改めて、2011年3月12日18:00-20:00の間に菅首相周辺で何がおきていたのか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

改めて、2011年3月12日18:00-20:00の間に菅首相周辺で何がおきていたのか?

秘書です。
衆議院予算委員会で、斑目委員長が2011年3月12日18:00頃、菅首相の執務室で行われた「御前会議」での会話内容のことを答弁しました。
昨年5月31日の中川質問への答弁では忘れていたことを思い出しました?
この御前会議の模様をイメージするために、まずは、昨年8月25日の産経新聞より。


(1)全ての不信感、東電がはけ口
2011.8.25 22:51 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110825/plc11082522510013-n1.htm
 「東電のばか野郎が!」。首相の菅直人が、福島第1原子力発電所事故をめぐり東京電力への怒りを爆発させたのは3月15日、東日本大震災の発生から4日後のことだった。本紙は同月11日の大震災から1週間後の検証記事で「東電が後ろ向きな姿勢だったことに、菅が不信を募らせた」とした。だが、その後分かってきたのは、現場を理解しない上スタッフも信用せず、イライラを「東電不信」という形でぶつける最高指揮官の姿だ。冷静さを失った菅が自ら作り出した「東電不信」-。首相は26日、正式に退陣を表明するが、東日本大震災を「天災」から「人災」に変質させた首相の混乱ぶりを改めて検証する。(今堀守通)

海水注入

 「海水注入を止めるような指示はしていない。真水がなくなったら、海水を入れるのは当然の判断です」

 菅は週刊朝日のインタビューで、3月12日夜の1号機海水注入について「首相が注入停止を指示した」との報道を改めて否定した。

 だが、関係者が異なる菅の姿を証言し始めた。

 同日午後に起きた1号機の水素爆発。菅はこれですっかり狼(ろう)狽(ばい)していた。東電や原子力安全委員長の班目(まだらめ)春樹ら原子力の専門家さえ、格納容器が破裂する可能性はあっても建屋の水素爆発は「想定外」。菅は水素爆発の可能性を進言しなかった班目らへの不信感を強めていた。

 そこに海水注入が持ち上がる


 東電は原子炉注入用の真水がなくなる12日午後2時50分すぎに海水注入を行うと決め、首相官邸にファクスで通報した。ところが官邸内の危機管理センターに届けられたファクスは書類に埋もれ、菅の手元には届かなかった。

 東電側は「官邸の反応がない」。菅は「東電は何も言ってこない」。双方がイライラした。こうして、海水注入をめぐるドタバタが始まる。

 午後6時前。首相執務室隣に用意された原発事故用の対策室。菅の前に経済産業相の海江田万里、班目、東電関係者らが集まった。

 海水注入開始を知っていた東電関係者が「海水注入しかない」と説明。全員が菅の顔色をうかがった。

 菅は「すぐにしろ」とは言わなかった。

 「安全委はどうだ。保安院はどうだ」

 矢継ぎ早にただす菅。班目らが「それしかない」と返事すると、しばらく沈黙してから「爆発」した。

 「海水を入れると、再臨界になるという話があるじゃないかっ」

 さらに、班目らに視線を向けると言い放った。

 「君らは(建屋の)水素爆発はないと言っていたな。だから、再臨界はないと言い切れるか!」

 負い目を感じた班目らが「ゼロではない」と答えると、菅は「その辺をもう一度整理しろ」と怒鳴り散らした



その場の東電関係者は、「この状況で海水注入はできない」と判断。慌てて部屋を出ると、携帯電話で東電本店に連絡を取った。

 「首相の了解が得られていません」

 本店は海水注入作業の一時中止を福島第1原発所長の吉田昌郎に指示。対策室にいた一人によると、首相補佐官の細野豪志(現・原発事故担当相)も電話で吉田に「首相了解が得られるまで作業をやめろ」と伝えた。

