【郵政改悪粉砕!】平成24年3月郵政民営化委員会意見書を徹底的に学習しよう! | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

【郵政改悪粉砕!】平成24年3月郵政民営化委員会意見書を徹底的に学習しよう!

秘書です。
さあ、いよいよ、郵政民営化の攻防戦が始まります。

郵政民営化法(平成17 年法律第97 号)第19 条第1項第1号に基づく、郵政民営化の進捗状況についての総合的な見直しに関する郵政民営化委員会(田中直毅委員長)の意見書を学習しましょう。


郵政民営化の進捗状況についての総合的な見直しに関する郵政民営化委員会の意見の報告
平成24 年3月 郵政民営化委員会
http://www.yuseimineika.go.jp/iinkai/iken/iken_120307.pdf

まえがき

(郵政民営化に向けて)

(日本郵政グループの発足と前回の郵政民営化委員会意見書)

(21年4月以降の国際金融市場の動向とその他の社会経済情勢の変化)

(郵政民営化の進捗状況の検証)

郵政民営化の基本方針では、実現すべき国民の利益を次のように述べている。

・ 国民にとっての利便性を最大限に向上させる。
・「見えない国民負担」が最小化され、資源を国民経済的な観点に基づき活用
する。
・公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化に
つなげる。

今回、郵政民営化の進捗状況の検証するにあたっては、これらの国民利益の
実現を目指すべく、以下の3つの視点からの掘り下げを行う。

①国民利便の向上
②事業価値の向上と健全経営の確立
③民間秩序への整合的一体化


1 国際金融市場の動向その他内外の社会情勢の変化

(1) 国際金融市場の動向

(2)社会情勢の変化

(ITの国民への浸透)
モバイル性や操作性に優れたITツールが国民生活にますます浸透している。
23年の携帯電話新規販売ではスマートフォンが従来型の携帯電話を凌駕した。
またタブレットの普及も著しい。一方、SNS(ソーシャルネットワーキングサー
ビス)も国民に広く認知され、コミュニケーションのあり方も変化しつつある。
このような流れは今後も加速すると見られ、紙媒体を基本とする郵便物量に与
える影響は今後も続く。郵便物量は13年をピークにその後減少傾向を続けてお
り、日本郵政グループもこれに対する対応を続けているところである。しかし、
IT化という社会構造的な流れは今後も変わらないことやIT化に乗り遅れた企業
が倒産に至った事例は枚挙に暇がないことを踏まえ、郵便事業においては、IT
化への流れに対する対応とともに、高コスト構造脱却に向けた取組みが一段と
求められる。

(かんぽの宿の売却問題)
かんぽの宿については、郵政公社時代から赤字が続いていた施設は数ヶ所一
括して売却しており、現行法では民営化後5 年以内に残りの施設を譲渡または
廃止すると定められているものである。民営化後の19 年12 月に売却方針を公
表し、その1年後に入札でオリックス不動産への一括譲渡を正式に発表した。
これに対し、21 年1 月に当時の鳩山邦夫総務大臣から、この取引は国民の財産
を不当に安く売却するものである、譲渡先決定に至る手続きが不透明である、
などを理由として異議が表明され、結局、オリックス不動産との契約は解約さ
れることになった。同年4 月、総務省はこのかんぽの宿の売却手続き面に問題
があったとして業務改善命令を発出。日本郵政は「不動産売却等に関する第三
者検討委員会」を設置し、指摘された手続き上の不備にかかわる検討を踏まえ
て、保有不動産の売却等についての基本的な考え方やルールを整理した。同年5
月に、民主党、国民新党、社会民主党の国会議員12 名は連名で日本郵政グルー
プの西川善文前社長らを特別背任未遂の罪で告発したが、23 年3 月に東京地検
特捜部は「譲渡期限がある中、職員を安定雇用する条件での事業譲渡であり、
損害を与える目的は認められない」すなわち「嫌疑なし」とし、不起訴処分と
した。尚、21 年12 月に凍結法が成立したことにより、かんぽの宿の売却はスト
ップしたままである。

