一方で、地方においては、委託先の農協や
漁協の統廃合や個人商店の高齢化という問題はこれからも続く問題であり、簡
易郵便局ネットワークを維持するためには、効率的かつ安定的な運営が必要で
ある
。このため、過疎地においては、創意工夫に基づくコスト削減のための内
部改革等により郵便局を維持しつつ、都市部においては、郵便局の再配置等を
通じたネットワークの効率化を推進していくことを検討すべきである。また、
既存サービスの充実や新規業務の実施等により、郵便局の持つ集客力を向上さ
せる努力も必要である。
しかし、少子高齢化がさらに厳しくなると、過疎地や離島では、郵便局の有
無だけの問題だけでなく行政サービスのあり方そのものが問われる。この場合、
地元の自治体や地域住民や地域金融機関などが一体となり、住民サービスの提
供の仕組みをあらかじめ検討しておくことが重要である。23 年8 月時点で民間
金融機関の拠点が存在しないのはわずか23 町村であり、コンビニも含めたATM
網を含めると全国にあまねく展開されている。生命保険協会によると、10 万を
超える生命保険会社の拠点・代理店と100 万名を超える募集人が全国を網羅し
ている。このような民間金融機関の力を有効に活用することが今後の少子高齢
化時代における過疎地や離島の住民サービスの提供には必要であろう
。いずれ
にしても、少子高齢化時代において、郵便物を運ぶというユニバーサルサービ
スの実現手段としては、必ずしも現在の郵便局数の維持を意味しない。郵政民
営化においては、これらの問題を総合的に解決するための資金として、社会・
地域貢献基金を積み立てることが定められている。この基金は、郵便事業会社
の社会貢献業務または郵便局会社の地域貢献業務の実施を担保するために、毎
事業年度の利益金額の一部から積み立てられるもので、2兆円規模の基金が想
定されている(注1)。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を売却した際の収入もその
一部であることを考えると、その観点からも、一刻も早い金融2 社の完全民営
化が望まれる


(総合担務に向けた取組状況)

民営化後、郵便事業会社の集配社員による金融サービスの取扱いがなくなり、
利用者から不便になったとの批判に対しては、前回意見書でも、必要な許認可
等を得た上で、郵便局会社が郵便サービスを提供する方法、郵便事業会社が金
融サービスを提供する方法等様々な方策があり得る」など、現在の郵政民営化
法の枠内でもある程度の対応は可能である旨示した。日本郵政グループは、郵
便集配社員による連絡メモの取次ぎや訪問金融サービスといった工夫により対
応した。これらの取組みは着実な効果を上げており、委員会として相当な評価
を行うものではあるが、総合担務への取組み、すなわち、郵便局会社による郵
便サービスの提供や郵便事業会社による金融サービスを提供するために必要な
許認可を得る
という点においては、十分な取組みがいまだなされたとは言えな
い。総合担務の問題はこれらの許認可を得ることで解決できる問題であり、国
民にとっての利便を向上させるためにも、許認可に必要な情報管理の仕組みや
コンプライアンス態勢を整える等の早急な取組みを求める
。東日本大震災後の
被災者支援の対応においても、もし事前に十分な取組みがなされ、総合担務に
係る許認可を得ていたならば、更なる柔軟な対応も可能であったことを考える
と残念といえよう。


(サービス水準とコンプライアンス態勢の状況)

21 年12 月、郵便局において複数の横領事件があったことから、総務省と関東
財務局は郵便局会社に対して、金融庁はゆうちょ銀行とかんぽ生命に対して業
務改善命令を発出した。これを受け、日本郵政グループ各社は、業務改善計画
を策定し、コンプライアンス態勢の整備に注力している。コンプライアンス違
反件数の推移をみると、部内者犯罪容疑件数は減少傾向にあるものの、顧客情
報漏えい件数は増加している。これは、社内のルールの強化に伴って一時的に
件数が増えるという側面もあるとはいえ、引き続きコンプライアンス態勢の強
化を進める必要がある。
今後、完全民営化を前提として、郵便局で取り扱い可能となる新商品・新サ
ービスの拡大やゆうちょやかんぽ生命の限度額の引き上げや解除を考えた場合、
顧客保護管理体制等に求められるコンプライアンス水準が高くなることを認識
しておかなければならない
。前述の部内者犯罪容疑、顧客情報漏えいの防止と
いった観点での対応のみならず、例えば、告知書契約であるかんぽ生命の限度
額が引き上げられるということであれば、民間保険会社が概ね1000 万円超の契
約に際し導入している告知書以外の契約(医師の診査等が必要な契約)実施と
いう実情(注2)を踏まえた高い水準の保険引受管理態勢の構築等が求められる。
尚、後述するように、現経営陣は、郵便局職員の手元が映る形で設置されて
いた内部犯罪防止用の監視カメラを、32 億円の費用をかけ、出入口を映す部外
犯罪対策用に切り替えたが、この点については、コンプライアンス態勢の後退
につながるとの批判がある


② 多様なメニューのサービスの提供

(新規業務の取組状況と収益への貢献状況)

日本郵政グループ各社の新規業務については、郵便事業会社は貨物分野にお
ける国際物流、郵便局会社は金融新規商品(自動車保険、第三分野保険)の提
供、コンビニエンスストア型物販店舗の展開、総合生活取次ぎサービス、カタ
ログ販売事業等、ゆうちょ銀行はクレジットカード業務、住宅ローン等の媒介
業務、変額年金保険の代理店販売、かんぽ生命保険は他の生命保険会社の法人
向け商品の受託販売、入院特約の見直しなど各社とも段階的に事業の拡大を図
っているが、総じて収益への貢献度は依然として低い状況にあり、これらのサ
ービスの業容拡大が期待される。
今後の課題の一つは、重要な収益源となり得る金融新規商品(変額年金保険、
第三分野保険、法人向け生命保険、自動車保険)の取扱局が限られているとい
う問題の克服である。現在、郵便局会社は取扱局の見直しを進めているが、日
本郵政が過去3 回実施した顧客満足度調査においても、新商品・サービスにつ
いて「期待する」と回答した利用者が7割を超えていることも踏まえ、今後、
より多くの利用者のニーズへの対応および利便性の向上を踏まえた取組みが望
まれる。