 吉田も含め原子力の専門家からみれば、不純物の少ない真水のほうこそ再臨界の可能性があり、海水注入による再臨界を指摘する菅は「ナンセンス」だった。

 吉田が、菅の「指示」を無視し海水注入を続行したのは奇跡的だった。菅は後に、この日の経緯がなかったかのように「注入を続けたこと自体は間違いではない」と、白を切り通す。

 首相の指示なしでは動けなくなった東電。そして、菅はハリネズミのように、周囲すべてに不信の目を向け「東電は海水注入に後ろ向きだ。これは廃炉を恐れているのだ」と、東電不信にはけ口を求めていくようになった。(敬称略)

→この3月12日夕方6時の「御前会議」の件については、産経新聞の記事が出る前に、中川秀直が昨年5月31日の衆議院東日本大震災災害復興特別委員会で質問しています。

○中川(秀)委員 自由民主党の中川秀直であります。
・・・東電は、水素爆発前の十五時十八分ごろに、準備が整い次第海水注入する予定である旨を経済産業省、さらには内閣官房、地元の県、市町村、警察、消防機関にファクス通信しておられますね。関係機関から私も入手しましたが、現物がここにありますけれども、「今後、準備が整い次第、消火系にて海水を炉内に注入する予定。」と書かれています。そのファクスですね。これは、吉田昌郎福島第一原発所長から各所に出されている。内閣官房には、内閣情報調査室、内閣情報集約センターに十五時二十一分に届けられたと、私どもの調査では聞いています。
 武藤さん、これに間違いありませんか。

○武藤参考人 お話しいただきましたような事実関係であったというふうに認識をいたしております。

○中川(秀)委員 五月二十六日、原子力安全・保安院の西山審議官が、東京電力は保安院に加えて内閣官房にもこのファクスを送ったということは知っているというようなことをお話しになったと、ある新聞のちっちゃい記事に載っておりまして、私も気がついたわけですが、保安院それから内閣官房、このファクスを受け取った事実はあるんですか。答えてください

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 そのようなファクスは受け取っております。

○中川(秀)委員 内閣官房。

○辻政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生御指摘のファクスにつきましては、当日十五時二十分ごろ内閣情報集約センターで受け取りまして、直ちに危機管理センターの方に送付してございます。

○中川(秀)委員 つまり、この官邸のファクスの、十八時に総理が、真水による処理をあきらめて海水を使え、そういう指示を出す二時間四十分前、三時間前に、東電はもう海水注入しますと政府に伝えていたんじゃないですか。これは重大なことですよ。官邸、十八時の真水処理をあきらめて海水を使えという総理の指示は、つまりホームページに書かれていることは、嫌がる東電に自分の政治主導で海水を注入させたという、政治的なパフォーマンスに受け取れてしまうじゃありませんか。
 それで、総理は、海水注入についておれは知らなかったと言っているそうだが、内閣官房にファクスが届いているのに、知らないでは済まされませんよ。そんなもので危機管理になるんですか。
 総理、三月十二日十八時の総理指示の正確な内容、意味は何なんですか。だれに対して指示したものなんですか。文書、記録はございますか。

○枝野国務大臣 まず事実関係を詳細に御説明申し上げますが、内閣官房というのは、今もお答えがございましたが、内閣情報集約センターの方にファクスが届きまして、これは中川先生も御存じだと思いますが、官邸の地下の危機管理センターの中の情報集約ルームの方、つまり、大人数の、各省何十人という方がいらっしゃるところで回覧をされたというところまで確認がされております。
 ただ、そのファクス自体が、緊急参集チームと呼ばれる各省の局長クラス、幹部が集まっている部屋のところで回覧されたかどうかということについては確認はされておりません。
 ただ、いずれにしても、六時ごろの段階で、総理を含めて海水注入についての議論がある段階では、官邸に東京電力の方が来られておりまして、口頭等で、海水注入に向けた準備を進めている、そして、それにはもう一時間半ぐらいかかるという報告があって、それに対して、それをしっかりやるようにというような趣旨の総理からの口頭の指示があって、それについて走り書きをしたメモが危機管理センターのところに残っているという経緯でございます