(東京中央郵便局(現JP タワー)の建替え・再開発計画)

(JP エクスプレス事業の不認可とその後の郵便事業会社への統合)

(民営化の基本的な考え方に影響を与えた事象)

(23年3月11日東日本大震災の発生)

2 基本的な考え方-郵政民営化の進捗状況を検証する視点-

(1) 国民利便の向上

(2) 事業価値の向上と健全経営の確立

(3) 民間秩序への整合的一体化

3 具体的な意見

(1) 国民利便の向上

(2) 事業価値の向上と健全経営の確立

①日本郵政
・・・
(かんぽの宿等)
かんぽの宿等を含む宿泊事業は、20年度52億円、21年度32億円、22年度32億
円と毎年赤字を続けており、23年上期もその傾向は変わらない
(図表6)。
20年12月にかんぽの宿等のオリックス不動産への一括譲渡が発表されたが、
21年1月には鳩山邦夫総務大臣(当時)が異議を表明し、契約を解約するに至っ
ている。
その後不動産売却等に関する第三者検討委員会が設置され、同委員会から売
却に関する手続き上の問題の指摘を受けるに至り、現在では凍結法によりかん
ぽの宿等は売却できない状態にある。
日本郵政グループは、総務省の要請を受けて、かんぽの宿に関する収益改善
計画を策定し、これに沿った形で諸策が講じられている。具体的には、メンバ
ーズカード会員サービスの充実やインターネット予約の拡大による収益向上、
顧客満足度の向上、人件費及び物件費のコスト削減を進め、さらに、飲食・売
店等の委託部門の直営化等を推進することで黒字化を目指している。しかしな
がら、その成果は未だ見られない状況で、21年2月の譲渡中止からの3年間で約
90億円もの損失を出す結果となった

赤字事業の黒字化は企業にとって重要課題ではあるものの、本業に資源を集
中するという視点からは、売却の可能性を検討することも必要である
。また、
売却となった場合には買い手がその飲食部門等を必要としないケースもあり得
ることから、売却検討も視野に入れるならば、飲食・売店等の委託部門の直営
化などという業務改善策の講じ方については慎重になる必要があるとの意見も
当然ありうる。
手続きの透明性に十分配慮して、国民に疑義が生じないようにするという前
提に立った上であれば、本業以外の赤字事業の売却は否定されるものではない。
また、手続きの効率性、円滑な事業譲渡という観点からは、一括売却も選択肢
の一つとなり得るものである

・・・
(病院事業)
現在全国14の病院を保有しているが、20年度から22年度までの3年間、毎年50
億円を超える赤字を計上している(図表6)。日本郵政へのヒアリングによると、
現段階で病院事業の売却は検討しておらず、地域や労働組合との話し合いを行
いながら収益の改善を図っていく方針であるとのことであった。日本郵政グル
ープにとって本業でない病院事業の経営改善は困難が伴うものではあるが、か
んぽの宿等以上の赤字を計上している現状に鑑み、売却や提携といった方法も
視野に入れつつ、早急な解決が求められる。
・・・
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②郵便事業会社

