イランがドル以外の通貨決済をはじめたことと米国の軍事行使への言及のニュースクリップ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

イランがドル以外の通貨決済をはじめたことと米国の軍事行使への言及のニュースクリップ

秘書です。
あるマーケットウォッチャーの知人から、イランが制裁回避のために石油についてドル以外の決済をはじめたことと、米国の軍事行使への積極姿勢の言及の2つの動きを注視しておくように、単にイスラエルの単独軍事行動のリスクではなくなるかもしれない、とのアドバイスをもらいました。
ドルの基軸通貨としての信認の問題とリンケージするのか、しないのか?ニュースを振り返っておきましょう。

まず、米国がイランへの軍事行使の可能性を示したのは、下記の記事にあるように、オバマ大統領の発言は3月2日付のアトランティック誌のインタビュー、そして、米空軍参謀総長の発言は2月29日でした。


オバマ氏、イランの核阻止の決意「はったりではない」と強調
http://www.cnn.co.jp/usa/30005794.html
(CNN) オバマ米大統領は3日までに、イランの核開発を阻止するため軍事力行使も含めた「あらゆる選択肢を排除しない」との基本姿勢を改めて表明、核兵器を放棄させる決意は「決してはったりではない」と強調した。

アトランティック誌との単独会見で表明した。オバマ氏はこの中で、イランの核開発問題には恒久的な解決が必要とし、リビアや南アフリカの経験に触れながら「歴史的に見て、ある国が絶え間ない軍事介入を受けずに核兵器入手の最終放棄を決めた唯一の方途は自らがその選択肢を選んだことだった」と主張。

その上で、米国はあらゆる選択肢を手放すつもりはないとし、イランが違った方向へ歩むまで圧力をかけると述べた。ただ、イランに対する政治、外交や経済各分野での制裁の重要性にも言及した。

また、最近憶測が強まるイスラエルによるイランへの先制攻撃については慎重な見方を表明。ユダヤ人大虐殺や反ユダヤ人主義があった過去を踏まえればイスラエルのネタニヤフ首相は国家を守る重大な責任があるとの理解を示した。しかし、同首相は「近代国家の最高指導者としていかなる軍事行動も大きなコストを伴うことを認めることが大事だ」と付け加えた。

オバマ大統領はワシントンで5日、ネタニヤフ首相と首脳会談を行う予定。イランへの対応などで両首脳の間に確執があるとも報道されている。

米国防総省:イラン攻撃の選択肢を用意-空軍参謀総長
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M05SIZ6S972E01.html
  2月29日(ブルームバーグ):米国防総省の統合参謀本部では、イランとの紛争が起きた場合に同国の核施設を軍事攻撃する選択肢の用意が整っていると、シュワルツ米空軍参謀総長が明らかにした。

  シュワルツ参謀総長は29日、ワシントンで記者団に対し、「米国の実行能力は、誰も同地域に寄せ付けないものになる」と述べた。

  さらに、軍事攻撃はオバマ米政権がイラン問題に取り組む上での選択肢の一部だとし、選択肢には経済制裁や外交圧力も含まれると話した。

→では、イランとの自国通貨での決済のニュースは?

イランがインドへの輸入代金支払い開始、欧米の制裁回避へ
2012年03月02日(金)15時07分
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2012/03/67633.php
[ニューデリー 1日 ロイター] インドの政府筋や貿易関係者によると、イランは欧米の制裁を回避するため、インドの輸出業者に対しルピー建てで代金の支払いを開始した。
両国の貿易取引をめぐっては、米政府の対イラン制裁に関連して、2010年12月に一部の決済ルートが閉鎖されており、総額30億ドルの代金支払いが滞っていた。
複数の関係筋によると、イランの民間銀行バンク・パルシアンがインドのUCO銀行に口座を開設し、代金の支払いが可能になった。バンク・パルシアンは民間銀行のため、イランの国有銀行に対する制裁は適用されないという
イランのインド訪問団とインドの金融関係者が2日間にわたって協議し、合意に至った。
複数の政府筋によると、今回の決済ルートはインドからイランへの輸出代金の支払いのみに利用される。
インドは、中国に次ぐイラン産原油の輸入国。現在はトルコのハルク銀行を通じて輸入代金を決済しているが、このルートが新たな制裁対象となる可能性があるため、全体の45%をルピー建てで決済し、インドからイランへの輸出を増やすことで合意している。インドの原油輸入業者は現在、税務上の問題が解決するのを待っている段階という。
インドは国連の対イラン制裁は順守しているが、米欧が新たに導入した金融制裁への協力は拒否している。