→内閣情報集約センターには情報は到達したが官邸には届かなかった。ここが一つの焦点ですね。

○中川(秀)委員
・・・
次に、三月十二日の十八時の、先ほどから言っている総理指示の直後の十八時五分、六時五分ですね、国から海水注入に関する指示を受けたと東電は発表しているんですよね。
 私たちの調べでは、ここにありますが、東電の中にはテレビ会議のようなものがあるんでしょうか、いろいろ各現場と本社とのそういうシステムが、さすがにそういう公益企業ですからあるんでしょう。その時系列記録というのをちょっと私は入手しましたが、これにも、小森副本部長が「首相官邸、経産大臣から法令に基づく指示(注水すること)」となっています。これは六時五分ですね。また、五月二十六日の記者発表でも、国から海水注入の指示を受けるとなっていますね、この東電の記者発表の資料を見ますと。
 一方、五月の二十一日それから二十二日、一日違いですが、二回にわたって政府・東電統合対策室の発表している資料として、三月十二日、福島第一原発一号機への海水注入に関する事実関係という発表文がございますが、これにはこの事実について、なぜ二十二日とこんな一日違いで同じ文書が出てくるかというと、これこそがまさに、班目原子力安全委員長が、一枚目の紙は、再臨界の危険性があるという意見が出されたので、防ぐ方法を含め検討しているという表記が書いてある。それが一枚目。二枚目は、班目さんの抗議によって、それは、可能性はゼロでないという趣旨の回答をした、そこで防ぐ方法を含め検討と変えられた、これが訂正版ですね。
 しかし、二十一日の最初の発表文も訂正版の分も同じように、十八時から十八時二十分ごろに「経済産業大臣から、東電に対し、海水注入の準備を進めるよう指示。」と書かれているんです。これは、東電は法令に基づく海水注入の実行の指示を受けたと言っているんです。社内記録でそうなっている。しかし、経済産業大臣は準備指示だと言う。おかしいですね。
 さらに不思議なことに、五月二日の参議院予算委員会では、海江田経産大臣は、十八時に総理から指示があり、私が保安院に対して指示文書の準備をするように指示したと答弁している。今度は文書の準備だ。ちょっとわけがわからないですね。
 そこで、参考人の武藤さんに聞きます。三月十二日の十八時五分にどんな指示を受けたんですか。内容を具体的に述べてください。それから、指示を受けた証拠がありますか。命令書があれば当委員会に提出していただけますか。

○武藤参考人 十八時五分の御指示がどういう内容であったかという御質問でございますけれども、私どもといたしましては、経済産業大臣から、法令に基づきまして、原子炉に海水を注入せよという命令を受けたというふうに理解をいたしております。
 この内容につきましては、後ほど文書で社長あてにいただいておりまして、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第六十四条第三項の規定に基づく命令についてということで、原子炉容器内を海水で満たすなど適切な方法を検討した上で、その原子炉容器の健全性を確保することを命じることという内容が書かれております。
 この文書、資料の提出につきましては、これは公文書でございますので、御提出が可能かと思います。