③郵便局会社

④ゆうちょ銀行・かんぽ生命

ゆうちょ銀行、かんぽ生命ともに、経常収益はやや減少傾向を示すものの、
経常利益、当期純利益ともに毎期拡大を続けている(図表14)。ゆうちょ残高や
かんぽ生命保有残高の逓減傾向が続く中、その限度額引上げを求める声もある
が、完全民営化に至るまでの移行期間における限度額引上げは、新商品・新サ
ービスの開発や既存商品の見直しと同じく、民間秩序への整合的一体化という
もうひとつの課題との関連で考察されるべきものであり、安易な限度額引上げ
に頼らない経営体質が期待される。今後、株式を上場して投資家の信認を得る
ためにも、これまで維持してきた健全性を基礎とし、培ってきた技術やノウハ
ウ、顧客基盤等を活かした新商品の開発や既存商品の見直し、厳格な内部管理
体制の整備、業務改善を通じた費用の削減等を着実に実施し、収益性と成長性
を高める努力が必要である。
資産運用面では、例えば、ゆうちょ銀行では、22 年度は総資産に占める日本
国債への依存度を75.7 パーセントに減らし(図表16)、社債や外国債券などを
増やしつつあるものの、国債の比重は依然として高い水準であり、今後も一層
の運用ポートフォリオの多様化を図ることが重要な課題である。完全民営化を
前提とした貸出業務への本格進出に備え、今後も貸出ノウハウを蓄積していく
ことが求められる。
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の代理店である郵便局で横領事件が続発し、金
融庁から業務改善命令を受けた。このような不祥事を根絶するためにも、ゆう
ちょ銀行及びかんぽ生命は、郵便局会社への強い指導力を発揮することが求め
られる。ゆうちょ銀行またかんぽ生命が新商品・新サービスを今後展開する上
で、郵便局のコンプライアンス態勢の更なる整備・強化は不可欠である。

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(3) 民間秩序への整合的一体化

当委員会では、移行期間における金融2社の業務に関する新商品・サービスに
ついて、完全民営化を前提として、民間とのイコールフッティングを確保しな
がら段階的に緩和する方向で判断してきた
しかし、現在のように株式売却の
凍結の状況のまま、完全民営化に至る筋道が成り立たない状況下では、新規の
商品・サービスを認める根拠は消滅した

完全民営化が前提という原則は、ゆうちょの預入限度額またはかんぽの加入
限度額の引上げの可否を判断するうえでも適用されるべきものであり、これま
での当委員会の判断基準を踏まえつつ、完全民営化を前提として、民間とのイ
コールフッティングの確保の観点が尊重
されるべきである。
なお、現在継続審議扱いとなっている郵政改革法案に対する関係業界の意見
は概ね次の通りであった(22年10月8日第60回郵政民営化委員会)。

(全国銀行協会)
○ 郵便貯金事業の規模縮小(現行の預入限度額を維持もしくは引下げ)
○ 郵便貯金事業の経営形態について、官/民の区分の明確化(一定の政府関与
を残存させる場合は、郵政改革法等において「小額貯蓄手段の提供」「民業
補完」を明記し、官業としての目的・位置づけを明確に規定すべき)

○ 金融分野におけるユニバーサルサービスの必要性の検討(社会的要請の強度
と社会的負担の大きさを十分考慮の上で、公的関与のあり方を含め慎重に検
討すべき)
○ 三事業の分離・独立/リスク遮断措置(預金者保護等の観点から、郵政三事
業が一体的に運営される場合は、引き続き、郵便貯金事業は他の事業から厳
格に分離・独立させる等、三事業間の適切なリスク遮断が担保される仕組み
が必要)

○ ガバナンスに関する体制整備(民間金融機関と同等の監督・検査を維持、内
部管理・コンプライアンス態勢の更なる充実・強化)


(生命保険協会)
郵政改革関連法案等は、民間生保とかんぽ生命の間の「公正な競争条件の確
保」の観点から、次の点について懸念があり、その懸念点が解消されるまでの
間、かんぽ生命の加入限度額の引上げや業務範囲の拡大等については容認でき
ない。

○ かんぽ生命に(間接的な)政府出資が継続する点
○ かんぽ生命の業務拡大について、主務大臣への「届出」事項とされ、届出違
反の場合にも主務大臣による「勧告」とされる等、現在より実質的に緩和さ
れている点
○ 政府の議決権が1/2以下となった段階で、業務内容の「届出」並びに主務大
臣の「勧告」及び郵政改革推進委員会の調査審議等が不要となる点
○ 保険のユニバーサルサービスが義務付けられている点


(在日米国商工会議所/在日欧州(連合)商工会議所)
郵政改革法案はWTO協定を遵守していない。
○ 国際通商協定である「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」のもとで
日本に要請される「内国民待遇」原則を遵守する義務に沿う形で改革を行う
べきであるが、現改革案にはその視点が反映されていない。日本政府が「内
国民待遇」原則に違反をするということは、今後、他国が様々な業界で「内
国民待遇」違反をした場合に、それに効果的に対抗することを難しくし、ひ
いては国際社会の中での日本の立ち位置を弱くする。
○ 対等な競争条件が確保される前に金融2社に対して新規業務を認める郵政改
革法案は、「内国民待遇」の原則を定めるGATSの第17条第1項の規定を遵守
していない