【NewsBrief】イラン・中国の緊張高まる 鉄鉱石の支払い延滞で
2012年 3月 1日 20:10 JST
http://jp.wsj.com/World/China/node_401337
 【北京】イランの鉄鉱石輸出業者らによると、中国の一部の鉄鉱石輸入業者が支払いを延滞している。昨年末に中国当局がイランの輸出業者の取引慣行を非難したことが理由だという。
 イランと中国の政治的関係は、2国間の原油やテクノロジー分野での取引においても問題が浮上するなか、ここ数カ月で緊張感が高まっている。
 中国商務部は昨年12月、中国企業がイランでの操業に問題を抱えているとし、特に鉄鉱石輸入業者がイランの輸出業者の詐欺や不正といった「いかさまの取引慣行」の犠牲になっていると警告した。

イランは貿易相手国から金での支払いを受け入れへ-国営イラン通信
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M04EQO6K50XU01.html
  2月28日(ブルームバーグ):イラン中央銀行のバフマニ総裁は国営イラン通信(IRNA)を通じて、イランがドルと他の通貨に加えて、貿易相手国から金での支払いを受けることになることを明らかにした
  IRNAによると、どの国も自国通貨での支払いが可能で、イランは中国とインドからは既に、モノで支払いを受けている

人民元の国際化の加速、国際通貨になることはできるか=中国
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0228&f=business_0228_060.shtml
  中国経済が急成長し、貿易も高い伸びを続けていることから、世界のほぼすべての国・地域が中国と取引している。人民元の堅調な上昇は人民元を「交換可能通貨」にし、人民元の国際化が期待されている。中国網日本語版(チャイナネット)は人民元の国際化が進んでいると報じた。
  この傾向は近年、中国の周辺国・地域によく見られ、人民元で貿易決済を行うアジアの国・地域、欧州諸国は増えている。また、中国は上海協力機構の加盟国、東アジアの主要国・地域、アジア太平洋地域の主要国と通貨スワップ協定を締結しており、イランなどの西アジアの国とも近く通貨スワップ協定を締結する予定だ
  日中の二国間貿易が増加し続けていることを受け、両国は今月中に人民元と円の直接取引に向けた協議に入る。政府間取引から民間交換の自由化への道が見えてくる。
  そのほか、人民元オフショア取引センターの建設、人民元建て国債や「点心債(ディムサム・ボンド)」の発行がアジアの金融市場で盛んに行われ、このような拡張の動きは人民元国際化に拍車をかけている。
  構想されていたアジア共通通貨がアジアを団結させ、ドルに対抗するためだとすれば、ユーロの動きもしくは欧州債務危機はアジア共通通貨のこの構想に活を入れる存在になる
  アジア共通通貨の提唱者が直面する最大の問題は、アジアと欧州の状況が大きく異なることだ。欧州にはドイツとフランスの2大強国が存在すると言われるが、この2カ国の実力に差がないわけではなく、ドイツの実力はフランスを大幅に上回っている。ところが、ドイツは政治面の利益を考慮し、フランスやさらに多くの欧州諸国に対して意欲的に代価を支払っている。これこそ、ユーロが存在してきた理由である。
  アジアに「ボス」は存在するか。政治・経済上の同盟が形成される可能性はあるか。日本経済はかつてアジアの「ボス」だったが、アジアの政界の「ボス」を夢見ない日はなかった。これまでに、アジアのほぼすべての国が日本の政治統率力を認めていないのと同時に、多数の国は日本の経済モデル(植民地経営モデル)を忌み嫌い、そのためにアジア共通通貨構想を違う方向に解釈している。円を中心とするアジア共通通貨をアジア人が受け入れるはずがない。
  中国が日本より優位に立っているのは、労働生産性の上昇速度だ。1990年から2000年の中国の労働生産性の年間上昇率は7.7%だった。WTO加盟後に上昇速度は速まり、2007年は16.7%、現在も12%以上の伸びを維持している。この速度を見ると、人民元は近く世界3番目の通貨もしくは国際通貨制度を支える国になる基盤となるだろう。(編集担当:米原裕子)