○中川(秀)委員 
・・・このなぞの総理指示と経済産業大臣指示と同じころ、この政府の資料によれば十八時から十八時二十分ごろ、この間にかけて、総理のもとで、御前会議というか何かそういうものが開かれていたらしい。それは、本委員会において総理自身が、先ほどの答弁にもありましたが、この間に、この十八時から十八時二十分の間に、再臨界という課題もあり、海水注入に当たってどうすべきかという検討を、東電の官邸に詰めていただいていた責任者、安全・保安院のメンバー、そして原子力安全委員会の委員長を初め委員の皆さん、そして私、あるいは海江田大臣、あるいは補佐官で検討していたと答弁していますね
 原子力の素人である私でもわかることは、三月十二日十八時の段階で、総理のもとで、あるはずのない再臨界を議論し、原子炉がもう一回反応を起こして分裂を始めて、熱が発生して発電していく、そんな議論をして、その話が現地の福島原発まで行ったことの異常さなんですよ。
・・・
班目委員長、あなたはこの御前会議で、再臨界について、最初は危険性があると言ったとされ、御自身が抗議されて、それは可能性はゼロでないと言ったことになり、しかし、それは事実上ゼロだという意味だとおっしゃり、最終的には、本当は海水注入が現地所長の判断で、これは正しい判断なんですが、続いたことがわかったから、最後に、私は一体何だったんでしょうかと言ったんですね。
 改めて聞きたいですが、三月十二日、翌日夕方十八時の段階で総理の前で海水注入を議論していたころには、もはや再臨界なんて懸念する、そんな時期は過ぎ去ってたんじゃないですか。正確に言わなきゃいけませんよ、国民に対して。総理のための安全委員長じゃないんです、あなたは。メルトダウンになっていたんじゃないですか、このときはもう。そのことを言うのがあなたの役割のはずだ。それを総理に言ったんですか。再臨界は事実上ゼロとあなたが言ったことに対し、総理は聞く耳を持っていたんですか。何と答えたんですか。

○班目参考人 まず第一に、私は、もうはるか前の時点から、こうなった場合には、真水がなくなったら海水注入しかないと言い続けておりました。
 それで、十八時からの御前会議でそのような議論があったかどうかについては記憶してございません。私がはっきり申し上げるのは、私の方から再臨界という言葉を持ち出すはずは絶対ございませんこれはもう、私の専門性からいってどなたも認めていただけると思います。しかしながら、どなたか、これも総理かどうかわかりませんが、再臨界の可能性についてどうかと聞かれたら、それはゼロじゃないかもしれませんねと言うかもしれません。
 ただ、ここで理解していただきたいのは、その空気で何か起こったとかいうんですが、そのときに周りの方がざわざわしたとか、私に再臨界についてもっと検討しろとか、そういうような話があったという記憶は全くございません

 とにかく、私としては、事故の収束だけが念頭にあったので、何時何分にだれからどのように聞かれたかとまで言われてしまうと、正直申し上げて、はっきりとしたお答えはできないというのが実情でございます。

→この日、斑目委員長は、中川の質問には再臨界の話について記憶はないと言っていますね。その後、記憶がよみがえったのか、どうなのか?

○中川(秀)委員 ・・・それが、二カ月前のこの一番クリティカルな大事な日の、そんなところの記憶が、そういう話題になったかどうかもわからぬ、総理が何と言ったかもわからぬ、だれが言ったかもわからぬ、それじゃ、委員長、済みませんよ。それはあなたの責任の問題ですよ。正確に記憶を戻して、正確に答える責任があります。
 武藤さん、東電の方の事業者の原子力の責任者として、この三月十二日十八時の段階で再臨界の可能性があったとあなたは考えますか。私は、素人でもわかることですが、この三月十二日十八時時点では、泥水でもいいから冷やさなければならなかったんではないんですか。吉田さんが結局そう判断して、続けたわけですよ。また、再臨界があるとするなら、不純物の多い海水よりも、むしろその前の、もう八万リットルの、それだって起こり得ないんだよ。しかし、理論上は海水よりも真水の方がむしろ可能性が高い、そうなんじゃないんですか。いかがですか。

○武藤参考人 再臨界の可能性についての認識でございますけれども、私どもとしては、再臨界の可能性は大変に小さいというふうに考えておりました。社内で、最初に淡水を入れるときには、大変に小さい可能性ではありますけれども、そうした議論はあったように記憶をいたしておりますが、淡水を海水に切りかえることで再臨界の可能性がふえるといったような議論は一切なかったというふうに思っております。
 物理的にも、海水の方が原子炉を臨界にしにくいということは自明だというふうに思っております