○ WTO協定では実質的な競争条件の対等化を求めているが、郵政改革法案の内
容は形式的にも実質的にも競争条件が対等ではない

<不公平な競争条件の一例>
1) 永続的に続く政府出資と支配並びに政府が拒否権を持つ不完全な市場
規律の適用
2) 保険業法上の所要の措置
3) 金融庁と総務省との共同監督
4) 金融検査の一部緩和
5) 旧勘定からの利益移転
6) 郵便局アクセスに関するグループ金融2社への有利な対応
7) 代理店手数料に係る消費税や保険証券に係る印紙税の減免 など

4 まとめ

今回の総合的な見直しに当たり、凍結法、郵政改革法案など、民営化の基本
的な考え方や民営化プロセスに揺らぎを生じさせる事象が発生したことが、当
該期間中の一つの特徴であった。23年11月のTPP交渉参加に向けて関係国との協
議に入る旨の表明は、この揺らぎにかわっていえば、わが国にとっての試金石
ともいえよう。こうした状況を踏まえ、当委員会の民営化の基本的な考え方に
対する見解を次の通り整理する。

(凍結法の早期解除) 

21年12月に成立した凍結法が、新商品・新サービスの認可やかんぽの宿の売
却に直接的な影響を与えたことはこれまで見たとおりであるが、日本郵政グル
ープの経営への影響で最も深刻であったのは、“株式上場という錦の御旗”(目
標)が見えなくなり、社内の経営効率化やコンプライアンス態勢整備に関する
意欲の減退につながったのではないかという点である
。民営化の狙いの一つで
ある高コスト体質からの脱却のためには徹底した経営効率の改善が求められる。
また、民間と競争していく上では民間と同等のコンプライアンス態勢が求めら
れるため、経営陣は社員の意欲にきめ細かく留意しつつ、経営の工程表づくり
とその管理に注力する。しかし、凍結法は、経営陣からそうした錦旗を奪って
しまったのではないかとの疑念を禁じえない。これにより、経営のより一層の
効率化はもとより、それまで順調に進められてきた株式上場準備の一部が等閑
視されるに至り、上場に向けて期待されるガバナンスの改善やコンプライアン
ス体制の構築等の高度な内部態勢整備への取組意欲がそがれた可能性を否定で
きない
。復興財源への充当を図るために凍結法の解除が論じられているが、そ
うした観点からだけでなく、日本郵政グループの経営陣や社員の意欲にまで影
響している可能性があることを踏まえ、委員会の総意として、一刻も早く凍結
法が解除されることを求めて止まない。
凍結法により、かんぽの宿の売却も不可能となっているが、すでに述べたよ
うに、21年2月の売却中止からの3年間で約90億円もの損失を出していることを
考えれば、売却も視野に入れた再生計画が立てられるようにするためにも、早
急な凍結法の解除が必要である


(民営化の基本的な考え方の整理)

(a)金融2 社への政府出資

ゆうちょやかんぽは、元々、小額貯金や小口保険を広く国民に浸透させるこ
とを目的としてスタートしたにもかかわらず、その後も拡大を続け、国営であ
りながら他国で類のない世界有数の金融機関に成長し、民間の経済活性化を妨
げるという問題が生じた。この経緯を踏まえ、郵政民営化関連法では、金融2
社は29 年9 月末までに完全民営化すなわち株式の全てを売却し、完全な民有民
営形態に移行することが予定されている。金融2社に対する政府の出資をなく
すことで他の民間金融機関との競争条件を同一とし、他の民間金融機関と同等
の商品・サービスを提供することができ、金融代理店契約を通じて国民は郵便
局で民間金融機関並みの商品・サービスを受けることも可能な状態となる。こ
の状態が郵政民営化関連法の基本方針で述べられている実現すべき国民の利益
の一形態であると認識する。一方、完全民営化ではなく、最終形として直接的
または間接的に政府の株式保有が残るのであれば、WTO 協定遵守の観点から、金
融2 社の業務は小額貯金や小口保険という当初の目的に限定されるべきもので
あり、民間金融機関並みの幅広いサービスが認められると位置づけられるべき
ではない。この点は、全国銀行協会、生命保険協会、米通商代表部(USTR)や
EU からも指摘されており、TPP 交渉においても同様な要求があることは容易に
想像できる


