衆議院予算委員会関連資料③人口減少がデフレの原因?違いますよね | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

衆議院予算委員会関連資料③人口減少がデフレの原因?違いますよね


秘書です。

衆議院予算委員会の中で、日銀総裁があたかも人口減少がデフレの原因のようなことを言っているが、それはおかしいと指摘。

ドイツでは、人口は減少しているが、実質成長率はプラスであり、デフレでもない。


○ドイツの人口
総務省『世界の統計2011』第2章 人口

2-4 主要国の人口の推移(2000~2010年)
ドイツ 2005年=8240万人→2008年=8230万人

2-5 人口・面積
ドイツ 2005年=8246.4万人→2008年=8212.7万人

http://www.stat.go.jp/data/sekai/02.htm#h2-04


○ドイツの実質成長率

通商白書2011
第1章 世界経済の現状と課題
第1-1-4-1図 ユーロ圏及び欧州主要国の実質GDP成長率の推移    (2005)(2006)(2007)(2008)(2009)(2010)(2011)(2012)
ドイツ(2005年=0.8%、2006年=3.4%、2007年=2.7%、2008年=1.0%、2009年=-4.7%
    2010年=3.6%、2011年=2.2%、2012年=2.0%
資料:Eurostatから作成。

2007年は2.7%成長

http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2011/2011honbun/html/i1140000.html

○ドイツの消費者物価指数変化率

平成22年基準消費者物価指数 > 月報 > 月次 > 2011年12月
参考表
2 主要国の消費者物価指数変化率

2005年=1.5%→2006年=1.6%→、2007年=2.3%

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001085751

→白川総裁は、以下のように人口減少がデフレの原因であるかのごとき表現をしています。

「1990年代以降の日本を振り返りますと、経済成長率が趨勢的に低下しているうえ、労働力人口は1998年をピークに、総人口は2005年以降、減 少に転じています。この人口動態の変化、特に労働力人口の減少はボディーブローのように大きな影響を日本経済に及ぼしています。このことは、今後、国内市 場の拡大が見込めるのか、あるいは将来的に安定した雇用や所得が得られるのか、財政は維持可能なのかといった点を考えるだけでも明らかです。こうした点に ついて、国民の不安感が拡がると、現在の家計の消費活動や企業の設備投資行動を抑制してしまいます。長期にわたる需要の低迷や、それによって生じる需給 ギャップのもとでのデフレという現象も、より根本的にはこのような中長期的な成長期待の弱まりが原因です。」
【講演】最近の金融経済情勢と金融政策運営
きさらぎ会における講演
日本銀行総裁 白川 方明
2010年11月4日
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2010/ko1011a.htm/

→では、なんでドイツはデフレではないのでしょうか?


「・・・第2の課題は、人口の減少や高齢化といった大規模な人口動態の変化が社会や経済に及ぼす影響です。第3の課題は、予測困難な自然災害が経済活動に与える影響です。第2と第3の課題は、一見すると、金融システムや金融政策と無関係のようにみえるかも知れませんが、後述のとおり、そうではありません。人口減少は自然利子率の低下を引き起こし、ゼロ金利制約を通じて金融政策に影響を及ぼします。また、もし年金制度の予定利率が人口減少に伴う自然利子率の低下を十分に織り込んでいなければ、利回りの追求(search for yield)に拍車がかかり、バブルの芽が生まれるかもしれません。」

「次に第2の研究課題として人口動態の問題を取り上げます。ケインズは、1937年に行った「人口減少の経済的帰結」という講演の中で「人口減少期には、総需要が期待を下回り、過剰供給の状態が継続しやすい。従って、悲観的な雰囲気が続く可能性がある」と指摘しています7。ケインズは、伝統的なマルサス流の人口増加懸念論とは対照的な視点を提供しました。新古典派成長理論では、経済変数は、一人当たりGDP、一人当たり資本ストックというように、「一人当たり」で議論されることが多く、これでは日本が現在直面しているような問題を扱えません。日本は急速な高齢化と生産年齢人口の減少といった人口動態の変化期を迎えています。日本経済の現在と将来を考えるために、人口の規模や構造の変化を分析しようとしたケインズの視点が、より重要になってくるのではないでしょうか。」

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110601a.pdf
2011年6月1日
日本銀行
バブル、人口動態、自然災害
―― 日本銀行金融研究所主催2011年国際コンファランスにおける開会挨拶の邦訳 ――
日本銀行総裁 白川 方明