→再臨界の心配がないときに、18:00-18:20の御前会議で再臨界について考える指示が出ていた。2011年5月23日の衆議院復興特別委員会での菅首相答弁によれば、この御下問への回答は19時40分に保安院などが総理に海水注入についての検討結果を説明して、海水注入すべき、硼酸を入れるべき、という形で行われ、19:55に総理が海水注入を指示した。

→ところがその御前会議の御下問と回答の間、東電は海水注入を開始する。それが19:04。そして、19:06には政府に通報される。ところが政府は通報を受けていないという。


○中川(秀)委員 まさにそうなんですよ。
 さらに、私の調査では、東電は、官邸で再臨界がどうのこうのとがたがたやっているときに、三月十二日の十九時四分ですが、もう既に海水注入を開始しているんですね。そして、その直後の十九時六分に、海水注入を開始した旨、保安院に連絡したと言っている。
 五月二十二日の政府・東京電力統合対策室の海水注入の事実関係、さっき言ったものですが、その訂正版、二十二日の分です。この訂正版ペーパーには、十九時四分の海水注入開始について「東電担当者から保安院に口頭連絡したが、保安院側にはその記録はない。」と書いてあります。
 保安院、こんな大事なことなのに、なぜ、本当に記録がないんですか。

○寺坂政府参考人 当時、さまざまなことの動きの中でいろいろあったわけでございまして、そういった中での口頭連絡ということについては、東京電力の方の資料にあるわけでございますけれども、私どもには、大変申しわけございませんけれども、その連絡を受けたという記録が残っていないというのが実態でございます。

○中川(秀)委員 それでは、東電側に聞きますが、今言ったように、三月十二日の十九時四分、海水注入を始めた、そして六分、二分後にそのことを保安院に連絡した、そう主張しているわけですが、その記録や証拠はございますか。そして、保安院の連絡はどういうルートで行われたんですか。
 もし記録や証拠があるならば、これも委員長のもとで協議していただいて、大事な点ですから、提出していただいて、事実関係を確認していただきたい、このように思います。

○武藤参考人 海水の注入の開始につきましては、十九時六分ごろ、本店に設置をいたしました緊急時対策本部から、原子力安全・保安院に常駐をいたしております当社の派遣者に対しまして連絡をいたしております。その派遣者が、その場にいらっしゃいました原子力安全・保安院の担当部署に伝えております。
 記録でございますけれども、その担当者が伝えた内容とその時間を自分の個人のノートに記載してございます。

○中川(秀)委員 そこまで言い切っておられるならば、委員長、これはちゃんと事実関係を究明するためにも、提出のことを後ほど理事会で協議してください。

○黄川田委員長 後刻、理事会で記録の提出については協議させていただきます。
 引き続き質問してください。

→そして、19:25に有名な、海水注入停止の指示を東電OBの官邸派遣者から行われるが吉田所長がこれを無視した。

○中川(秀)委員 さらに、東電の五月二十六日の記者会見を私、もう一回また読みましたが、その後の十九時二十五分、東電の官邸派遣者からの状況判断として「官邸では海水注入について首相の了解が得られていない」、もう一回言いますが、十九時二十五分、当社の官邸派遣者から、官邸では海水注入について首相の、菅総理の了解が得られていないという連絡が本店本部、発電所にあり、本店本部、発電所で協議の結果、一たん注水を停止することとした、こういう発表をしている。しかし、実際は発電所長の判断で、海水注入は継続されたということであったわけですね。
 武藤さん、この東電の官邸派遣者というのはだれのことですか。武黒一郎さんというたしかフェローが、前の原子力の責任者でいらっしゃるんですか、いらっしゃったと思いますが、この方なんですか。もしその方だとするなら、どんな人物なんですか。また、この人の状況判断というのはどういうことなのか。本部長として、あなたは現場の責任者として東電の本社の本部にいて、どういうことを聞いたんですか、これは。正確に言ってください。