(b)持株会社のあり方

銀行法及び保険業法によれば、銀行持株会社及び保険持株会社は、事業を営
まない純粋持株会社であることが要求されている。これは、仮に持株会社が事
業会社を兼ねることを認めると、持株会社の事業リスクが金融業務に悪影響を
及ぼすおそれがあると同時に、持株会社の事業のために子会社である金融機関
の信用を利用する(いわゆる機関銀行化等が生ずる)リスクがあるからである。
したがって、日本郵政株式会社に郵便事業等を営ませるというアイディアに関
していえば、子会社である金融2 社が事業リスクを遮断できなくなるため認め
られるものではない。現実に、郵便局会社の収入の多くが金融2 社からの手数
料収入に依存している現状や郵便事業会社の近時の経営状態を踏まえると、こ
れらの事業会社が持株会社を兼ねることは、世界最大級の金融2 社へのリスク
遮断について大いなる疑問が生ずる。なによりも、世界第2 位の金融経済大国
である日本がグローバルな金融ビジネスの常識から外れることになる。このこ
とは日本の資本市場の位置づけに関して国際基準に合致しないとの認識を生み
出すことになりかねず、国際的な資産運用市場から日本が自らの意思により撤
収することにもつながりかねないほどの問題である

尚、金融2 社を事業会社のリスクから遮断したり、事業会社のために利用さ
れるのを防ぐためには、同じ持株会社の傘下にある兄弟会社が事業を営むこと
も禁止されるべきであり、現に、銀行法や保険業法は、銀行(保険)持株会社
の子会社が事業を営むことを規制している。日本郵政グループは、金融2 社の
完全民営化が実現するまでの間、この規制の適用除外であるが、これはあくま
でも過渡期であることを前提とするものである。したがって、かかる状態が恒
常化するような事態が起こらないようにすることが、何より大切である


(c)ユニバーサルサービスの範囲

郵便事業は、郵便法第1 条に「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、
公平に提供すること」と記されているユニバーサルサービスであるが、金融事
業やゆうパック事業は、既に民間企業が全国的なサービスを提供しており、そ
の必然性はない。まして、最終形で政府資本が間接的に残る郵便局会社が提供
するサービスに限って郵便事業と金融2 事業をユニバーサルサービスとするな
らば、ゆうちょやかんぽは創業当時からの目的である小額貯金や小口保険に限
定すべきである。そうでなければ、国営当時の高コスト構造に逆戻りする懸念
や肥大化が金融市場を歪めるというおそれのみならず、他の民間企業とのイコ
ールフッティング確保上の観点から、TPP 交渉の阻害要因となる可能性もある

金融2 社の株式を国が保有することを通じて金融に関するユニバーサルサービ
スを確保するという道筋は、郵政民営化のプロセスとして必然的に生ずる問題
ではなく、一種の政策判断の結果にすぎないものと位置づけられよう。

(d)業務範囲(認可制または届出制)

移行期間において、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、民間企業とのイコールフ
ッティングが厳格に問われることから業務範囲については認可制とすべきであ
る。例えば、政府の保有割合が2 分の1 以下となった場合に届出制に移行する
という論点に関していえば、民間とのイコールフッティング確保を完全に担保
する仕組みから乖離するおそれがある。

(監督官庁等の対応)