→ケインズを持ちだしてますね。

→委員会を聴いていた方は、なぜ、デフレの議論をしているのに実質成長率の数字を引用しているのだろうかと疑問に思った人がいるかもしれません。それは、2月14日に日銀総裁会見で、あたかも、人口減少により潜在成長率が下がりそれが期待インフレ率を低下させている、ということを言っていたからです。ドイツは人口減少期も3%成長していますよ、と。

→人口減少→潜在成長率低下→期待インフレ率低下ということを日銀総裁はいいたいのでしょう。

→しかし、ドイツではそのような現象は発生していないではないでしょうか。

→日本で起きていることは、期待インフレ率低下→潜在成長率低下ということでは?


「日本の経済を考えてみた場合に、急速な高齢化、あるいは少子化、そのもとで労働人口が減少していく、このことが様々な形で日本経済に問題を投げかけています。これは、日本銀行から論文も出ていますが、日本の場合、潜在的な成長率と長期的な予想インフレ率との間に非常に高い相関関係があります。今、なかなかデフレが克服されていかないのは、潜在成長率が低下していることも原因の1つであるわけです
日本銀行総裁 記者会見要旨―― 2012年2月14日(火)
午後3時半から約1時間
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf

→そこで、下記の図です。

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日銀は日本の潜在成長率(つまり日本経済の実力)は、0%台だといっています。でも、200年代だって日本は実質2%をしても、インフレになっていない。

下記の展望レポートの7ページの「注」にあります。


「見通し期間中の潜在成長率を、生産関数アプローチに基づく一定の手法で推計すると、「0%台半ば」と計算される」

(※見通し期間とは2013年度までのこと)

2011年10月28日
日本銀行
経済・物価情勢の展望
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110b.pdf

→なんで日銀は潜在成長率はゼロ%だなどというのか?過去の「失われた20年」の延長線で潜在成長率を図ることで低くみつもり、そして、物価上昇率がゼロ近傍であることが潜在成長率が低いせいで、それは高齢化と人口減少のせいであることをにおわせる。

→だから、金融政策ではデフレは脱却できませんという。日銀免責のために、潜在成長率ゼロ%という自己不信と未来への絶望だけが累積されていくのではないか。


→需給ギャップについて200年以降のごく一時期に改善されたことを日銀総裁も認めているけど、すぐにここを例外的な時期のように切って捨てる。

「2000 年代入り後は、世界に例をみない急激な高齢化の影響が一段と顕著になってきました。先ほど述べた需給ギャップの拡大は確かに供給能力に対する需要の不足を意味するものですが、その場合の供給能力は既存の財やサービスにかかる供給能力を指しています。しかし、新しい環境のもとでの新しいニーズ、例えば高齢者の需要に十分応えていないという意味では、需給ギャップというよりは、需給のミスマッチ拡大の表れと解釈すべきかもしれません。」

「デフレとは一般物価水準の下落ですので、その背後にあるマクロ経済全体としての需給バランスが崩れていること、つまり供給に対して需要が不足していることが原因となっているはずです。実際、需給バランスの指標として、一定の前提を置いて需給ギャップを計算すると、2000 年以降ごく一時的な期間を除き、恒常的に需要不足の状態が続いています。」

2 0 1 2 年2 月1 7 日  デフレ脱却へ向けた日本銀行の取り組み
── 日本記者クラブにおける講演 ──
日本銀行総裁 白川 方明
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120217a1.pdf

→需給ギャップがプラス転換したのは2006年秋ですね。景気拡大で、ようやく地方へ、中小企業へ景気が実感できるようになってきた。そして、正規雇用も増え始めた。ところが、2006年と2007年に日銀は引き締めへ金融政策を転換した。

→以下の議論に気をつけてください。

①2008年からの景気後退は世界的なリーマンショックのせいであると誤解させる議論
→日本は2008年2月、リーマンショック前から景気の山を超えています。

②2000年代はずっと成長していなくて、ゼロ成長が続いていたと誤解させる議論
→2002年から2008年まで景気拡大している。景気が実感できないのはデフレだったから。

③2008年以後、世界中がデフレだと誤解させる議論
→先進国では日本だけです。
→そこで日本だけ特殊だというために人口減少論をもってきました。でも、ドイツも人口が減少していますがデフレではありません。