○武藤参考人 当時、官邸に派遣をされておりましたのは、先生御指摘のとおり、フェローの武黒でございます。武黒は、首相の技術的な補助者、アドバイザーということだというふうに私ども理解をいたしております。
 私は、当時、オフサイトセンターにおりましたが、テレビ会議を通じて状況は見ておりました。後ほど私が聞きました内容によれば、官邸では、当時、海水注入のような具体的な施策まで首相が御判断をされるという感じがあって、その御判断がない中で注水の継続を続けることは難しいという雰囲気があったということが伝えられたというふうに理解をしております。

○中川(秀)委員 何事も総理の判断が下されていない中で、実施できない雰囲気だ、そういう連絡だと。(菅内閣総理大臣「逆、逆。逆じゃないか。やれと言ったんだよ」と呼ぶ)総理、あなたは今そんなやじを言っていますが、ちょっと整理しますよ。
 武藤さん、この武黒さんは本当に官邸に詰めていただいていた東電の責任者なんですか。総理はそんなことを言っていますが、東電と政府の正式ラインは、先ほどの、もう注水始めましたよという連絡をしたいわゆる事業者側の官庁へ連絡するセクションと、それから緊急対策本部、政府と一緒になっているその本部のルート、そして政府側と、それが正式のルートでしょう。正式なラインはそういうものであったにもかかわらず、武黒さんというのは総理のアドバイザーだと。そうすると、正式ラインじゃない、官邸直結の正式でないルート、そういう二つのルートがあった、それが結果的にこんなことになったんじゃないですか、指揮命令系統に混乱を来したんじゃないんですか。

 もう少し整理すると、三月十二日の十八時ごろ、政府内部で、東電は海水注入を三時間も前からやるといって通告しているのに、総理の政治主導を演出する、それも必要だ、政治主導で海水注入をさせたという政治的パフォーマンスを演出するための総理指示の……(菅内閣総理大臣「違う、違う」と呼ぶ)違うと言ったって、ホームページに書いているんじゃないですか。総理指示の動きがあった、十八時には総理指示があったということをホームページに飾ってある。二カ月もずっと飾っている。そして、十八時五分には経産大臣から、準備なんて今ごろ言っていますが、東電は法令に基づく海水注入の指示だと受け取っている。
 しかし、このシナリオが揺らいだ。総理は、あなたは、あるときは原発の知識がある、原子力の知識がある、あるときは素人だといって使い分ける。まさにこのとき、政権の延命第一のためにあなたは判断を誤ったんじゃないですか。シナリオが揺らいだんですよ。急にろうばいをなさって、自分の政治判断による海水注入の発表について不安になってきた。そこで、予定どおり、総理指示や経済産業大臣のそうした指示が出された同じ時間に、再臨界のことを検討するように指示してしまった。
 だって、統合対策室の中の、十八時か十八時五分ぐらいに、そういうような、班目さんが抗議されて、可能性はゼロでないという趣旨の回答をしたというふうになったが、しかし、それを、再臨界の可能性について総理から問われた、そのときにあなたがそう答えたので、「ホウ酸投入などそれを防ぐ方法を含め検討」になっているじゃないですか。やれやれじゃないじゃないですか。これがやれやれなら、この文章を変えなきゃいけないじゃないですか。何を言っているんですか。(菅内閣総理大臣「全然違うよ」と呼ぶ)違いませんよ。

 いずれにしても、水素爆発直後、大気に水に放射性物質が飛散している中で、政府対策本部の中枢で、現場の人たちは信じられないような混乱が起きているということにほかなりません。これは、シナリオどおりの政治的パフォーマンスが裏目に出ることを恐れて右往左往しているのが、震災当時、三月十二日十八時における原子力対策本部長、菅総理の姿だったんじゃないんですか。
 もしいろいろ言うんだったら、法令でちゃんとやるべきです。しかし、あなたはそうじゃなかった。この瞬間のあなたの一挙手一投足が、この二カ月半の原発をめぐる日本の悲劇そのものだと私は思います。反論があるなら、どうぞおっしゃってください。


