日本人の物価観が低いから物価上昇率の目途2%は高すぎて1%がいいというのは正しいか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

日本人の物価観が低いから物価上昇率の目途2%は高すぎて1%がいいというのは正しいか?

秘書です。

数年前、中川秀直が物価上昇率2%が世界の常識というと、それは悪魔の手法だという批判の大合唱でした。ようやく、悪魔の手法とはデフレ容認政策だという世界の常識が日本に浸透してきて、物価上昇率2%を悪魔の手法という人はいなくなったようです。

しかし、まだその名残があります。一部の人々は、国民の物価観とずれているので2%は高すぎる、だから1%がいいと、低すぎる物価上昇率を肯定しています。

この「国民の物価観」という議論を是認すると、長期デフレに慣れた国民は、デフレに慣れているのだからデフレのままがいいよね、となりかねません。物価上昇率1%程度では景気循環で物価がマイナスになるリスクは十分にあるでしょうし、統計上の誤差の影響もあるでしょう。

ロイターによると、今日、日銀企画局長はこうしたことに関連して、以下のように語ったそうです。


円高が経済にマイナス影響与える可能性、厳しく認識=日銀企画局長
2012年 03月 5日 11:11 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE82401020120305

[東京 5日 ロイター] 日本銀行の門間一夫企画局長は5日午前の衆議院予算員会分科会で、為替円高が輸出や企業収益の減少、企業のマインド悪化を通じて日本経済にマイナスの影響を与えることがありえるという点について「非常に厳しく認識している」との見方を示した。

さらに「そうした観点から日銀としては為替相場の動向について先行きの景気物価全般の影響に照らして常に点検し、対応してきている」と語った。

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先月14日の追加金融緩和に関して、目指す物価上昇率が1%では低いのではないかとの質問には「これまでの日本の物価上昇率は、デフレといわれ始めるれる前の段階から、バブル期も含めて海外からみて一貫して低い状態にあったという事実を認識しておかなければならない」とした上で、「そうした下では物価が安定していると日本の家計や企業が考える物価上昇率は諸外国より低く、こうした国民の物価観から離れて一気に高い物価上昇率を目指そうとすると、それがかえって家計や企業の大きな不確実性になってくる可能性もあると認識している」と語った。

→いずれ、05-07年を円安バブルとみる民主党と日銀は同じ認識なのかどうかを確認しなければなりません。一体どの程度の円高を日本経済にマイナスと考えているのか。1ドル=81円でそうした危機的水準は解消されているのか。

→ところで、バブル前からの物価上昇率の推移はどうだったでしょうか。FRB方式に近い形で、食品とエネルギーを除いた物価(いわゆるコアコア)は下記のように推移しています。この物価の変動をみて、バブル以前から物価上昇率が2%から著しく乖離して低いといえるのでしょうか?(日銀の国会発言はよくみると諸外国より低いといっているだけで2%より低いとはいっていません。ですから、2%にしない理由になっていないように思いますが)


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→このグラフをみると、97年消費増税以後の長期デフレ入りが明らかであるし、2000年、2006年、2007年の金融引き締め政策がコアコアでみた物価が下落している中で強行した誤りであることが歴然としています(2000、2006、2007年の政策の誤りについての自己批判なしに、2月14日の政策を評価してほしいといわれても、その真意を確認できないので難しいですね。小さすぎて短すぎる緩和政策をすることで、ほら日本には緩和政策は効きません、というプロパガンダが将来始まるリスクは否定できません)。そして、こうした金融政策の失敗が、日本国民の低すぎる物価観を形成している。それを口実に物価上昇率目標2%を忌避するのはいかがなものでしょうか?

日銀総裁によると、日銀は物価上昇率を食料とエネルギーをいれてみているそうです。では、その総合指数と為替の変動をみてみましょう。結局、バブル以前の物価が低かった時期は円高が進んでいるときのことでしょう。円高が進行していないときには2%近傍にあったのではないか。


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→近年の為替と総合物価指数の前年同期比の乖離はエネルギー価格高騰等の原因によるのでしょう。