当該期間中において、民営化の基本的な考え方に反する事象が生じたことに
関連し、監督官庁においても不自然さの残る対応が見られたことに触れておき
たい。一つ目は、保険金の支払い漏れに対する行政処分のあり方である。金融
庁が民間生命保険会社に対し業務改善命令を発出したのに対し、総務省はかん
ぽ生命に対し報告の徴求にとどめている。かんぽの宿売却については、手続き
の不備という理由で、国民資産への損失が発生していない段階で業務改善命令
を発出したのに対し、国民への多額の実害が発生し社会的な問題となった保険
支払い問題については、金融庁では業務改善命令であったのに、総務省では報
告の徴求であった点についていえば一貫性が欠如している

二つ目は、JP エクスプレスへのゆうパック事業の移管について、主に郵便業
務の収支・業務運行に与える影響が判断できないという理由で総務省は認めな
かったのに対し、JP エクスプレス事業の本体引受けについては即座に認めてい
る点である。結局、その本体引受けが現在の損益状況に多大な影響を与えてい
る事実を考えると、不自然さの残る結果であったと言われても仕方がない。
三つ目は、郵政民営化法では、委員会の事務局が設置されることが定められ
ているが、郵政改革法案が起案された時点で事務局は実質廃止状態となり、そ
のまま今日に至った点である。本来は郵政改革法案が成立した場合に、委員会
事務局の廃止という手続きがとられるべきであり、委員会をめぐる今日までの
状況は明らかに法令違反状態にあった

郵政民営化の基本方針で述べられている国民の利益を実現するには、監督官
庁の果たす役割は大きく、今後とも郵政民営化推進本部のもとでの一貫性ある
指導・監督が期されるべきである。

(復興財源への充当)

復興予算である第3 次補正予算の規模はおおよそ13 兆円で、このうち10 兆
円が増税分であり、政府が保有するNTT 株とJT 株とともに日本郵政の株式を売
却すれば、その増税予定の10 兆円の大半をまかなうことができるという議論が
盛んに行われている。日本郵政の株主資本が8.3 兆円(22 年度)であり、3 分
の1 は政府保有、残り3 分の2 が売却されるとして、PBR(株価純資産倍率)を
1として計算すると、5.5 兆円が売却収入となる。しかしながら、今の日本の株
式市場で本当にこの価格で売れるかという疑問が残る。例えば、仮に日本のメ
ガバンクを株価算定のメルクマールとした場合、PBR はおおよそ0.5~0.6(24
年1 月末現在)の範囲であり、日本郵政のPBR を0.5 とすると約2.3 兆円とな
る。無論、メガバンクとは事業内容が異なるので一概に言えないが、競合する
民間企業以上の成長戦略が見えないとPBR0.5 を上回る株価は現実的ではないと
考える。更に、社会・地域貢献基金として2 兆円規模の積み立てをすることも
考えると、郵政株売却を復興財源に充当するという話は、金融2 社をはじめ日
本郵政グループが高コスト構造から脱却し成長戦略を描けるかどうかに依存す
るものであり、現状ではその道筋にあるとは判断できないと断じざるをえない。

(総括)

今回の郵政民営化の進捗状況に関する総合的見直しは、郵政民営化法制定後2
回目のものであり、10 年間に及ぶ移行期間の最初の4 年を経過した時点でのデ
ータを基にして行ったものである。
前回意見書では、日本郵政グループ各社は、民営化に伴う当初の混乱期を脱
し、ようやく安定した業務運営が行えるようになってきたというところであり、
民間企業にふさわしい多様なメニューのサービスの提供への取組みもまだ緒に
就いたばかりであった。経営状況は徐々に改善の兆しを見せ、民間企業らしい
態勢が整いつつある面もあるが、以前から引き継いだ高コスト構造からの脱却
は並大抵のことではない、と報告した。
郵便事業会社を巡る経営環境の厳しさが持続するなか、高コスト構造からの
脱却に向けた取組みも十分とは言えず、今後の更なる経営効率化は不可欠とい
えよう。また郵政民営化に関する基本的な考え方が揺らぐ中で日本郵政グルー
プ各社は問題の解消に向けた努力をしているものの、全体としてまだ試行錯誤
の域を出ておらず、成果の十分な見極めにはもうしばらく時間が必要である。
こうした状況を踏まえ、当委員会としては、意見の取りまとめに当たり、民
営化後の実情の把握に努め、その進捗状況を客観的に確認するとともに、問題
が生じている場合には、その所在や検討の方向性をできるだけ示すよう心がけ
た。株式を上場することにより、経営の透明性を高め、民営化会社に対して株
主の目線からの市場規律を貫徹させることこそが、郵政民営化を最終的に成功
に導くものである。当委員会としては、こうした点に関心を集中させた。その
第一歩として、先に述べた凍結法の解除をわれわれは強く望むものである