○枝野国務大臣 何度か申し上げておりますが、政府の官邸の中枢部、首脳部としては、できるだけ早く水を入れるべきであって、真水がなくなれば海水を入れるべきであるということは、当時、一貫して一致をしているところでございます。
 そして、六時前ぐらいの段階で、これはしっかりと法令に基づいて指示をしないと、それまで、ベントが口頭での指示をしながらなかなかなされなかったという、その理由についてはその段階ではわかっておりませんでしたが、事実がありましたので、したがって、海江田大臣がまずは口頭で法令に基づく指示をされた。その上で、そのことの御報告を含めて総理のもとで武黒さんを含めた打ち合わせがありました際に、東京電力の側から、準備を進めているけれども、その準備のためには一時間半程度かかるという報告がありました。そして、その場においては、この日は後に水素爆発とわかる爆発のあった日でございます、爆発等は起こらないというような御意見も専門家の皆さんからあった中にもかかわらず、炉の爆発ではなかったんですけれども、建屋において爆発が起こったということがございました。
 これは、安全の観点からは、あらゆることを想定して、万が一のことが起こらないのかどうかということについて、念のために、一時間半どうせ準備に時間がかかるのならということで、爆発をするとか再臨界するとか、あらゆる可能性がないのかどうかということをそこで確認して、そしてその準備にかかる一時間半の間に検討しろというお話があったことは、できるだけ万が一の事態を防ぐという観点から、ある意味で当然のことであったと。残念ながらそのことが、十分な意思疎通が図られていなかったということについて、これはしっかりと今後も我々も検証してまいりたいというふうに思っております。
 なお、ホームページの記載については、ホームページにそういった記載をしていること自体を、私を含めていわゆる首脳部のところでそういった細かいところまで把握をしておりません。ただ、事実関係はできるだけ詳細、具体的にホームページ等で報告するように、国民の皆さんに報告するようにという指示はいたしておりました。
 そして、先ほども申しましたとおり、これはしっかりとメモが残っておりますけれども、総理のもと、あるいは海江田大臣のところで、東京電力に対して、準備を進めて、準備ができ次第海水注入をするようにという意思は明確に六時前後に出されておりますので、そのことについて、これはメモを記述した者がどなたであったのかということについては確認されておりませんが、危機管理センターで回覧されたメモにそれがあった。そして、私などの方から、できるだけ詳細に事実関係について国民の皆さんに公表するようにという指示は一貫して出しておりましたので、そうしたメモに基づいてホームページに記載をされたものというふうに考えておりますが、明確にそれが否定されるような事実が出てきておりませんので、そのことについては、途中で書きかえるということはかえって疑義を持ちますので、そのまま残っているということでございます。
 なお、さらに申し上げますと、先ほど来、海水注入を東京電力が嫌がっていたのを政府がやらせたんだというようなシナリオというふうにおっしゃっていますが、少なくとも、政府の幹部においてそのようなシナリオを考えて外に向かって言ったことはございません。政府の外の皆さんがそういったことの疑いを持ってそうした御主張をされたことについては承知をいたしておりますが、政府といたしましては、少なくとも、この十二日の午後の海水注入については、東京電力が海水注入に抵抗したとかというようなことについて申し上げたことはないと思っております。
 ただ、ベントが指示をしたのになされなかった、そのまさに翌日でございますので、やりますと東京電力がおっしゃっておりましたが、あらかじめ早い段階から法令に基づく指示を出した、こういう経緯でございます。