→「構想されていたアジア共通通貨がアジアを団結させ、ドルに対抗するためだとすれば、ユーロの動きもしくは欧州債務危機はアジア共通通貨のこの構想に活を入れる存在になる」という言葉の中に、イランとの貿易決済をドル以外で行う、石油取引をドル決済以外で行うことが含まれるとすると、どういうことになるでしょうか?話はそれますが、日本で東アジア共同体構想を推進しているみなさん、通貨の観点から上記のような記事があることをお忘れなく。東アジア共同体といえば日本がリーダーになるのは当たり前、というのは1980年代の発想です。東アジア共同体とは人民元の国際化と同時に進行していくかもしれません。かつて、東アジアに中国の銅銭決済経済圏があったように。

イラン・印の中央銀行、原油取引円滑化に向け協力
2012年 2月 14日(火曜日) 17:05  イラン放送
http://japanese.irib.ir/index.php?option=com_content&view=article&id=25509:2012-02-14-12-38-43&catid=17:2010-09-21-04-36-53&Itemid=116
イラン中央銀行とインドの準備銀行が、両国間の原油取引の円滑化に向けた協力を行ないます。
プレスTVの報道によりますと、イラン中央銀行は、インドとの原油取引の円滑化をはかるため、インドの通貨ルピーによる口座の開設に向けた協議を行っている、ということです。
ルピーによるこの口座は、イランのある民間の銀行が、インドのカルカッタにある国立UCO銀行と協力し、イランからの原油輸入に関わるインドの石油企業の、原油代金の支払いを目的に開設される可能性が高い、とされています。
アメリカのオバマ大統領も1月、イラン産原油や中央銀行への制裁を目的に、対イラン制裁案に調印しました。
EUもまた、今年1月にイランに対し同様の制裁を科しており、この制裁案は今年の7月から実施されることになっています。
なお、2010年におけるイラン産原油の最大の輸入国は、中国、インド、日本となっています。
中国とインドは、対イラン制裁への不支持を表明するとともに、これまで通りイランとの貿易を続行するとしています。

イラン危機
イラン制裁より原油が欲しいインドの苦境

Iran Gas Deadline Puts More Pressure on India to Defy US Sanctions
核開発に対する制裁包囲網の一角を突き崩すため、イランがインドに揺さぶりをかける
2012年02月09日(木)15時36分 ニューズウィーク
ジェーソン・オーバードーフ
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2012/02/post-2432.php
 核開発をめぐる経済制裁が続く中、イランが天然資源を「人質」にインドに圧力をかけ、包囲網の一角を突き崩そうとしている。イラン政府が今週、ペルシャ湾の天然ガス田の共同開発契約に「1カ月以内に」サインするようインド政府に通告したことが明らかになったのだ。
 オバマ米大統領は6日にイラン中央銀行に対する追加制裁を発表。これまでアメリカの銀行はイランとの取引を拒絶すれば良く、資産凍結までは求められなかった。しかし今回の追加制裁はアメリカの金融機関に対して、国内に持ち込まれたイランの国有資産を確認し次第差し押さえるよう求めている。オバマによれば、昨年末に実施した制裁措置は「ありとあらゆる方法で骨抜きにされている」状態だという。
 イランの核開発には反対しているインドも、イラン産原油の輸入を禁止する欧米の制裁の輪からは何とか逃れたがっている。インドは最近、原油輸入代金の45%を自国通貨ルピーで支払えるようイランと交渉した。イラン中央銀行とのドル決済を規制する制裁を回避する目的だ
中国、パキスタンとの衝突も視野に
 インドが制裁の輪に加わりたくないのは、原油供給の12~15%をイランに依存しているからだけではない。インド政府は将来起こりうる中国、パキスタンとの衝突に備えてイランとの関係を重要視している。 
 懸案の天然ガス田は、国有企業インド石油ガス公社などが作る共同企業体が開発権を持つ。今回のイランの圧力は、おそらくインドに対してアメリカの経済制裁に対抗してさらに強い姿勢を取るよう仕向ける策略なのだろう。
 インドの共同企業体はイラン政府に対し、50億ドルを投じて今後7年から8年でイラン沖の天然ガス田を開発する計画を伝えている。しかしアメリカが1996年にイランとリビアを対象に出した経済制裁のブラックリストに載ることを恐れて、契約は結ばなかった。
 イラン政府は今週、アメリカの追加制裁を「敵対的な行動」と非難する一方で、イラン外務省の報道官は追加制裁がイランの核開発に影響を与えることはない、とも語っている。
 イランを捨てて天然資源を失うか、アメリカを怒らせるか。インドに残された時間はそれほど多くない。