□郵政民営化法(平成17年法律第97号) (抄)
http://www.yuseimineika.go.jp/iinkai/konkyo.pdf


第三章 郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会

第一節 郵政民営化推進本部
(設置)
第十条 内閣に、郵政民営化推進本部(以下「本部」という。)を置く。
第二節 郵政民営化委員会
(設置)
第十八条 本部に、郵政民営化委員会(以下「民営化委員会」という。)を置
く。
(所掌事務)
第十九条 民営化委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 三年ごとに、承継会社の経営状況及び国際金融市場の動向その他内外の社
会経済情勢の変化を勘案しつつ、郵政民営化の進捗状況について総合的な
見直しを行い、その結果に基づき、本部長に意見を述べること。
二 第三十三条第二項、第五十条第二項、第六十二条第三項、第六十三条第二
項、第七十八条第二項、第九十三条第二項、第百十二条第三項、第百十六
条第四項、第百十九条第二項、第百二十条第二項、第百四十条第二項、第
百四十四条第四項、第百四十七条第二項又は第百四十九条第二項の規定に
よりその権限に属させられた事項について、必要があると認めるときは、
本部長を通じて関係各大臣に意見を述べること。
三 前二号に掲げるもののほか、郵政民営化に関する事項について調査審議し、
その結果に基づき、本部長に意見を述べること。
四 前三号に掲げるもののほか、この法律の規定によりその権限に属させられ
た事項を処理すること。
2 民営化委員会は、この法律の規定により意見を述べたときは、遅滞なく、
その内容を公表しなければならない。
3 本部長又は関係各大臣は、第一項の規定による意見に基づき措置を講じた
ときは、その旨を民営化委員会に通知しなければならない。
(組織)
第二十条 民営化委員会は、委員五人をもって組織する。
(委員)
第二十一条 委員は、優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命
する。
2 委員は、非常勤とする。
(委員の任期)
第二十二条 委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任
者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き
続きその職務を行うものとする。
(委員長)
第二十三条 民営化委員会に委員長を置き、委員の互選によってこれを定める。
2 委員長は、会務を総理し、民営化委員会を代表する。
3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を
代理する。
(事務局)
第二十四条 民営化委員会の事務を処理させるため、民営化委員会に事務局を
置く。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置き、内閣総理大臣が任命する。
3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する

(資料の提出その他の協力の要請)
第二十五条 民営化委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認め
るときは、国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法
(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)
及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第
二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律
により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって
設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条
第十五号の規定の適用を受けるものをいう。)、郵便貯金銀行及び郵便保険会
社の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求め
ることができる。
2 民営化委員会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めると
きは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することがで
きる。
第三節 雑則
(設置期限等)
第二十六条 本部(民営化委員会を含む。次条において同じ。)は、平成二十
九年九月三十日まで置かれるものとする。
2 平成二十九年九月三十日において民営化委員会の委員である者の任期は、
第二十二条第一項の規定にかかわらず、その日に満了する。
(主任の大臣)
第二十七条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)
にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
第十三章 雑則
(政令への委任)
第百八十九条 この法律に規定するもののほか、本部及び民営化委員会に関し
必要な事項、この法律の適用がある場合における公社法その他の法令の規定
に関する必要な技術的読替え、承継会社等の設立並びに公社の解散及び業務
等の承継に関し必要な事項その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令
で定める。