○菅内閣総理大臣 まず、中川先生、この事故が最初に起きたときの十五条事象というのは、非常用炉心冷却装置注水不能ということが起きたことの通知から、あの十五条の発令になったわけです。
 その時点で何を考えたかといえば、もちろんいろいろな方に集まってもらいましたけれども、とにかく冷却をしなければいけない、しかし、残念ながら、いわゆる本来の海水を使った冷却機能は停止しておりますから、炉心に注水をして冷却をするしかほかに手がないということで、それは、東電も保安院も安全委員会も、そしてその話を聞いた私や海江田大臣も、ずっと一貫してそのことは考え続けて、また、聞かれたときには常にそういう指示をする、あるいは、そういうことを当然やるべきだということを言い続けてまいりました。それは、どなたもそうです。
 ですから、まず、大きい流れとして、私が注水をやめていいとかやめろと言うようなことは、一貫してあり得ないんです。だって、今日まで、現時点だってずっと注水しているんですよ。注水が最も重要だということは、もちろんそこに集まった専門家の皆さんの意見も一致していたんです。
 そして、先ほど、いろいろな時点がありますから、私のところだけに絞って申し上げますと、まず、真水の注水があったわけです。真水がどこかで切れた後は海水にするしかないという認識も、関係者では一致しておりました。海水の注入ということについて、先ほど官房長官からもありましたが、十八時ごろ、そういう議論をしようとしたときに、武黒さんという方、東電が官邸に派遣されていたんですから、あと二人ほど若い人がついていましたが、その方が、海水の注水準備には一時間半程度はかかるという話もありました。そこで、いろいろな可能性を考えなきゃいけませんから、再臨界のことも、どうですかというお尋ねをしました。
 また、海水の場合は、入れた後、水は蒸発しますから、塩が残るんです。その塩による影響もいろいろ専門家の中では心配されているんです。ですから、なるべく早く海水からまた真水に戻さなきゃいけないということで、実際、今は真水に戻っています。つまりは、海水をずっと注入し続けていって、温度が上がってどんどん蒸発しますから、塩がどんどんできるんです。塩による腐食の可能性とかそういう問題もあるんです。
 また、中川さんは、もうあの時点ではメルトダウンしていたんだからという言われ方をしましたけれども、少なくとも、保安院の五月に至るまでの見方は、まだ水の中にかなりつかっているという見方をしていた。あるいは、東電も、水位計が事実上機能していなかったんでしょうけれども、少なくとも……(中川(秀)委員「長過ぎるよ、答弁が」と呼ぶ)いや、ちゃんと聞いてください、ちゃんと。
 ですから、そういう意味で、海水を注入したときのいろいろな可能性の問題を検討するのは当然じゃないですか。水素爆発の可能性、水蒸気爆発の可能性、再臨界の可能性、そして、塩が入ることによるいろいろな影響。そして、その間、時間が一時間半程度あると言われたので、そこにおられた専門家の皆さんに、では、そこも含めて検討をしてみてくださいと。しかし、基本的に、海水注入とかということはやるべきだということは当然言っていましたから、そのことが十八時の時点で、私としては、海水注入はやるべきだけれども、それに伴っていろいろなことがあるとしたら、そのことはちゃんと専門家の中で検討してください、そういう趣旨で一貫して申し上げたわけでありまして、何か私が政治的な別の意図を持ってそういうことをやったとか、そういうことは全くありません。
 それから、何度も申し上げますように、私が海水注入をとめたなんということがありようがないわけですよ。今も中川さん御自身が認められたように、私のところには海水注入を始めているということは、十九時四分から始まっているんですから、当然十八時の時点では始まってもいませんし、また、始まった時点でも私のところには届いていませんから、私はずっと、その後に報告が来た段階から始まったものだと思っていましたけれども、現実にはそれより前から始まっていて、先ほどもほかの委員の方が言われましたが、そのことは結果としては現場の責任者として正しい判断をされた、私はこう思っています。

○中川(秀)委員 ・・・もう三時前に真水の注入は終わっているんです、水素爆発が三時半にあったけれども。そして、既に海水注入をしなければならぬ段階に来ている。そのときに再臨界の可能性などということを言う。そして、実際、海水注入の検討結果を、大丈夫ですよと言って保安院が総理に説明したのは十九時四十分。海水注入の指示を正確にしたというのは大方八時、十九時五十五分。大臣が命令したのが八時五分。これは政府の発表文です。